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失われた30年の間に隆盛を極めた、それまで存在しなかったアレと消えたデート○○

ホンダから今年新しいプレリュードが市販されるようです。何年ぶり??

失われた30年と呼ばれる、この低成長時代に生まれた子供たちも三十路に差し掛かろうかという令和のこの頃、Z世代はもちろん、この国に「デート:カー」なる言葉が存在していたことは知る由もないでしょう。

全高以外はセダン並みの居住空間を確保しながら2ドアのおしゃれなボディを身に纏い、性能面でもプラス・アルファを加えた、独身の若者向けのカテゴリーを総称してデート・カーと呼んでいました。日本ではセリカをパイオニアとして見る向きが一般的で、のちにシルビア、プレリュードなどが売れ筋として販売成績を大きく伸ばした、付加価値の高い商品群でした。

が、そんなセリカもシルビアもレビン・トレノも2000年代にはことごとく消滅、4ドア・ハードトップやハイソ・カーなる流行も一時的で、我が国では絶滅危惧種となって久しくなりました。

ではこれらのデート・カーを生産していた工場ではいま、何が作られているかといえばことごとくミニバンです。30年前には日本に存在しないカテゴリーでした。

1993年、冷夏で米の不作やら自民党政権が退場を宣告された総選挙のこちら側では、軽自動車の勢力地図をあっという間に塗り替えてしまった車が登場します。
スズキがベストセラー軽・アルトの屋根を20センチ近く嵩上げして、室内の前後スペースにも画期的な広い空間とママチャリを積み込める荷室空間を併せ持った革命児=ワゴンRを投入したのでした。

コンセプトとしてはホンダ・シティやシャトル等で具現化はされていたもので、軽でも三菱ミニカ・トッポの先例はありました。が、ワゴンRの場合は着座位置そのものから見直し、高さで稼いだ余裕を前後スペースの拡大に転嫁したところが大きく違います。
やがてダイハツもムーブで応戦、日産は小型車枠でキューブを、トヨタはホンダ・オデッセイの後を追うべくイプサムを開発します。これら3列シートの多人数ワゴンは、それ以前にもエスティマやマツダMPVなどが北米で人気を博していました。ダッジやフォードのトランジット・バンに比べて小さいサイズのこうした日本車は総じて北米でミニバンと呼ばれるようになり、この言葉がそのまま直輸入されて日本でも横行し始めます。

ミニバン業界で小型車、3ナンバー枠で最初と言っていい大ヒットを勝ち取ったのはホンダの3ナンバーミニバン=オデッセイでした。ライバルたちに比べてちょっと背が低いのは生産ラインを既存のもので間に合わせたために、この高さが限界だったから。幸か不幸か、この低さが魅力の一翼を担っていたことは否めません。

ミニバン・ブームは日産にも三菱、マツダにも波及して、20世紀中にはそれまでのワンボックス由来の3列シート・ワゴンとは別系統の、短いボンネットを持った3列シート・ワゴンが台頭してきます。
それまでにも三列シートのワンボックスはありました。が、90年代を境に衝突基準が強化され対応すべく短いノーズが不可欠となったのです。そのノーズには横置き前輪駆動がユニットごとすっぽり収まってしまうことになり、エルグランド、アルファード、ノアといった後輪駆動車も軒並み前輪駆動に生まれ変わっていき、ユニークなミッドシップ構造をとったエスティマもアルファード一族に取り込まれてしまいます。

こうしたミニバンブームの影で2ドア需要は目に見えて減少してゆきます。
これには理由がありました。北米の保険料高騰です。

セクレタリー・カーとしておしゃれなヤング・レディーたちにも人気のあった小型のクーペまでもがこの災難に遭いました。サニーのルキノやミラージュのアスティといった最後の生き残りも静かに日本市場から退場してゆきます。
ほぼ同じ頃、日本でも排気ガス規制をめぐるエンジン選択の幅が狭まり、シルビア、RXー7といったスポーツ系デート・カーが軒並み消えました。レビン・トレノ、プレリュードは言うに及ばず、この頃から若者のクルマ離れなる言葉も登場しミニバンを足に選ぶ初心者も増えてゆくのです。

独身男女が交際相手を乗せて遠くに連れ出す車種ならバンタイプだろうがハイソカーだろうが、デートカーと呼んでも差し支えないのかもしれません。そんな意味ではこの国には依然、デートカーが存在し続けていると言えるのかもしれませんが、昭和にブリブリ言わせた世代が思い描くデートカーはやっぱり背の低い2ドア車しかありません。北米ならムスタングに端を発したポニーカーの例を挙げるまでもありません。

我が国でもお隣韓国でも街を行き交う車はほとんどが4/5ドア、2ドアと言えばまずトラックという歪な車種構成も少しは変化する兆しが見えてくるのでしょうか?新作のプレリュードに昔の栄光が戻ってくるのか?マツダの新しいクーペは陽の目を見るのか?(シルビア復活もね)・・・・・一縷の希望を託したくなります。

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