ダブルクラッチ覚えてる?出来る人は?
最近の路線バスに乗っていてふと気づいたら皆AT車だった。
最後にクラッチペダルを離して半クラッチでスタートする運転手を見たのはいつのことだったか?
それもシフトは圧縮空気の助けを借りてリモートチェンジされる手間要らずのものだった。
諸兄はダブルクラッチと言うテクニックが存在したのをご存知だろうか?
いや実際にこの目で見た!という御仁はどこにおられるだろうか?
半世紀も前の路線バスはシンクロ機構の無いのがデファクト.シフトの度に変速機内の歯車同士回転を一致させるために使った手順がダブルクラッチと言う技だった。
平地で空車に近いバスは大抵2速発進、シフトアップのタイミングが近づくとクラッチを切る。これは当たり前。
シンクロメッシュ機構付きの乗用車ならシフトレバーを3速に押し込んでやると円錐形のシンクロコーンが相手のギアを擦りながら速度差をマッチさせてゆく。
昔バスにはこのシンクロがついていなかった。そこで運転手たちは一旦踏んだクラッチを離してエンジン回転とプライマリーシャフトの回転を繋いでやる。
するとそれまでシフトアップ前の高速回転していたクラッチ側シャフトの回転が回転数の落ちたエンジン並みに落とされる。それはシフトアップ後のエンジン回転数に近づくことになる。
つまりこの時点でこれから噛み合おうとするサードギアのエンジン側車軸側の回転数がほぼ揃うことになる。
そこで運転手は再びクラッチを切りシフトレバーをニュートラルからサードに押し込むのだ。
これを側から見ておるとブオーン、クラッチ断,シフトをニュートラル,クラッチ接、クラッチ断,シフトアップ,クラッチ接、再加速という作業をリズミカルに繰り返すのが当たり前だった。
音で表現すればブオーン,プスっ、カチャン,プスっ、プシュー,ガシャん、プシュー、ブオーンという順。シフトチェンジをニュートラル経由で二度に分けてその都度クラッチ踏むのでダブルクラッチ.大型トラックもこれに準じている。
昔は大きな歯車をマッチさせるシンクロ機構がなかった故のドライブテクニック,というか必須の技術だった。
そんなノンシンクロの時代に郷ひろみが主演で制作された映画がダブルクラッチ.原作者は五木寛之先生だ。
主役の乗るスバルレオーネRX初代にはもちろんシンクロが付いておりダブルクラッチを使わずともシフトチェンジできるフツーのクルマだった。
あの頃にはまだ日産ディーゼルの2ストロークディーゼルエンジンのバスもあって軽快な排気音にカッコよさが感じられたものだった.運転手の半クラも見られなくなったこの頃、アイドリング振動を不快に感じるのも残り僅かかもしれない。