コルトレーンサウンドと音楽のなせること
人生の中で自分を支えてくれたり励ましてくれる特別な音楽というのを持っている人は多いのではないかと思う。
それがロックやポップスだったり、日本の音楽だったり、洋楽だったりと人それぞれだろう。
私の場合、それはコルトレーンのマイフェイバリットシングスの演奏だった…。
北海道出身の私は、地元北海道のデザイン専門学校の商業施設デザイン学科を卒業。
上京して、ある建築会社へ就職した。
しかし、若気の至りというか、何も考えずに就職してしまった私は、早くも混乱状態に陥ってしまうのだった。
まず、絵やイラスト、デザインばかりをしていて建築現場など行ったことなどないため、わからないことだらけである。
また、現場の労働とも無縁であったのが、現場の手伝いをすることになり、面食らってしまうのだった。
夢を持って北海道から東京へ出てきたはいいが、理想と現実の狭間で苦悩する日々、心が折れそうになっていた。
そんな時に、私を支えてくれたのは学生時代から聴いていたコルトレーンのマイフェイバリットシングスだった。
学生時代に買ったCDは、日本で作られた廉価なコルトレーンの寄せ集めのベスト盤である。
そこに収録されていたのは、1963年ニューポートジャズフェスティバルでのマイフェイバリットシングスの演奏だ。
アルバム『セルフレネス』にも収録されており、コルトレーンのマイフェイバリットシングスの中でも最高の演奏と名高いものである。
その演奏は最強の気迫と呼べるような熱い演奏だ。どこまでも高みに向かって突き進むコルトレーンカルテットのパワー、そして飛翔し続けるようなコルトレーンのソプラノサックス。
弱気になり、心折れそうになる当時の私にコルトレーンの演奏は喝を入れてくれるのだった。
結局、私はその後、その建築会社は辞めることになるのだが…。(会社へは迷惑をかけてしまいました。)
ただ、下手をしたら、そこで挫折したり、投げ出したりして、地元へ帰っていたことも考えられるのを踏みとどまらせたのは、コルトレーンサウンドによる支えが大きな要因となっていたと言っても過言ではない。
そして、私は、東京でもう一度改めて絵に対して真剣に向き合いはじめたのだった…。
思うに、人生気合いや根性だけでなんとか乗り切れるほど甘くはない。
しかし、たとえ知識や技術、知性があったとしても、それを実行に移し、物事を成し遂げるためには、それを推進する気合いや根性が必要だと思う。
コルトレーンサウンドはその事を思い出させてくれるのだ。
『音楽の力を信じたい』
コルトレーンと並び称されるテナーサックスの巨人ソニーロリンズは、9.11アメリカ同時多発テロ直後のライブ(アルバム『ウィザウトアソング』に収録)のMCでそう観客に語りかけた。
音楽のなせることは、間違いなく大きい。
コルトレーンのマイフェイバリットシングスを通して、少なくとも私にとってはそうだったとはっきりと言えるのだ。
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