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「新世紀エヴァンゲリオン 地上波補完計画」についての短いレポート

「新世紀エヴァンゲリオン」が最初にテレビで放映されたのが、1995年のことだから、もう25年も前になる。10代は当然として、20代の前半の人にとっても生まれる前のアニメだから、そういう作品に対して、どのような感じになるのかは、想像するしかないけれど、気持ちの距離感は相当遠いのではないだろうか、と勝手に思っている。

過去になっていく「未来」

 自分にとっては、もう若いとはいえない頃、しかも深夜の一挙再放送で「エヴァンゲリオン 」を見て、それから、ずっとすごいとは思い続けているものの、(リンクあり)その頃に10代で出会った人たちに比べれば、その理解の体感に関しては、とても及ぶわけもない。自分にとっては、もっと昔のアニメなどを語るべきなのだろうと思うけれど、この映像としてのインパクトは強くて、テレビアニメで、ここまでできるのか、といった気持ちはずっとあった。だけど、自分の立ち位置は、かなり中途半端だという思いも、続いている。

 21世紀に入った2001年には、それまでアニメなどでよく登場してきた印象が強い「西東京市」が現実に誕生し、鉄腕アトムが「生まれた」といわれる2003年は遠くなり、2015年が、最初のエヴェンゲリオンシリーズの舞台になっている時期のはずだけど、その年も過ぎた。2019年、「アキラ」が覚醒する時も、すでに過去になっていて、あれだけあった「未来」が、どんどん過去になっているのは、不思議な感じがするが、それは、ずっと誕生し続けているはずの「新しい未来」のことを自分が知らないだけかもしれない。

召喚された「クラシック・アニメ」

アニメなどに夢中になることを指す「沼落ち」をコンセプトに、この枠で放送するアニメ作品に夢中になってほしいという想いを込めています。

 2020年の4月から、このシリーズが始まり、最初は新作だったのだけど、7月からの2作目は、土曜日の深夜(日付は日曜日)の午前1時半という時間帯で、急に(という印象だった)始まったのが、「新世紀エヴァンゲリオン 地上波補完計画」だった。

 2020年のコロナ禍は、世界に大きな影響を及ぼし続けているが、特に、4月から5月に日本国内では緊急事態宣言が発出され、その期間は、社会が止まったようになっていた。

 テレビ界でも、ドラマの撮影が止まり、放送が遅れ、過去のドラマが再放送されたりしていた。それは、アニメの製作も似たようなことがあり、新作の放送が遅れたりもしていた。

 だから、邪推だけど、この25年前の「エヴェンゲリオン」が呼び出されたのも、コロナ禍のための非常事態だから、だったのかもしれない。だけど、そういう時に召喚されるには、それも、当初はテレビ東京だったから、テレビ朝日で放送されるという変則的なやり方も含めて、この時期にふさわしい作品だとも思った。それは、昔見た印象が強い人間の勝手な感慨なのかもしれないが、何度放映されても価値があるような、一種の「クラシック・アニメ」であることは間違いないとも思っていたせいもある。

「新世紀エヴァンゲリオン 地上波補完計画」

 そして、この「地上波補完計画」は、全12話。
 もともとのテレビシリーズは、全26話だから、全部は放送できない。
 だから、第1話は、そのまま放送するが、それ以降の放送する回は、視聴者が選ぶというシステムだった。

 私も、その選択に参加しようと思ったが、ツイッターをしていることが最低条件になっているようで、今もスマホも携帯も持っていないし(リンクあり)、臆病で恥ずかしいとも思うけれど、あの、みんなが殴り合っているような場所に出ていく勇気と体力がない。(SNSは未経験で、このnoteを始めようと思ったのは、ハヤカワ五味氏が、平和だと言っていたからだった)。

 それでも、毎週、楽しみだった。
 それは、25年たって、今も映画のシリーズは続いているとはいえ、現在のテレビでは、両脇が余ってしまう画面での「エヴェンゲリオン」を、土曜日の夜中に見て(録画かもしれないが)、その上、ツイッターで投票までする人たちは、おそらくは、本当に熱心なファンに違いなくて、そういう人たちが、どのような「選択」をするかに興味があったからだった。その12回を、終了した今、改めて振り返ってみたいと思った。

順当だと思った5回目まで

 第1話は、そのまま放送される。
 エヴァンゲリオンが登場し、最初の動きが転ぶ、というのは、やっぱりリアルで、新鮮だった。そして、「敵」となるのは「使徒(シト)」と呼ばれる個体名はなく、コミュニケーションがまったくできなさそうな存在だった。さらには、本部の責任者は主人公の父親でもあり、親子の物語でもあることが示される。

