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「公衆電話」The lady in a red-dress.
「公衆電話」The lady in a red-dress.
※ご注意:本作品は、実話を元にした怪談物語となります。
恐いお話がニガテなお方は、ご自身の責任にてご覧下さいますようお願い致します。
背景/設定
携帯電話の普及に伴い、その設置基準も大きく変わり、撤去されつつある「公衆電話」。
普段、使っている通勤路の運転中、視界に入ったのは、公衆電話。
ただそれだけ、のはずだった…。
登場人物/ひとり語りにて
東城摩耶:X大学院内某学部にて、教授の秘書兼事務職を担当。月に数回、定時を大幅に過ぎる残業となることがある。職場である大学院へは、車で通勤している。繁忙期などで仕事を頑張った日などは、帰宅後、よなよなエールと自作による渾身の一品(おつまみ)で、自分を労う日もある。
…この日も、そのつもりだった。
以下、〔シーンタイトル〕、《動作》、(※演出)
〔X大学院内某学部、事務室〕
(※タイピング音)
摩耶:「よしっと…研究費申請処理オッケーっと…もう、期日ギリギリだっつーのっ。なんでもっと早く申請書類だして来ないかなぁ…。」
〔ナレーション〕
思いがけず遅くまで残業となってしまったその日。
夕暮れ時まで降り続いていた雨が上がり、屋外駐車場の車へと、ぬかるんだ道を急ぐ私の肌には、ひんやりと、しっとりとした、湿り気を帯びたような風を感じる、そんな夜でした。
〔X大学院内、職員専用屋外駐車場へと向かう〕《ぬかるんだ道を歩く》
摩耶:「あー、ヒールに泥ついちゃう…もう…。(ため息)…お腹空いた…何作ろっかなぁ…」
長時間のデスクワークによる疲労感に、凝り固まった肩回りをほぐすようにしながら、1分でも早く家に帰りたいと、車に乗り込み、家路を急いだのでした。
〔摩耶、車運転中〕(※車内音、運転音)
摩耶:「いまだに、あるんだ…公衆電話。」
〔ナレーション〕
遠くに見える、道路わきの道に。
街灯にぼんやり照らされている公衆電話を目にした時、思わず、そうつぶやいていました。
その道は、大通りに通じる道であるため、便利な抜け道として、ドライバー達が利用しているのです。
私もその一人…なのだけれど…この便利な抜け道を知ったのは、つい先日のことでした。
歩道が併設されているものの、日中でさえも、人通りのない道路で。
夜ともなれば、さらに閑散とした雰囲気で、まばらに設置されている街灯の光が、かえって夜の暗闇を際立たせるような雰囲気となり…
摩耶:「ちょっと、野生動物とか、飛び出してこないでよ?」
〔ナレーション〕
市街地でありながら、自然豊かな土地柄ということもあり、小さな野生動物の交通事故被害が話題に上がっていたこともあって、つい、運転も慎重になってしまうのでした。
やがて。遠くに見えていた、公衆電話の近くに差し掛かってきた時、その中に、人影のあることに気が付いたのです。
深夜になろうかという時間帯に、公衆電話の利用者にー
摩耶:「え…珍しい…なんか、困りごとかしら…」
一見、黒い長髪が印象的な、赤いワンピースを着た女性のようでした。
何とはなしに、横目で見やりながら、公衆電話の横を通り過ぎようとした、その時です。
公衆電話内の電灯なのか、それを照らす街灯なのか、わからないのだけれど、その周辺の灯りがチカチカっと、点滅したのです。
摩耶:「わっ、な、何?…停電?」
一体何だったんだろう?そう思いながら、ふと、通り過ぎたばかりの公衆電話に居た女性が気になってしまって
バックミラー越しに、ちらりと見たのだけれど…。
そこには、誰も居ないのです。
奇しくも。
その公衆電話から、数10メートルほど先にあるT字路の信号が赤となり、停車したのです。
摩耶:「え、え…。あ、あぁ、もう、電話終わったのかな…。はは…。(※恐怖をごまかすような苦笑)」
わかってたんです。
気づいた事を、気付かなかった事にすれば、自分の中で、早鐘のように鳴り響き始めた警笛に、その怖さに、心が支配されずに済むと、そう思ったのです。
だけど、そんな想いとは裏腹に…。
なぜか、私の視線は、彼女の姿を探してしまったのです。
開かれた1本道に、電話を終えたヒトが歩いているのであれば、すぐにその姿を確認できるであろうはずの、その視界の先に。
公衆電話内で佇んでいた女性の、黒い長髪の、赤い…真っ赤なワンピース姿の女性は、どこにも見当たらないことに気が付いてしまったのです。
摩耶:「早く…早く…し、信号、変わって!」(※祈る想いで…)
その場に、少しでも長くとどまっていることは、なんだか、とてもよくないような。
早く、その場を離れなくては…!
