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240114 アルマジロにジレンマはない

今日のプレイ・リストから 086
エヴリシング・イズ・レコーデッド
「ヤマアラシの入れ墨」
プロデュースはリチャード・ラッセル
歌はノア・サイラスとビル・キャラハン


ヤマアラシの一群が冷たい冬のある日、凍えないために互いの体温で暖め合うために、ピッタリとくっつきあった。だが、間もなく互いのとげの痛いのが感じられて、離れる。温まる必要から、また寄り添うと、二度目のわざわいが繰り返される。

ショーペンハウアー「哲学小品集5」第31章 第396節(全集14巻 白水社)

エヴァで有名になった「ハリネズミのジレンマ」の元ネタです。ひょっとすると本曲もこの話を踏まえているのかもしれません。ただ、アルマジロが出てくるところが面白い。

アルマジロには棘がありません。だから、近づいても刺されません。けれど、厚い甲羅のために、どんなにピッタリくっついても心温まることはないでしょう。今もヤマアラシな彼女を前に、刺されまくってアルマジロに変わってしまった男は、昔は俺もヤマアラシだったと、自分の腕に彫った入れ墨を眺めるといったところでしょうか。

親密な人間関係はかえってお互いを傷つけあうというのがヤマアラシのジレンマですが、この話には続きがあります。

こうして彼らは、難儀を繰り返しながら、ほどほどの間隔を置くことを工夫した。……この隔たりのお陰で、お互いの暖め合おうという欲求は十分には充たされないが、その代わりに棘で刺される痛さは感じないですむ。

前と同じ

ジレンマを解決するために、一定の距離を保つ重要性を説くのです。日本流に言えば「親しき中にも礼儀あり」です。なにもアルマジロにまでならなくてもよいわけです。まぁ、それぐらい極端な人物のほうがロマンチックだし、歌になるのかもしれませんが。

エヴリシング・イズ・レコーデッドは、イギリスのプロデューサー、リチャード・ラッセルが企画する共同音楽プロジェクトです。作詞作曲をアメリカのSSW、ビル・キャラハンに頼んだところ、一緒に歌う相手としてノア・サイラスを指名しました。彼女はグラミー受賞歌手、マイリー・サイラスの妹です。