ホントの名前と商標名(形式名のはなし)
大抵のクルマには商標登録された商品名と車検証に記載された車両形式と言いう二つの名前が存在します。
例えば5ナンバー純国産車のパイオニア、トヨタのクラウンはR型エンジンを積んだS(クラウン・シリーズ)ということで、モデルチェンジの毎に数字が10づつ増えていきました。
1962~はRS40型に、この代からは6気筒エンジンも載せられるようになり、MS40と変化します。このM型6気筒エンジンをツインカム・ヘッドに改装したのがトヨタ2000GTの3Mエンジン。車体にはFの形式名が与えられMF10として世に送り出されます。
クラウンより一回り小型のP型エンジンの新型車=コロナにはTの車体形式が与えられ、最初のモデルチェンジを受けた世代がPT20系、過激なTVCMが話題を呼びました。3代目はRT40系、これに国産車で初のハードトップボディを載せた際にはRT50系として区別しています。R型エンジンをツインカム化したトヨタ1600GTにコロナの名称は冠せられませんでしたが、車両形式はRT55系とコロナファミリーの一環であることが覗えます。
以後、水平対向2気筒の大衆車パブリカにはUP10系の名称が与えられ,U型エンジンをチューンした45馬力のトヨタスポーツ800はUP15系とされました。
新設された工場と共に登場のカローラはK型エンジンにE(カローラ系)のKE10系で、初代のスプリンターはKE15系とプラス5で区別しています。2代目カローラの車体にセリカGTの2T-Gエンジンを載せたのが初代レビン・トレノのTE27系、ハチロクの形式名が愛称にまでなった元祖AE86系は4A-Gエンジンを載せた80系カローラの最強版でした。
日産車だと大きくルールが違います。戦後の小型車はアルファベット無しの110系、モデルチェンジでは100の位が増えて行き、310系の時代に初めてブルーバードの愛称が付くようになりました。この300番台は実に多産系で、同じ車台を使ったスポーツカーが2代目にあたるフェアレディ1500,形式名はSP310とSがフェアレディであることをPが強力版エンジンであることを表しています。さらにこのフェアレディのボディをイタリアンデザインの流麗なボディに乗せ換えたのが初代シルビアのCSP311系。頭のCがクーペボディの証です。柿の種と呼ばれた古めかしい初代ブルーバードと同じ足回りからこんな美しい娘が生まれようとは!
尻下がりと蔑まれた新型ブルーバード410系はピニンファリナの作品ながら販売面では今ひとつ。シルビアのエッセンスを取り入れた次期モデル510系にバトンタッチし、名車の誉をほしいままにします。
100づつ数字が増えてゆくと10代目にはどうなるのか?
79年発売のブルーバードは910型、この次は1000番台かと思いきや83年の次世代型はU11と二桁に刷新。これはセドリック430系やスカイラインC210系も同様,Y31系やR30系にモデルチェンジしています。ブルーバードより後に登場の車種系にはそれぞれにイニシャルが与えられB10=初代サニー,C10=日産として最初のスカイライン(三代目)C30=ローレル,D21=ダットサントラック,E10=チェリーと続きます。10系は大衆クラスの初代、20系なら商用、30系は高級車グループで、一の位で世代の違いを表すルールに変わりました。
V6エンジンを採用した83年型セドリックがY31から始まるのは初代に無冠の30が存在したからです。参考までに初代プレジデントは50系、最上級車の位置づけでした。
さて、多品種、兄弟車を数多く得意としたトヨタの場合は車体形式を共有するケースが実に多いのも見どころです。セリカとカリーナは最初から土台を共有する親しい関係。カリーナがTA10系、セリカはTA20系からとしています。サイズ的にはコロナにも近く、80年代になるとFF化されてコロナと共通のTグループ入りしました。
FF化された最初のコロナがST150系、次に来る160系はFFセリカとカリーナです。流面形のデザインやフルタイム四輪駆動のツインカムターボが魅力のセリカGT-FOURは映画私を映画に連れてってでもおなじみ。同じくST160系にはカリーナEDという4ドア・ハードトップの人気車種もありました。
車名は変わらないのに形式名がモデルチェンジする例もあります。スカイライン2000GTを最初に名乗ったプリンス自動車S50系は、一回り大型のセダン、グロリアS40系に続きモデル・チェンジを受けたスカイラインの二代目。これをロングノーズ化してレース史に足跡を残した最初のスカイライン2000GTがS54系でした。
これが日産との合併を機に、日産ルールに従うと、スカイラインはC10系に、2000GTはGC10系、GT-RになるとPGC10系と冠が増えて行き、ハードトップボディが登場するとKPGC10型と冠が増え続けます。
1972,モデルチェンジを受けるとケンとメリーのスカイラインに大変身,GT-RはKPGC110系に。でもその次のジャパン世代にはGT-Rが無くKPGCは2世代限りとなってしまいます。
GT-Rが復活を遂げた8代目の頃には日差のルールも変わり、ニューマンスカイラインの頃からはR30,31系と変遷。4輪駆動の新世代GT-RはBNR32系、その次の世代で限定生産された久々の4ドアGT-RはBCNR33とされ、なぜかこの代だけ2ドアと同じ形式名でした。
スカイラインはまたも形式名をRからVへと変更します。一説には全く別名で発売も検討されたのが新・後輪駆動車のV35系、ですがGT-Rはスカイラインとは切り離されR35系として独立した車種の扱いになっています。
(この項続く)