セナが消えミニバン時代の足音がする1994年の国産車
F1から撤退したこの頃のホンダは実はクルマが売れずに苦戦していた。そんなホンダはモーターショーにピープル・ムーバーと題してこれまでに生産してこなかった背の高いワゴンタイプを多数出品して軒並み商品化した。ホンダのイメージを大変革する思い切った商品プランだった。
その尖兵となったのが初代オデッセイの登場。ホンダとしてはバネットやマツダ・ボンゴの様な三列シート・ワゴンは前例がなく生産ラインも背の低いセダンにしか対応していなかった。
そこで車幅は3ナンバーとし車高は生産ラインを通るギリギリの高さで設計されたのがオデッセイだった。軽のワゴンRを別とすれば今に繋がる日本車のミニバンブームはここに始まったと言っても良い。
サイズの小さい四輪駆動のクロス・カントリータイプと呼ばれるパジェロやテラノの人気が定着しており、トヨタはジムニーとプラドの間にあった隙間のマーケットに狙いを定めた。ジャニーズ事務所で売り出し中のグループSMAPでもひときわ人気ものだった木村拓哉をキャラに据えRAV 4を発売。トラックや乗用系からの派生ではなくゼロからこのために開発されたモノコックの締まった2ドアボディにパワフルなエンジンを横置きしてフルタイム四駆とした。
でも実のところこのマーケットで大ヒットしたのは年末に登場したパジェロ・ミニの方だった。人気のパジェロを軽の枠に収めて似たようなデザインでまとめたのだから売れないはずは無い。実際には寸法で比べてもRAV 4とほぼ変わらない室内空間を持っていた。
独立したフレームの車台を持つジムニーとは違いモノコック式のボディにシャーシを埋め込んだビルト・イン方式は軽量化で大きなメリットを持つ。やがてバリエーションを増やし、後輪だけを駆動するFR仕様やクラシックな架装で飾った仕様も設けられた。RAV 4は北米で人気を得た反面国内では一旦カタログから消えてしまう。
4世代目に移行したターセル・コルサは三代目と大きくは変わらず3ドアのハッチバックがごく普通のデザインに変わった位でカローラの縮小版と言ったキャラクター。ビスタ店やトヨペット店などでサニーやシビックに抗する大衆クラスを受け持つ。
s13型が大好評を博したシルビアが大柄な3ナンバーサイズにs14系にフルチェンジ。しかし旧型の人気は根強くs13系のまま継続された180SXが注目を浴びる事になってしまう。これは一足先にモデルチェンジした33系スカイラインにも言える傾向。
二世代に渡って直線基調だったサニーはb14系でイメージを刷新。リッターあたり14マイルの燃費性能を標榜して14マイル・サニーをアピールする。パルサーとの共通化も進み2ドアモデルのルキノはパルサー・ハッチバックそのものだったし、2ドアクーペに相当するNXは大人しい2ドアセダンタイプに刷新された。
ロングルーフのペンタストリームラインで軽乗用マーケットに帰って来たホンダtodayが、そのイメージをガラリと変えて4ドアも加わり二世代目に。リアウィンドウは大きくラウンドした2ボックスらしからぬ後ろ姿が特徴で、トランクは英国のミニ同様小さな開口部を上から開くタイプに改めた。ハッチバックの画一的なスタイルから脱却を図り、後方視界も意識したデザインは結局長続きせず、中途改良で消えてしまった。
ホンダ・エンジンがマクラーレンから消えアイルトン・セナもチームを離れて、ウィリアムズへ移籍。でも岡山のTIサーキットで行われたレースが日本に姿を見せた最後となってしまう。
もうバブル時代では無いことは明白。行き過ぎた3ナンバー化を反省するかの様にマツダはクロノスの車幅を5ナンバーサイズに縮めてカペラの名前を復活させた。3列シートを併せ持つワゴンは、その後も長く命脈を保つ。あとはミニバンだけが明るい未来を見つめていた。