 それからは、第2話、第3話と続く。
 これは、見ていても納得がいった。
 この流れで、このアニメが「巨大ロボットアニメ」の系譜でありながらも、その違いも描かれていると思った。エヴァンゲリオンはパイロットを選ぶことや、得体の知れない感じや、人類を救うために戦っているパイロットの、それでもポジティブではない周囲からの見られ方、その上で、主人公の碇シンジ(14歳)がクラスメートに敵視される。その後、シンジの戦いを目の当たりにしてから、理解に近づくという、この世界の基本構造を紹介しながら、人の関係の動きまで進んでいき、今見ると、30分のアニメにもかかわらず、映像だけでなく、物語の情報量もかなり多いと思った。

 それから、第6話。第8話と「選択」が続く。

 第6話は「ヤシマ作戦」といわれる日本中の電気を使うような戦い方をして、その上、エヴァンゲリオンのパイロット綾波レイ(女性)が、碇シンジを命をかけて「守り」ながらも、勝利をなんとかかちとり、最後に、綾波レイが初めてぎこちない笑顔を見せるという劇的な終わり方をする。

 第8話は、3人目のエヴァンゲリオンのパイロット惣流・アスカ・ラングレー(14歳・女性)が登場する回でもあるし、海の上で、空母に落ちてくる巨大なエヴァンゲリオン の影が大きくなってくるところや、重さを表現するような空母の大きな揺れなど、映像的にも新鮮だったので、選ばれるのも納得がいった。

 ここまで放送は5回が終わった。あと7回。もともとのテレビシリーズは、あと21話が残っている。この後の「選択」は難しいけれど、興味は高まっていた。

意外な「選択」

 自分が柔軟性に欠けると思ったし、意外な「選択」だと思ったのは、次の放送回だった。
 この「NUMAnimation」 だと6回目

 選ばれたのは、第4話。
 ここまでも、戦闘シーンが多い回が選ばれている印象が強かったし、その「選択」の結果は、ツイッターの得票数(ちょっと違う表現かもしれませんが)も出ている。この第4話が選ばれているのは、放送回からいえば、前回の8話から戻るのだから、それは時間が戻るような選択でもあったのだけど、この回の得票数は742で、12話中では2番目に多い。

 だから、ここは視聴者の明確な意志が表れていると思った。

 この第4話は、ここまでで身体的にも精神的にも過酷すぎる戦いを経験した主人公の碇シンジが、もうエヴァンゲリオン に乗らないと決意し、いったんは去ろうとするが、いろいろな人と接する中で、誰かが決定的に説得するというのではなく、自分で内省して、再び、戦いの中に戻ってくることを選び直す、という回だった。

 戦闘シーンはほとんどなく、会話や、沈黙や、重い空気に包まれているが、その中で、それでもやるべきことを「選択」する静かな意志が描かれている。

 この回が選ばれたことが、一番意外でもあったが、でも、同時に納得がいった。
 この迷いと選び直しが、1回分使って、たっぷりと描かれていて、それが「エヴァンゲリオン 」の本当に熱心なファンが見たかったし、見せたかった大事な要素の一つなのかもしれない、と個人的には思っていた。

力を合わせること

 その後、第7回目の放送で、選ばれたのは、第11話
 今回の12話の中では、もっとも多い987票を集めている。

 シトによって本部が停電させられる、という画面的には暗い設定だが、おそらく、この回だけが、碇シンジ、綾波レイ、アスカの3名のパイロットが、悲壮感が薄く、まるでスポーツのゲームのようにチームプレーで戦い、相手を殲滅するという流れが見られたと思う。

 だから、純粋に「力を合わせること」が見たかったのではないか、と思った。

 このあとは、さらに話は重くなっていくはずだから、どのような「選択」をするのだろう、と思っていたら、第8回目の放送で選ばれたのは、第9話。また、時間が戻った。

 この回は、碇シンジと、アスカの二人のパイロットの完璧なシンクロが必要だから、そのために、一緒に生活をし、時には同じ格好をするというコミカルなシーンが続いたあと、流れるようなクラシック音楽をバックに完璧なコンビネーションを見せて戦うという回で、これも「力を合わせること」が描かれている。

 もしかすると、第11話で、3人のパイロットのチームプレーを見たあとに、2人が完璧なコンビプレーをする姿も見たくなったのではないか、と思ったが、振り返れば、その前に1000に近い最大の得票数があったあと、この回は、360票になっているから、全体的に、視聴者の集中力が、少し離れてしまったのかもしれない。それを示すように、次の9回目の得票数は、153と、最も少ない数になった。

圧縮された展開

 ただ、ここからは、アニメ終盤に向けて、密度も重さも暗さも増していく展開がよく分かる、納得もいく「選択」だった。

 第9回目は、第18話。 (得票 153)
 とても救いがない話だった。ただ、すごく完成度の高い回だった。
 新しくエヴァンゲリオンのパイロット候補になったのは、碇シンジのクラスメートだった。そのクラスメートが乗り込んだエヴァンゲリオン はシトに乗っ取られ暴走を始め、その詳しい事実を知らされないまま、碇シンジは、戦いを強いられ、しかし、同じ年頃の人間(具体的には誰かは知らない)が乗っているのを知り、戦いを拒否するが、本部の責任者の父親によって、外部から強制的に、パイロットの意志とは無関係に動かされ、それは、必要以上に残酷に相手を殲滅してしまうことになった。最後に、その殲滅したエヴァンゲリオン のパイロットの生存を知るが、それが、クラスメートとわかって、碇シンジは言葉を失って終わる。

