試験中止は絶滅か?
シリンダー内で爆発した混合気はピストンをものすごい力で押し下げ、クランク軸を回すことで爆発力は回転力に変換されました。電気モーターなら、回転はすぐさま減速ギアに繫がれ、車軸の先のタイヤを回しますが、エンジンだとちょっと厄介です。
ところで教習所で半クラッチを習得する生徒って今どれくらいいるんでしょうか?ガソリン車ゼロ化をめざすわが国では、マニュアル免許教習そのものがいずれ存亡の危機に立たされます。
エンジンはアイドリング・ストップ時を除けば600回転から最高で9000回転、普通はせいぜい6000回転までの間で回っています。
一方、日本の路上で許されているスピードは法規上0から120キロまでです。6千回転で120キロ出せるとしたら600回転では12キロほど、それでも車庫入れには速過ぎて向かないし、6千回転も回しているエンジンではとても長距離ドライブを楽しめません。電気自動車ならゼロ回転から力を発揮できるので9000回転で最高速に達するまで、変速機構は不要です。減速ギアは必要ですが変速ギアに相当するレバーはありません。
そこでスピードに応じてガソリン・エンジンの回転数を変えられる変速機(トランスミッションが必要です。また、静止している車輪をいきなりエンジンに繋いだら側、エンスト。試験終了です。三つ並んだ左端のクラッチペダルは回り続けるエンジンとまだ動いていない車軸とを無理やり結びつける役目を担いました。
でも、そんなの面倒くさい・・・と昔から知恵を働かせて自動クラッチ、もしくはノークラッチと呼ばれる気候が幾つも考え出されました。今だったらもっとも手っ取り早いのは人工知能に学習させて、代わりにクラッチを踏んでもらうこと・・・・いすゞのNavi-5という機構がそれでした。難しい半クラッチをマイコンと油圧が代行してくれます。変速機はマニュアル・ミッションのものを自動で操作するので5段変速はマニュアル同様。いまでは大型トラックのオートマ化にもこのノウハウが生かされています。スズキの「オートギヤシフト」(AGS)も仕組みは同様です。
では、人工知能以前の変速の自動化はどうだったか?多くは油圧に依存していました。クラッチとは回転する円盤にもうひとつの円盤を強引に擦り合わせて回転差をなくそうというもの。磨耗するとすべりが生じるので「クラッチが滑った」と、修理屋にクラッチ板交換を頼みに駆け込みます。半世紀以上も前に考えられたのは、この二つの異なる回転する円盤をオイルの浴槽に浸し、円盤を扇風機のような回転ファンの形にしてかき混ぜたオイルで回転を伝えようというアイデアでした。流体継ぎ手、トルクコンバーターと呼ばれ、今も使われています。
この流体継ぎ手は回転差が大きいほど伝わる回転力も増幅されるのが特徴。ホンダは1973年にシビックをオートマチックにしようと、エンジンと流体継ぎ手だけで発進から最高速までカバーする独自の変速機構、ホンダマチックを開発しました。実際、変速レバーを触らずに最高速まで出せましたが、実際には発進時や勾配のきつい坂道用にローレンジのギアも備わっていて、事実上の二段変速の半オートマチックでした。
ホンダのスーパーカブにもクラッチレバーは見当たりません。これは遠心力を利用した遠心クラッチが内蔵されていて、低回転の時はスプリングに引っ張られた内側の振り子が外側のドラムから離れることで回転を断続できる仕組みになっていました。自動車にも応用したい所ですが、遠心力だけでは不十分です。ラッタッタことホンダの原付=ロードパルはこの遠心クラッチだけで発進から最高速(といっても30kmちょっと)までをカバーしていました。言ってみればホンダマチックです。