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【Interview #02】CTOが語る、創業当初から徹底している3Sunnyのプロダクト開発思想

共同創業者でもあり、CTOとして『CAREBOOK』の開発を支え続けている矢澤さん。新卒で入社したSIerを経てGREE、リクルートキャリア(当時。以下、リクルート)と転職し、なぜ起業を考えたのか。創業の背景や開発のこだわり、メンバーカルチャーをお伺いしました。
※この記事は2024年7月に加筆・修正しています


今までのキャリアと、初めて語られる創業エピソード

—————矢澤さんはなぜエンジニアになろうと思ったのですか?

小さい頃からゲームが好きでドラゴンクエストやファイナルファンタジーなどやっていました。あるときゲームのスタッフロールを眺めていて、「このひとたちがゲームを作っているのか!こういう職業って面白そうだな」と思い、幼い頃から自然とIT系を目指すようになったんです。

当時、デスクトップPCを両親に買ってもらい、最初はインターネットにも繋がっていなかったため白黒の画面でドットの亀を動かすみたいなことを本で学んでいました。読者で知ってる人は少ないかもしれませんが、「テレホーダイ」というダイアルアップ接続のインターネットを使えるようになり、そこからも独学でプログラミングを学び吸収していきました。Googleもまだない時代です。

高校生のときに進学を考えた結果、プログラミングが好きだったのと「次にインターネットが来るな」という思いがあり、ネット環境が整っていて情報工学がきちんと学べる大学を探していました。

今では普通のことかもしれませんが、当時インターネットが大学のどこでも使用できるという環境はかなり珍しく、構内どこでもインターネットが使えることに重きを置き、とある私大に入学したんです。
入学前から研究室へ訪問し、「先生のところで勉強させてください」と通うような、変わった学生でした。1年目から研究室に入り浸っていましたね(笑)。

—————その後のご経歴を教えてください。

その後、憧れていたゲーム業界に向けて就活はしていたものの、当時のゲーム業界は毎日深夜まで残業、土日も働く…という状況で相当なハードワークだったんです。そこで一旦、SIerの企業に入り、最初の数年間はプログラマーとして、後半数年間はプロジェクトマネジメントや営業の折衝方法などを学んでいきました。社会人としての基礎をこの時期に身につけました。

そのうちにソーシャルゲームブームの時代が到来し、その波に乗るかたちでGREEに入社しました。もともとゲームが大好きでしたし、技術的にも先進的な取り組みを経験できることもあり、ドンピシャな会社でした。

GREEでは、過去の私の経験にはない、文字通り桁違いの処理量を捌く開発力をもつ優秀な人達と仕事ができたことはとても学びになりました。あるゲームの事業責任者を担当させてもらうこともでき、憧れだった東京ゲームショウで自社ブースではありますが登壇を果たすなど、やりたかったことを一通り経験することができました。

その後のキャリアをどうしようか悩んでいたときに、志水(3Sunny 創業メンバー)がリクルートに誘ってくれたんです。GREEとは違った側面で面白くて刺激的な組織だよと。そういったきっかけもあり、リクルートに入社しました。

リクルートに入社後は開発だけでなく、事業企画も経験することができました。リクルートの『New Ring (当時)』という新規事業開発コンテストに志水含めて3人で応募し、初期の予算が付くまで選考を通過していく。といった経験もあったんですよ。

このときに自分の得意不得意が明確になり、「自分は営業として顧客に飛び込みインサイトを見つけていくよりは、どう作り込むか考えて、作り上げていく方が自分に向いているな」というのがわかったんです。逆に志水は見つけていくことが得意でした。私は組み立てていく方が得意だったので、お互いの得意分野が明確になった時期でしたね。おそらく志水はずっと前からそう思っていたと思いますけれど(笑)。

リクルートの『New Ring』では、医療分野での起業を視野に参加していたんです。しかし、法務部から現行法ではグレーだから事業化はむずかしい。と一刀両断され、それなら思い切って一緒に起業しようよ、と志水から話を受けていました。いわゆる遠隔診療領域で、大きな組織で事業化を考えるタイミングとしては、当時は時期が早すぎたんだと思います。


—————なぜ「医療介護領域」で起業しようと考えたのですか?

志水・矢澤とも医療介護領域での原体験があったからです。
複数の起業アイデアはあったものの、家族の入院や介護で悩んでいたバックボーンがあり、起業するなら「医療介護領域」だよね、とずっと考えていました。

そのときに志水のリクルート中途入社同期で、同じく原体験があり起業を考えていた榎本(3Sunny COO)と意気投合し、3人で創業しました。出資を受けたのはこの後のタイミングになります。

「自分の子どもたちが大きくなるまでに1つでも社会課題を解決し、よい世界にしていきたい」、「きちんと世の中で必要とされる事業を創りたい」という熱い思いと勢いで起業しました。

起業後すぐは受託開発や、榎本が人材紹介業でなんとか食いつなぎ、その間に複数プロダクトを進めていく状況でした。3人の知人経由で受託案件を見つけてきて、私が受託開発の実務を回す。志水はプロダクトを考える。みたいな立ち回りでした。

CTOが創業当初からこだわる、『CAREBOOK』の開発思想


—————『CAREBOOK』が生まれるまでは、どのような経緯を辿ったのですか?

