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廃れるのも早かった?ファスト・バックは再びカム・バックするのだろうか?

ハードトップ・ボディと共に昭和40年代の日本車に欠かさない存在がファストバック・スタイルでした。

リア・ウインドの傾斜を緩くしてトランク・フードと直線的に繋ぐ、見るからにスポーティーなデザイン、映画に出て来るフォード・ムスタングが良いお手本で、ポルシェのようにルーフからリアバンパー迄一直線にカーブを描くのはプレーン(飛行機)バックと呼ばれるものです。

日本車で三菱コルト800が早くから採用していたファスト・バックですが、こちらは室内スペースとラゲージ拡大に寄与したヨーロッパ的な路線.モデルライフを通じてこのシルエットは不変でした。2ドアセダンよりルーフを低めたフル・ファストバックのスタイルは日産サニーがいち早く採用しています。


ライバルのカローラ・スプリンターもファスト・バックで登場しますが、こちらは幾分傾斜を抑えたセミ・ファストバックとしました。本家のカローラもスバル1000もセミ・ファストバックと呼べなくも無いデザインですが、要は消費者にプラス・アルファの出費を厭わせない付加価値と見て貰えるかどうかです。この時期ファスト・バックを採用しなかったクーペを列挙する方が早いくらいです。

三菱がギャランGTOに次いで投入したFTOではセミファストバック・スタイルのリア・ウィンドウ両脇の二つの峰をつまみ上げてフル・ファストバックに見せるファスト・ノッチスタイルを打ち出します。ファスト・バックだとルーフ傾斜に合わせてウィンドウを縦長に拡大しなければならず、斜め後方視界も辛くなりますが、内側をノッチバックに近づけることでガラス面積を抑えて、サイドから眺めたスタイルはファストバック並み。賢いやり方でした。

事実上のFTO後継車にあたるランサー・セレステはフル・ファストバックに改めた代わりに、後方視界確保のための小さなクウォーター・ウィンドウを設けて、軽快感も併せ持つ巧みな方法をとっています。ガラス面は後方に開いたルーバー状のカバーで覆われ、プライバシーと視界を両立させていました。軽のフルファストバック・クーペ=ミニカ・スキッパーでも、後方視界確保のためのウィンドウが設けられていました。

カタログでも価格表の上でも上位に扱われていたファストバック・クーペでしたが、80年代に入ると廃れ気味に。スカイラインでもケンメリ世代だけがフルファストバックを採用したのみでした。

トヨタ・マークⅡでは2代目モデルに大胆なファストバック・スタイルを採用していたのが3代目のマークⅡ・チェイサーの代になると大人しいクラシカルなスタイルの2ドアHTに、そして次のクレスタを含めた4代目ではついに2ドアモデルそのものが姿を消してしまいます。これはライバルたるローレルも同様、初代からバリエーションに加わっていた2ドアHTは2・3代目までで姿を消しました。ブルーバードの弟分ヴァイオレットも全車ファストバックの思い切ったスタイルで登場したものの2年足らずでセダンはノッチバックに手直しされています。

セリカのようなスポーティー・モデルこそ代々ファストバックを揃えてはいましたが、2ドア・モデルそのものがアメリカの保険料高騰の影響もあって90年代を境に姿を消してゆきます。

デート・カーと呼ばれたシルビアも末期までは180SXというファスト・バックのバリエーションを残しましたが、排気ガス規制の強化を機に惜しまれつつ消滅。2000年代に入ると、こうした2ドアの衰退を若者のクルマ離れととらえる見方も一般的となります。

ファスト・バックが何故一時的な流行に終わったか?と言えば、一つはデザイン・トレンドの変化もあるでしょう。後方視界を犠牲にすることが嫌われたのか?70年代半ばから、視界の良さを売り物にしたAMCペーサーのような走る温室のようなデザインが台頭したことも一つ、90年代にはさらにアメリカでの2ドア車保険料の問題がダメ押ししたとも考えられます。

後席にあまり人を載せないユーザーたちがこぞってファストバック・スタイルのクルマを手に入れた時代は終わりました。今わずかに伝統を維持している車種と言えば、国内では間もなくデビューの新型を含めたフェアレディZやスープラ、ハチロクとBRZ,NSXが思い当たるくらいです。

が、一見ファストバックとは無縁と思われていたSUVの中にもルーフを低め、テールをなだらかなカーブで包んだクーペ・スタイルのものがチラホラ見受けられるようになりました。まだまだ局地的な流行ですがSUVを基盤に再びファストバックの時代が到来するのでしょうか?

重く武骨なイメージのSUVも魅力的ではありますが、もう少しカジュアルにそのメリットを享受した上で、ちょっとおしゃれ心も発揮してみたい、そんな付加価値の1つとして,SUVのファストバックは増えこそすれ、減ることは(しばらくは)ないかもしれません。

SUVのメリットに目をつぶってシャコタン(車高短縮)にしたら随分とカッコ良くなるのに、と思わせるクルマが増えてきたと感じるのも事実ですが・・・・・

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