余談ですがコラム 物に色はないの!?ウソでしょ?それホント?
物体に色はついていない?
日常生活の中で、私たちはたくさんの色に囲まれて暮らしていますよね。真っ赤なリンゴや鮮やかな黄色のバナナを見て、「きれいだな」「美味しそうだな」と感じることも多いはず。
でも、その色ってどうやって生まれているのでしょう?物そのものにあるのでしょうか?
実は、物には色が付いていません。
「えっ?」と思われるかもしれません。これは驚きです。赤いリンゴも黄色いバナナも、物体そのものは色を持っていないのです。
赤リンゴが赤い理由
では、赤リンゴが赤く見えるのはどうしてなのでしょうか?その理由は、光と波長、そして物体の性質が関係しています。
物体自体に「赤い色」がついているわけではなく、リンゴの表面が特定の波長の光を反射し、それ以外の波長を吸収する性質を持っているからです。
光には目に見える範囲(可視光線)と見えない範囲(赤外線や紫外線など)があり、可視光線の中では波長の違いが色の違いを生み出します。たとえば赤い波長(約620~750nm)がリンゴの表面で反射し、その光が私たちの目に届くことで「赤いリンゴ」として認識されるのです。
つまり、赤リンゴが赤く見えるのは、反射された赤い波長を網膜の細胞が感知し、脳がその情報を「赤」と解釈するからです。
光には、直接目に届く「光源色」、物体の表面で反射する「表面色」、そして物体を透過して見える「透過色」があります。リンゴの場合、表面で反射する光が「表面色」として認識されます。一方、赤ワインのように半透明なものでは、光が透過して「透過色」として見えるのです。赤ワインの色は、この透過した光が作り出しているんですね。
バナナが黄色に見える理由
次に、バナナが黄色く見える理由についてお話しします。
実は、人間の目には黄色を直接認識する細胞はありません。
「じゃあバナナはどうして黄色く見えるの?」と不思議に思いますよね。それは、目の中にある三種類の錐体細胞がポイントです。
光が目に入ると、網膜にある錐体細胞が「赤」「緑」「青」の光を感知して信号に変えます。この信号は視神経を通じて脳の視覚野に送られます。視覚野では、それぞれの信号の強さを組み合わせて色が作られます。たとえば、赤と緑の信号が同じくらい強いと「黄色」と認識されます。
視覚には錐体細胞の他に、稈体(かんたい)細胞が関与していて、暗い所では色ではなく明暗を感知しています。暗闇の中でぼんやりと形が見えるのは、桿体細胞が働いているからです。
色は脳の解釈によって作り出されるものなのです。物体そのものには「赤」や「青」といった色は存在せず、色は光と視覚の相互作用によって生まれる「現象」なのです。
この不思議な感覚も、色が光と視覚、そして脳の解釈で成り立っていることを物語っています。
こう考えると、二つの色を混ぜてできたバナナの黄色は、錐体細胞たちが協力して作り上げた「チームワークの賜物」とも言えますね。「はたらく細胞」ですね。
色と思い込みの不思議
さらにもうひとつ面白いことがあります。それは「思い込み」です。
暗闇の中でも赤いリンゴや黄色いバナナを想像するのは、脳が「赤=リンゴ」「黄色=バナナ」と記憶しているからです。実際に色が見えているわけではなく、脳が作り出した「イメージの色」を感じています。
潜在意識に蓄積されたイメージの色は、これまで目にしてきた世界そのものが作り出しています。
夕焼けの赤、秋の紅葉、海の青、新緑の鮮やかさ。こうした色の記憶が潜在意識に刻まれ、無意識に私たちの感じ方に影響を与えています。
赤を見ると元気が出たり、青を見ると落ち着いたりするのも、過去にその色をどのように感じたかが大きく関係しています。暗闇でも赤いリンゴを思い浮かべるのは、「赤=リンゴ」という思い込みが潜在意識に深く根付いているからなのです。
色と潜在意識のつながりを知ると、「私たちの感じ方や思い込みって、こんなふうに作られていたんだ!」と驚くかもしれません。
これから色を目にしたときには、その色がどんな記憶や感情を呼び起こしているのかを少し意識してみると面白い発見があるかもしれませんね。
色はただの光ではなく、心と深く結びついた特別な存在です。
色の三原色って何?
ここで「色の三原色」についても少し触れておきます。
光の三原色は「赤」「緑」「青」の三つ。テレビやスマホの画面でもおなじみですよね。赤と緑を混ぜると黄色、緑と青を混ぜると水色になります。三つをすべて混ぜ合わせると、白い光になります。これを「色光の三原色:加法混色」と言います。
一方、絵の具やプリンターのインクでは「シアン」「マゼンタ」「イエロー」が三原色です。これらを混ぜると色が暗くなり、最終的には黒になります。これを「色料の三原色:減法混色」と呼ばれています。
どちらも私たちの日常生活でよく目にする仕組みです。
まとめ:色は光と目と脳の合作
私たちが「色」を見ることができるのは、光と目、そして脳の素晴らしいテクノロジーがあってこそです。物体そのものに色があるわけではなく、光があって初めて色を感じることができます。
次にリンゴやバナナを手に取るときには、この仕組みをちょっと思い出してみてください。光と波長、そして目の細胞たちに、感謝したくなるかもしれませんね。