最初は、訪問看護師向けの求人メディア『CAREBOOK JOB』を作って人材紹介領域でサービスローンチをしたり、さまざまなサービスを企画してはクローズする、を繰り返していました。その過程で医療介護領域の「現場の肌感」というものを学んでいきました。

模索する中で、とある病院さんが紙で訪問看護ステーションを探している様子を拝見したんです。紙だとデータが古く、医療機関がなくなってしまったり番号変更が起きたりと大変不便で管理に困ってると。それを見て、医療機関に特化したGoogle Mapを作ったんです。まずはMVPをつくり、実際に使ってもらいながら実務で使いやすくなるよう改良を重ねた結果、現在の『CAREBOOK』につながる『CAREBOOKサーチ』が生まれました。

—————開発のターニングポイントはあったのですか?

某大学病院に志水がテレアポしたことがきっかけで病院さんが興味を持ってくださったことが大きなターニングポイントになりましたね。実際に訪問し、困っていることをヒアリングした結果、とにかく退院調整をしてくださるメディカルソーシャルワーカーさん(以下、MSW)がいないことに最も困っていることがわかったんです。専門知識を有する領域で、マンパワーが足りないと。

大学病院の採用は年に一度と定められているケースが多く、もしMSWさんが産休・育休に入られると途中で人材を補充することが基本的にできないんです。専門職である事もあり、採用候補となる人数がそもそも少ないため、簡単には採用できないという課題もありました。

その課題を解決するため、3Sunnyの看護師メンバーにBPOとして常駐していただき、MSWの業務を一部代行させていただいたんです。その際に、私自身も執務室に常駐し、システム面の補助業務をしながら退院調整について深く学んでいきました。毎回アイデアを出してはMSWさんに壁打ちするという日々を重ねていきましたね。

例えば、病院同士の連携で使われている紙の伝言ノートを拝見することで連携の課題を見つけ、MSWさんが日々行う工数負担を設計に落とし込んでいきました。ひたすら吸収しアイデアを出し続けるという時期があったからこそ、サービスを0から1に進ませることができたと感じています。

この大学病院さんでは導入自体は結構先になってしまったものの、別の大学病院で初めて『CAREBOOK』の導入が進み、チャット機能の見え方改善など、さらに磨き込むことができたと思っています。

大学病院にスタートアップがシステムを提供する際に発生する、様々なハードルを経験し学習することができました。


—————『CAREBOOK』開発について、どのようなこだわりを持っていますか?

なるべく機能としては少なくし、サービス上でユーザーさん側で工夫できる余地を残しておく、というのが僕の我でもあり、基本方針となっています。ITに不慣れな人たちでも、迷わずにすぐ使える事を再重視しています。

「シンプル・イズ・ベスト」と言葉で表現すると簡単ですが、言うは易く行うは難しという道を頑張って進んでいます。

少しファジーな表現かもしれませんが、この1つの機能でこれらの顧客ニーズは全部対応できるよ。というような「余白」を残しつつ、基本の機能はシンプルを維持していく。こういった点を大切に開発しています。

細かい用途で機能をみっちり作ってしまうと機能が細分化されてしまいますよね。はっきり行って、初見で使えないサービスになってしまうと思っています。医療従事者の方には、「昔ながらの電子カルテ」をアンチパターンとしてお話すると、とても納得してくださいます。

「どういう業務シーンでその機能を使いたいと考えているんでしょうか?」というように、業務シーンを深く捉えるために、ユーザーさんにしっかり聞き込みし、きちんと理解した上で本当に必要となれば開発をするということを大事にしています。

—————矢澤さんのポリシーを教えてください。

個人として大事にしていることは会社のSpritでもある「圧倒的な現場主義」「巻き込み支え合う」「未来から逆算する」に現れています。3人で意見が完全に一致したことで生み出されたSpritなんです。創業メンバーだけなく、これまで〜現在の採用においても3つのSpiritに共感してもらえるかを非常に重要視しています。

その中でも「圧倒的現場主義」がやはりベースになっていますね。とにかく現場を正しく理解する、しかし現場の方が言っていることを鵜吞みにしない、というのもあります。ユーザーさんが絶対的な正解を言っているわけではないですからね。

ユーザー個々の意見はあくまでも枝葉な場合が多く、幹が大事だとおもっています。もっと俯瞰して見て森ってなんだっけ、というところを意識的に考えていくことが必要だと思っています。

