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寝る?たたむ?シートと○は使いよう
昭和52年に発売されたスカイラインの新型、ジャパン世代の大きなセールスポイントの一つはフル・フラットになる前席でした。
運転席のやや大きめのヘッドレストを外し、一番前までスライドさせて目いっぱいリクライニングさせると後席(座面)の前端と繋がり、フラットな仮眠スペースが生まれる!というもの。
それ以前にもフラットに出来る機構はありましたがリアシートの背もたれを手前に引き起こして(肩の上を支点にして)斜めにリクラインさせた前席と繋がる、というもので水平には程遠くすぐに姿を消しました。(パブリカ800)
昭和55年マツダが満を持して投入した新型ファミリアはフルフラット化できるほかにリアシート脇をラウンジ・シートのように半円形に整形してシートと一体に見せる手法を用い、靴を脱いで足を前方に投げ出せばリアのベンチシートをラウンジ・ソファーのような気分で使える・・・・若者を中心に人気車種となりました。
この当時フル・フラットに出来るシートはワンボックス・ワゴンの専売特許のようなもので、3列シートの2,3列目を背もたれも含めて平らに出来るようアレンジ可能な車種が増えつつありました。
まだまだミニバンブーム到来は20年も先、市場でそれほど広まった車種ではありませんでしたがトヨタ、日産、マツダ、三菱と言った各社が競って豪華さを打ち出し始めた頃でした。そんな当時のブレーク・スルーが回転対座式シート!(バネット・コーチ)
二列目シートが新幹線車両のようにくるりと180度後ろを向き、3列目の乗客と対面できるという仕掛け。あくまでも付加価値の一つにすぎませんが各社こぞって対面できるシート機構の開発に躍起となります。
中には3m足らずの短い車体をベースに回転対座を実現するべく、運転席をぐるりと後ろ向きに出来たスバル・ドミンゴのような例もありました。このドミンゴも含めて対面できるのは主に停車中。シートベルトの着用基準が厳しさを増すにつれて、対座させる需要も減ったのか、今日ではごく少数しか見かけなくなりました。
3列シートのカラクリ仕掛けも年を追うごとに進化し続けています。3列目のシートを格納して荷物スペースにする、までは容易ですがその方法は様々。左右分割にして跳ね上げるのはいいとして、その固定方法は簡単ではありません。
欧州車のように取り外し可能に出来ない国内法規の関係で、メーカーも色々頭を悩ませます。ホンダはシートを座面ごと後ろにひっくり返して床下に隠してしまうウルトラCを開発、トヨタも分割したシートのリンク機構を工夫して、斜めに2列目シートの床下に潜り込ませる技巧派の技を見せました。
3列シートでなくっても2列目シート下のあるのが普通だった燃料タンクを1列目に移動し、2列目シート座面を跳ね上げることも可能にしたのがホンダの初代フィット以降の軽を含む各車。こうすると少なくとも床から天井まで最低でも1300ミリ近いサイズを稼ぎ出すことができ、小柄な女子なら首を傾げるだけで着替えだって不可能ではない姿勢をとることができてしまいます。
反面、フルフラット機構は今や軽乗用車でも必須に近いアイテム。全長が3400mmまで許された現在の基準では、軽とはいえ2000ミリを超える室内長(ダッシュボードの後端からリアシート背もたれ先端まで)などはザラです。
昔の軽なら1600ミリ前後がやっと。窮屈に感じる数字も、LCC格安航空のエコノミークラスで700ミリ少々の前後関間隔を思えば、これでも健闘した方。2000ミリという数字はシーマやクラウン等の大型セダンでようやく可能になった数値でもあるのです。
昨今、道の駅やサービスエリアで車中泊を楽しんでいる人たちには有難い世の中になったものです。