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スタイルで攻めるか?性能で攻めるか?百花繚乱の1965年,魅惑の国産車


まだまだコロナとブルーバードがトヨタ/日産の販売合戦の主役だったころ、コロナ・シリーズに日本で最初のハードトップ・ボディが加えられます。アメリカに流行の端を発したこのスタイルは前後席間にある柱、センターピラーを無くして、前後の窓ガラスを開けるとコンバーチブル車にハードトップの屋根を載せたような様な開放感、見栄えが得られることから大流行したスタイルでした.実現の為には無くしたセンターピラーの分を補強しなければならず,重量も嵩み小型車向けのデザインとはいい難い代物ですが、5年後には軽乗用にまでハードトップが誕生する日本は一躍、ハードトップ大国となるのです。

コロナ・シリーズには更に日本で最初の5ドア・ハッチバックとなるボディも加えられ、ワゴン並の多用途性を併せ持つ実用セダンを目論みますが,欧州の様に人気となるには至らず、定着までには20年以上も掛かり,コロナ・シリーズにも5ドアセダンは消えたり、現れたりを繰り返します。

パブリカの2気筒エンジンを45馬力に増強して,美しい流線型のボディを与えたトヨタ・スポーツ800は、その最高時速155km以外にもリッター30km近く走ると噂の燃費効率の高さも評判でした.車両重量だけでなく空気抵抗の低減が如何に性能を高めるかという見本でもありました。更にユニークなのは、タルガ・トップというセミ・オープンボディを採用していたこと.当初このクルマが東京モーターショーに参考出品されたときには、左右ドアとルーフが一体となって後ろにスライドする、ユニークな形式を採っていたものの、市販時にはドアは左右に開く普通のタイプに改められ、窓ガラスに連なる屋根の部分だけが脱着式となる、タルガ式と呼ばれるスタイルを世界でもいちはやく採り入れていたものでした。ポルシェが当時の911に追加したセミオープン・モデルとよく似た構造で、センターの太いピラーを残したセミオープン・ボディはこの911の呼び名=タルガが広く一般に知られる型式となったモノです。

クーペボディが加えられたのはマツダのファミリアも同様。大衆車として付加価値の高いクーペボディを揃えたのは早いほうでした。このメーカーは軽乗用の第1号がR360というクーペだったほどで、後にコスモやRX−7などクーペボディを多数揃える販売路線の一端が窺えます。

ファミリアと共に800でスタートしたダイハツのセダン、コンパーノにはスパイダーと言うコンバーチブル・ボディが追加されます.実はコンパーノは旧式な梯子型フレ−ムを持つボディなので,屋根を切り落としても車体強度を保つのは簡単.他社のモノコックボディでは困難な改造も容易でした.その点トヨタスポーツ800ではモノコックなのに屋根を持たない構造。最初からそのように設計したからこその成果です。

日野自動車もトヨタ傘下に入る以前にはコンテッサ1300と言う自前のセダンを持ち、美しい2ドアクーペを追加しました。これが日野の乗用車としては最後の商品となり、今もマニアにはそのリアエンジンの独特のレイアウトが隠れた人気です。

日産からはクリスタル・カットと呼ばれるイタリアンデ・ザインのとびきり美しい2座クーペ、シルビアがデビューします。実はオープン・スポーツのフェアレディ1600の母屋だけを着せ替えたクーペ版フェアレディで車両形式もフェアレディのSP311にCを加えただけのCSP311でした。

同じOHV1600、ツイン・キャブレター90馬力のエンジンはブルーバード411のセダン・ボディにも搭載されSSS=スーパー・スポーツ・セダンと銘打ってその高性能ぶりをアピールしました。ただフェアレディの基本骨格は旧式のブルーバード310世代のモノで,重たいフレーム・シャーシに載せられたもの。先進的なデザインとは裏腹に中味は古典的な性格をもつ過渡期的な商品でした。

当時まだ日産とは合併前のプリンス自動車はスカイライン2000GT -A/Bを市販バージョンとして量産ラインに載せます。二種類のチューンのうち、125馬力の強力版S54Bのみが赤白のバッジを持つ最強版として,GT−R登場までの人気車種となります。

当時まだ皇太子だった現在の上皇さまはカーマニアとしても知られており、プリンス製の自動車を愛用されていましたが、プリンス自動車ではは皇室で使われる御料車=プリンス・ロイヤルの開発がスタート、皇室の依頼を受けた自工会の求めにプリンス側が応じたものでした。量産車とはまったく共通項のないリムジン型式の3列シート配置は、ロールスロイス・ファントムなどのイギリス流サルーンに範をとったもの。エンジンもV型8気筒と、アメ車並みの余裕あるもので6台が順次納入されたのは二年後(1967)でした。

プリンス・ロイヤル、クラウン・エイト同様、V型8気筒エンジンを乗せる超高級セダンとして,日産からはプレジデントという大型セダンがデビューします。ハナから5ナンバー枠にとらわれない堂々の大型ボディは低く長く広いスマートなもの。同年デビューした5ナンバーの最上級,セドリックとは大きく趣を異にしたものです.この新型セドリック130系はブルーバード同様ピニンファリナのデザインを汲むもの。スペシャル6等に搭載される直列6気筒エンジン=L20型は、やがてフェアレディ、スカイラインGT、ローレル、ブルーバードにまで搭載される日産の主力エンジンに育つ名機で、ターボ化やインジェクション化されながら80年代まで生き延びます。

軽乗用のひとクラス上、500/600クラスでスタートした三菱小型車の最新型コルト800は3気筒エンジンとファストバックの斬新なスタイルを組み合わせた三菱としてはユニークな意欲作でした、

ユニークと言えばスズキの前輪駆動セダン、フロンテ800も2ストロークのシリンダーを3本並べたエンジンを搭載。街中ではホンダのライトバンL700同様に滅多に見られない希少種でしたがこの縮小版エンジンがフロンテ360の心臓部となって、大ヒットを後押しする事になります。

ホンダはまだ量産型セダンを持たず、日本人のほとんどが知らなかったF1に果敢にも挑戦。腕時計の様に精巧と表された12気筒のエンジンは吸気と排気それぞれにカムシャフトを備えるツインカムで、自動車界の異邦人たる東洋人が栄冠を掴みとるに至ります。これが2021年に連なるホンダF 1の長い歴史の記念すべき一勝目となったのでした。


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