10.スランプ
何年も表現を続ける中で、急にその表し方が分からなくなることがある。絵も描きたくない、音も聴きたくない、視界に何も入れたくない。そのうち何も考えられなくなり、感情を表すことさえも放棄してしまう、能面のような時間が度々訪れる。これがきっと俗に言う、スランプ状態なのだと思う。
脳が仕事を放棄するので、勿論日々の業務は捗らない。言葉も脳を経由しないので、言わなくてもいいようなことが半開きの口から駄々漏れる。堰き止める術なんて何処にも無く、只々哀れな姿で他人に迷惑をかける。ここ数日は正にそんな状態だった。
定期的に訪れるその最中はいつも、この状況からいつ抜け出せるのか分からない不安と、こんなものに嵌ってしまっている自分への苛つきで押しつぶされそうになるが、これを抜けることによって得るものはゼロではないことを知っている。良くも悪くも、この旅は試練とお土産付きだ。血の気の引く報告が降ってきたり、納得する話に出会えたり、データがぶっ飛んだり。何かしらの試練を経て、晴れてスランプから抜け出すことが出来た時、何かを得ることが出来る。
今回の旅で得たものは、新しいパソコンを買う決意だった。もう迷わない。