開発組織でいうと、現場主義でありつつ機能を増やさない哲学を大事にしています。事なかれ主義になると御用聞きになってしまいます。顧客に言われたことを作るだけで忙しくなって精一杯、という開発組織は避けたいですね。

今いる開発メンバーも、自分で何かしらリリースする経験をしてもらったあと、フィールドセールスに依頼し、実際に一緒に現場に行っていただくんです。

一般的な組織だと、エンジニアはよほどのことがないと現場に行かないので、顧客の執務室に伺って自分が開発に携わってるサービスを目の前で使っていただき、現場の方からのフィードバックを直に受けてもらいます。

自分が開発に関わった部分について、現場で顧客が利用している姿をみることで「自分ごと」としてサービス開発できるとおもっています。今後もこれは続けたいと思っていますね。

これによって、同じ世界をちゃんと感じてもらうことを大切にしています。現場を知るという経験も、0と1では大きく異なると思っています。

CTOが築いてきた、3Sunnyの魅力とカルチャー


—————3Sunnyに入社して得られることは何ですか?

今は病院向けがメインとなっている退院調整クラウドサービスですが、在宅領域(老人ホームや、まちのクリニック、患者さんの自宅など)に関しても積極的にサービス展開をしていきます。つまり、今後も0→1のプロダクト開発がたくさん発生します。

BtoBサービスの領域を超え、BtoBtoCという、より私たちの生活に近い分野に参入していきますので、自分自身やご家族の入院・介護などを通して、自分が開発したサービスが自分やご家族のライフイベントに関わっているということを実感できると思います。

例えば、導入いただいている病院さんにご家族が入院すれば、退院時にお世話になるMSWさんが使っているシステムが『CAREBOOK』となるわけです。

そうなると、とても身近なプロダクトになりますよね。ご入社いただければ、そういった世界観を感じていただけるのではと思います。

—————3Sunnyのメンバーカルチャーは?

強みを思う存分伸ばすことができるのが、3Sunnyのメンバーカルチャーだと思います。
人には不得意な部分が必ずありますから、ある人が不得意な部分は、そこを強みとする他のメンバーに補ってもらうことで3Sunnyはここまで大きくなったんだと思います。

自分も誰かを支え、支えられているというのが、3SunnyのSpritである「巻き込み支え合う」という言葉に表現されていますし、根付いています。困ったときは、色んな人を巻き込んで解決していこうという姿勢でもあります。


—————2024年7月からは、新たにPdMチームが発足しました。このタイミングでPdMチームを作った背景と、矢澤さんが目指していることを教えてください。

CAREBOOKをご利用いただいている病院は、2024年7月時点で1900病院を超えました。今後もプロダクトラインをさらに増やしていきたいと考えています。言葉にすると当たり前のことではあるのですが、プロダクトラインを増やすには、それらを取りまとめ、横断的にマネジメントする人が必要です。

これまで、私たちは組織内にそのような役割を持ったチームを意図的に作ってきませんでした。背景には、全員でプロダクトと向き合い、顧客に向き合っていく姿勢を大事にしたいという思いがあったからです。そのため、意図的にPdMという専門職を作らず、ボトムアップでのプロダクト価値の創出にこだわってきました。

しかし、組織の人数も増え、顧客数も増えた今、「顧客への提供価値を決めきる」旗振り役が必要な時期になったと感じました。さらに、社外の先輩CXOとの対話を通じて「組織を変化させるタイミング」だと確信しました。

このチームの役割の一つとして大事にしたいのは、プロダクトを作るという観点での一体感と熱量です。それをきちんと仕組みとして作っていく第一歩として、プロダクトの顧客への提供価値という軸において組織横断的に取りまとめるPdMチームを発足しました。

理想としては、PdMチームが強い引力を持ち、「プロダクトの価値を考える・磨き込む」という行為に、エンジニア・デザイナー・営業・企画職など、あらゆる職種が集まるプロダクトづくりの環境を実現したいと思っています。これが実現できれば、開発のスピードも向上し、顧客への価値提供スピードも上がるはずです。


—————3Sunnyに合う方はどのような方だと思いますか?

技術だけを期待する方だと合わないと考えています。3Sunnyのメンバーは、みんな社会課題に向き合い、その解決に必要なサービスを自分たちの力で作り上げていくという想いを持っています。Why / Whatが先で、Howは最後です。この考えに共感できる方と一緒に働きたいですね。

また、新たにPdMチームが作られたように、組織体制の変更が行われることもありますし、自身の業務や役割が変わることもあり得ます。3Sunnyはまだまだ変化の多い事業フェーズなので、そうした変化もポジティブに捉え、カオスな状況を楽しみたいという気概のある方には合うのではないかと思います。

顧客や組織の規模が大きくなっていきますが、お互いの理解を深め、自分のできない部分を補ってくれているメンバーへの感謝の気持ちを決して忘れないように仕事をしていきたいですね。

これからも創業初日の気持ちを忘れずに、日々取り組んでいきます。

(終)

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