やさしいメカ解説、なぜ圧縮が必要?

さてバルブやら気化器やら過給の話やらと、長いガソリンの旅路でしたが、液体から気体に変身したあとシリンダーに吸いこまれたガソリンはいよいよ圧縮、爆発行程へと続いてようやく任務を果たします。 

ところで気化したガソリン混合気にそのまま点火しても、とても車を動かすパワーは出せません。その為に敢えてパワーを消費してでもぎゅうっと縮めてやります。この比率は圧縮比というカタログ・データで知ることが出来ます。ガソリン車だと圧縮比は大まかに1:10前後、(ターボであらかじめ過給して空気を蜜にしてある場合など)低いものは6とか7。上は11ないしそれ以上、15と言う超こう圧縮エンジンも現れました。

高い圧縮を掛けて爆発させれば、高い爆発圧力を得られて高出力が出せます。逆に圧縮比が低いエンジンのメリットは、ガソリンの品質が高くない地域でも安定した、そこそこの出力が出せるメリットがあります。 

吸入だけでなく次の圧縮もそして排気工程も、それ自体はむしろ抵抗となって回転を止めようとするものなのです。4気筒やゼロ戦の星型エンジンならば他のシリンダーが爆発行程に当たっているのかもしれません。でも、スーパー・カブみたいに単気筒のエンジンだったらどうでしょう?答えから先に述べると、それは前の回転で勢いが付いているからです。 

走行中にアクセルから足を離すとエンジンの回転が抵抗になってブレーキの役割を担う、というのが箱根などで見かけるエンジン・ブレーキという言葉の正体です。単気筒のエンジンが回り続けているのは爆発で得られた回転力を大きく重い弾み車、フライ・ホイールに蓄えて小出しに使っているから、なのです。もっと大きなバイクのエンジンをキック・スタートさせようとすると大きな力で反発を感じると思います。それはシリンダーの中に詰めた気体をギュウっと圧縮しているからで、中々エンジンがかからない・・・という時には爆発が正常に起きていないため、次の圧縮行程がブレーキを掛けるから、なのです。

 圧縮比が高ければ高いほど、得られる爆発力は高くなる、反面上げすぎるとピストンが上がりきらないうちに、圧縮された空気の熱で早く発火してしまい、ノッキング音というキンキンとした不快な音を発します。

ピストンが上に来る前に圧縮熱(同じ分子量の空気を圧縮すると分子運動が早くなる=温度が上がること)で自発的に爆発が起きてしまい、上昇してくるピストンにブレーキを掛けるわけです。これがノッキング現象で、カラカラカラというディーゼルみたいな音を立てて馬力が落ち、最終的にはエンジンを傷める元にもなるので、ノッキングさせないように圧縮比を上げすぎないことが必要。

ノッキングを防ぐにはガソリンを敢えて燃えにくくして、高い圧縮圧にも耐えられるようにすることが必要。これがハイオクタン・ガソリンと呼ばれる商品誕生の理由です。 ハイオク・ガソリンというと、威力が高そうに思えますが、実は爆発しにくいガソリンなのです。圧縮比の高いエンジンを組み合わせなければ本領を発揮できません。オクタン価とは敢えて自然着火し難いように加えてあるアンチノック剤の量のことです。適用車のカタログにはハイオク仕様、と書き添えられています。 

ガソリンにはこのほか1972年までは4鉛化メチルという化合物が添加されていて、吸・排気バルブの潤滑の役を担っていました。が、これが鉛公害の元凶物質とわかり、以後は代替物質に替えられています。高速有鉛というステッカーが昔ありましたが、これは未対策の1972年以前に生産された高性能車に、高速走行のときだけ有鉛のガソリンを使ってほしい、と注意を促すものでした。 

マツダの最新型エンジン=スカイアクティブXでは圧縮比が15近くにもなります。圧縮比が高いほど爆発力を上げることができ、高出力が得られ省燃費にも繋がります。で、ノッキングをさせないために混合気を薄くしておいて点火の直前にシリンダー内に燃料噴射を行う。言葉では簡単ですが実現は難しいとされていた技術です。マツダはこの圧縮比を大幅に上げるという高効率なエンジンを実用化し、市販化に成功しました。

今は価格差が大きくて、燃費のよさだけではなかなか元が取れないのが現状ですが、こうした技術を率先して世に送り出す心意気には10万でも20万でも追加出費して応援したいものです。が、70万円は出せるかどうか・・・・・・

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