 第10回目は、第19話。(得票 249)
 もうエヴァンゲリオンには乗りたくない、と主張する碇シンジ。それも当然と思われるが、理由を知りたがるシンジに、直接の上司でもある葛城ミサトは、同じクラスの人間は、すべてパイロット候補だったということも明かす。それでも、シンジは去っていくのだが、その途中でシトがあらわれ、このままでは全員が殺されるという状況になってから、再び、碇シンジは戻り、戦い、そして、エヴァンゲリオン とのシンクロ率は400%に達し、その抑制が解かれていく。

 終盤には、どの回も、情報量が増え、圧縮され、とても密度が高くなっているように思い、それが加速していくようにさえ感じる。

 第11回目は、第23話。 (得票390)
 ストーリーは終末感が強くなっていく。
 綾波レイは、戦いの中で、碇シンジをかばい、自爆に近い形で、乗り込んでいるエヴァンゲリオン ごと大爆発をしてしまう。ただ、その後、綾波レイは、大量に培養されるような存在であることも、この回で明らかになる。

 第12回目は、第24話 (得票583)
 負けたことで、「認められたい」(リンクあり)を失い、ほぼ廃人のようになってしまったアスカが発見され保護される。そして、新しいパイロットが現れ、彼は渚カヲルと名乗り、短い時間で碇シンジはとても彼に惹かれる。だが、その渚カヲルは、シトで、戦って、彼を殺すことになってしまった。
 これで30分だから、よくここまで圧縮したと思えるような内容だったが、その一方で、アニメなのに静止画の場面がとても長い演出があり、それが強い緊張感を生むという時間まであった。

終盤に伸びていった得票の理由を考える

 最終3回分の放送では、得票が伸びていった。
 第9回で100票台と、最も少ない票数になったが、第10回は、200台、第11回は、300台、第12回は500台後半まで伸びていった。

 これは、確かに終盤に向けて、視聴者の熱が戻ってきた可能性もあるが、もしかすると、この動きは、このあとに第25話、第26話が最終回で、放送当時も賛否両論だったといわれる最後の2話が存在していたせいかもしれなかった。

 その2話は、アニメというよりは、ビデオアートといってもいいような、ある意味ではストーリーがない話が、1回だけでなく、2回続くという、かなり斬新な展開だった。それは、いろいろな推察を生んだ。これだけの作品を作ってくれば、予算的にも、製作陣の限界を超えたのではないか、といった説も唱えられたが、たぶん、今でも真相は明らかになっていない。

 それでも、その2話に関しては、今回の「地上波補完計画」の視聴者は、今も拒絶している可能性がある。その2話の放映を避けたいために、終盤に向かって、他の回(19話、23話、24話)の得票が伸びていった可能性はないだろうか。

 全く違うのかもしれないが、そんなことを考えた。

 今回、「地上波補完計画」を見て、「エヴァンゲリオン 」は、私にとっては、今でも新鮮なアニメだったし、そういえば、「芸術新潮」のような雑誌のアニメランキングでも、ベスト1位をとったのが「エヴァンゲリオン 」だったのも、改めて思い出した。


「シン・エヴァンゲリオン 劇場版」

 今年2020年、「シン・エヴァンゲリオン 劇場版」が公開される予定だが、コロナ禍によって、その公開が伸びている。ずっと「近日公開」のままだけど、いつ見ることができるのだろうか。ただ、こういう時期に公開されるはずなのに、まだ予定が未定なのは、エヴァンゲリオン のようだ、といった勝手な印象も持ったりする。同時に、最初のテレビシリーズが始まってから25年もたって、完結させるのだから、期待を持たないようにしているけれど、持ってしまっているのだと思う。

 ただ、その期待はかなえられないのではないか、と何年か前までは思っていたが、庵野秀明が総監督・脚本を手がけた「シン・ゴジラ」が、想像以上によかったので、期待が、そこから時間をかけて、また高まってしまっているように思う。でも、期待を持っちゃいけない、とまた気持ちは回る。

 タイトルに「短い」という表現があって、ここまで読んでいただいた方には、短くないと思い、不愉快だったかもしれません。すみません。それでも最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 この記事は、これまで「エヴァンゲリオン 」について書かれた様々な文章に比べたら、本当にささやかと考え、「短いレポート」というタイトルのままにしました。ご了承くだされば、幸いです。


(参考資料)




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「心に火をつける業界系アニメ」が、今年に入って、続いたことを考える

暮らしまわりのこと。

いろいろなことを、考えてみました。

「思い出に関する、いろいろなこと」

「コロナ禍日記 ー 身のまわりの気持ち」① 2020年3月 (無料マガジンです)。

「コロナ禍日記 ー 身のまわりの気持ち」② 2020年4月  (有料マガジンです)。


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おちまこと
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