私の血がざわめくような…そんな感覚にかられながら、やっと信号が青になり、走り始めたのでした。
極力、もう、バックミラーやサイドミラーは見ないように、
摩耶:「(すうはあ、深呼吸音)…大丈夫、大丈夫…」
深呼吸を繰り返しつつ、そう、自分に言い聞かせながら、家までの道を急いだのでした。
(※運転音)
〔摩耶、帰宅後、居室にて〕
帰宅後、自宅前の駐車場から玄関までを小走りで、飛び込むようにして、家に入り、慌てて鍵をかけました。
メゾネットタイプの2Fへ住んでいた私の部屋は、玄関を入ると、階段があり、上階のリビングへたどり着くと、
一層、外から離れられたような、安堵感を覚えたのでした。
すぐさまテレビのバラエティ番組をつけて。
努めて、普通に、何事もなかったかのように振舞うようにして、入浴や食事を済ませました。
そうこう過ごしているうちに、週末に会う約束をしている、友人へのメールの返信を終えた頃には、すっかり、気持ちも落ち着いていました。
摩耶:「ん…(と伸びをする感じで)そろそろ、寝よっかな…」
寝仕度をしようとした時、私は、また、あることに、気付いてしまったのです。(※気づいたことを後悔するような感じ)
私の部屋の、西側の窓から見える景色に、公衆電話がある、という事実に。
摩耶:「あぁ…また、まただ…。(※怯えるように)」
なんで、いま、そんなこと、気付いちゃったんだろう…そんな、自責の念にかられながら。
私は、再び、あの、全身の血が、一気にざわめくような…なんとも言えない感覚にとらわれていました。
すっと立ち上がり、西側の窓辺へと…向かってしまうのです。
摩耶:「そんなわけない、大丈夫…大丈夫だから。」
そう、自分に言い聞かせるようにして、ゆっくりと、窓辺へ向かうのです。
このイヤな感覚も、きっと…気のせい。
何事もなければ、楽しい気分のまま眠れるんだから…。
心の中で、そう、強く、何度も自分に言い聞かせながら、ゆっくり、ゆっくりと…窓辺へ…。
西側にある小さな窓辺の傍らに、そっと立ちすくみ…
薄いレースのカーテン越しに、そーっと、外を見やるだけ…。
私は、自分の姿が、外からは決して見えないように、窓際の壁に寄り添うようにして、
出来るだけ、視線だけで外を確認するかのような姿勢で、外を…
その窓から見える、公衆電話を確認したのです。
摩耶:「!!!」(※声にならない叫び)
実話を元に伝えたい想い、つばめの「ゾクっと便」お届けにござい…。
通りすがりの風景に、ふと、感じる違和感。
そこには、アナタの知らない異質な物質が存在しているのかもしれません。
そして。
「気付いてしまった事」を「気づかなかった事」にしている“つもり”なのは、アナタの方“だけ”なのかもしれません。
だって。
ソレは、アナタに「気付かれた事」に「気付いてしまった」のだから。
ひと目遭ったその日から、恋の花咲くコトもあるぅ?
(小藪&すっちーのパンチDEデート!byFANY公式CHより🤣)
…軽快なキャッチフレーズで始まるバラエティ番組を模して、怖さを軽減してみました。
つばめの声で聴けます♪
「公衆電話」@stand.FM
《作品利用につきまして》
本作品を「朗読したい/声劇台本として活用したい」
そう、思って頂けたそこのアナタ様へ!
まずは、そのお気持ちに…ありがとうございます!
そして、幾つか、お願いごとがございます。
当方、別ページにてご案内させて頂いております、
「作品利用につきまして」をご一読頂きました上、
ご活用下さいますようお願い申し上げます。
※尚、全ての作品について、著作権は放棄しておりません。
I maintain the copyright.
I appreciate your understanding and thank you in advance.
by Tsubame Kotohogi