ボディカラーの色いろいろ

黒塗り、と言えばある時代までは公用車やハイヤーの代名詞でもありました。
車種はセドリック、クラウン、デボネア等に限られキャデラックを黒塗りで購入できるのはさる業界のトップの面々、と相場が決まっていました。
普通の乗用車でブラック・カラーが選べるようになったのは実は70年代も終わりに近づいた頃、いすゞのジェミニが国産車では比較的早く黒のボディカラーを選べる小型の乗用車として名乗りを上げました。
このジェミニZZにはいすゞ117のようなツインカム・エンジンが搭載され、ブラックのボディに鮮やかなオレンジのストライプが印象的でした。やがてセリカもシルビア・ガゼールもこぞって黒を採用し、街中で公用車じゃない黒の自家用車を見かける機会もグンと増えました。

では、ジェミニがこのブームの火付け役かといえば、実はいすゞの当時の株主,GMのファイアーバード・トランザムが黒のボディに派手な炎のペインティングを施した塗装を施したのがお手本でした。アメリカではこうしたデカールを組み合わせたブラック・カラーが人気急上昇。シルビアの兄弟車=ガゼールのオプションにはこうした派手な炎のデカールも用意されます。このブームが無かったらマイケルナイトのナイトライダー(KITT2000)も違った色だったのかもしれません。

ブラック・カラーは瞬く間に自家用車にも浸透し、ワンボックスでも軽自動車でも黒を選ぶオーナーが少しずつ増えてゆきます。
街中でSクラスの黒いベンツを見かけることも、もはや珍しくはなくなりました。そのテのオーナー諸氏はかつては黒塗りのキャデラックを愛用していたはず。法人向けにもSクラス人気が出始めたので黒いベンツを見ただけでは、どの職業の方か俄には判断がつかなかったものでした。

昭和30年代の乗用車の中にはキャロルや初代ブルーバードなどルーフをボディと違う色に塗り分けたツートーンカラーがいくつか存在しました。大量生産とコストダウンが進み、いつしかカタログから消えた2トーン・カラーでしたが70年代にはささやかな復活を見せています。塗りわけをするのではなく、着色したフィルムを重ね合わせるツートーンで、木目模様をプリントしたフィルムを重ね合わせる流行もシビックやサニーのワゴンタイプに見られたものでした。

大抵の塗りわけはボディサイドのウエスト・ラインから下の部分としサイドモールが分け目の役を果たす場合が多かったようです。この流行を塗り替えたのがベンツに見られるクラッディングで、プロテクター・モールを下まで一杯に延ばしたような構成。樹脂色またはグレーに塗装したものが多数を占めました。レクサスの初代LSなどもこれに倣いましたが、レザートップを貼ったハードトップ同様、長続きする流行ではなかったようです。

現在は何度目かの2トーン・ブームらしく、多くの車種でルーフを塗り分けた車種を選ぶことが出来ます。塗りわけは昔ながらに塗装工程にひと手間加えたオーソドックスな手法が用いられているようです。


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