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250124 管楽器を媒介した胸腔と空間の共振
今日のプレイ・リストから 097
コリン・ステットソン
「おまえと別れるのに必要だった愛」
本作はモントリオールの郊外にある、工場跡に造られたスタジオで録音されました。動画を見るとサキソフォンの前にスタンド・マイクが3本、サキソフォンのリード近くにコンタクト・マイクが2本。ということは、楽器だけでなく、息や喉の音も狙っているんですね。
さらに、画面では見えませんが、演奏しているホールと、増幅した音を流している3つの部屋に複数のオフ・マイクをセットしているそうです。全曲にかかる奥深く、硬質な残響は、古い工場の広大な空間がサキソフォンの音に波打つ響きなんです。そして、録音は一発取り。オーヴァー・ダビングしていないっていうんですから、これは熱い!熱すぎます。
コリン・ステットソンは今年50歳になるカナダのサキソフォン奏者です。9歳から吹き始め、15歳で循環呼吸を会得しました。鼻から空気を吸いながら口から息を吹き出せるので、息継ぎをせずに長い楽章を演奏し続けることができます。クラシックでは特殊なんだそうですが、日本の尺八やアボリジニーのディジェリドゥなどでも用いられる伝統奏法です。
これまでルー・リードやトム・ウェイツ、ビル・ラズウェルらと共演してきたとのことです。なるほど、道理で。ボクは知りませんでしたが、ホラー漫画実写映画「UZUMAKI」の音楽担当なので、きっと知る人ぞ知る存在なんでしょう。とにかくファンになりました。