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それは鈍い音だった。

私は無意識に置いてしまった物の場所を忘れやすい。
それは1月3日、夕方のこと。

お風呂上がりの乾燥肌を保湿すべく私はクリームを手に取った。顔に塗るにはメガネを外す必要があった。
片方の手の平には既にクリームが出されている。私は残っているもう片方の手でメガネを外すしかなかった。

ここが運命の別れ道だった。

片手ではメガネが折りたたみにくい。私はメガネをたたむことを諦めた。
そして、メガネをテーブルまで置きに行くのが面倒だった私は横着してしまった。

そう、メガネを投げたのだ。
しかし、投げた先はクッションが敷いてある椅子。メガネは無傷のまま椅子の上に鎮座した。

メガネが無事であることを見届け、私は安心して作業に取りかかった。
顔にクリームを塗り終えると、そのまま歯磨きを始めた。歯磨きをしながらスマホをいじろうと、私が椅子に腰掛けた、その瞬間だった。
「ポキポキ」っと鈍い音と共に、私の尻の肉が物体を感知する。

これは…マズい

私は恐る恐る尻を上げた。
そこには無惨にも両サイドの棒の部分が根元から折れて立体感を失ったメガネがいた。

私は歯ブラシを咥えたまま、平面と化したメガネを拾い上げた。
なんと悲しい姿に成り果ててしまったのか。誰がいったいこんな事を…

…私だ。
紛れもなく、この尻で踏んだ。

私の尻がもっとソフトだったなら、卵さえも守りきるようなクッションのように、メガネも無事に包み込めるような尻だったなら、まだ希望はあったのかもしれない。
しかし、私の尻は貧相な肉と皮と骨。ソフトな尻なんて夢のまた夢。逃れられない衝撃。メガネもなす術がなかったに違いない。

私は買い替えを危惧した。
年末年始の支出オンパレード。
この時期に買い替えは痛すぎる。

メガネの折れた場所を確認した。
不幸中の幸いだった。

メガネを折りたたむ機能はギリギリ生きていた。まだこのメガネは死んでない。息はしている!
私は一世一代の大手術を行うことを決意した。

#なんのはなしですか
#どうかしているとしか

次回
「生きるか死ぬか、大手術。メガネの運命は…」

#どうでもいいか



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蒔倉 みのむし
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