出産したオタク女性としての私
私はこのnoteにおいて、反出生主義だとか、自分の出産の話だとか、ASDの話だとかを書いて来た。もう一つ私のことを自己開示すると、私はライトな(?)オタクである。ライトというか、せまーく深いオタクである。
ASDだからそうなのかなと思うのだが、ある有名作品のマイナーなキャラクターに執心していて、ほかの作品にはあまり興味がなく、同一作品のほかのキャラクターもまぁ分け隔てなく好きだが、そのキャラほどではない。興味の範囲がめちゃくちゃ狭いのだ。どちらかといえばBLが好きなのでオタクの中でも「腐女子」というやつだろう(三十路になろうとしているので貴腐人でもいいかもしれないが……)。
オタクというには、あまりにライトだとも思う。そのキャラクターへの好きさは明らかに「オタク」といってもいいと思うのだが、それ以外への関心が薄いので、あまり一般的なオタクとは言えなさそうだと思う。それでも、私は一般ピープルではない(古い言い回しだ。いわゆるパンピとかいうやつではないということね)。
私は妊娠してから、創作活動がとんとできなくなった。ホルモンバランスの変化がそうさせるらしい。それに、母がBLなんぞにうつつを抜かしているようでは、お腹の中にいる我が子の胎教に悪いのでは?と思った(しかも女児だし……)。でも創作活動していないと、同じ界隈の知人たちに「あいつ引退したのかな」と思われるのが嫌だったので、たまーに某SNSで他愛のないことを呟くなどしていた。
問題は、これから書こうと思っていた小説の内容なのだ。わたしはASDなので、これから書こう!と決めたら、それにしか着手するつもりはない。予定を一度決めたら、それ以外の作品を描こうとは思えないのだ。やる気がない。そしてその作品において、某キャラクターが妊娠するという展開を盛り込む予定だった。
BLなのに妊娠とは?となると思うのだが、私の性癖は少々特殊で、男性なのに男性ではない、女性と男性の中間のような生命体であるキャラを好む。美少年で、相手男性バンコランとの子供を妊娠する展開がある「パタリロ」のマライヒをイメージして欲しい(提示する例があまりに古い)。ああいう感じだ。元作品のそのキャラは中性的だが普通に男性だと思うので、そこは捻じ曲げてしまっている(公式、公式至上主義の人、ごめん。スルーしてくれ)。どうしても最後に科学的裏付けがないのは嫌なので、「男と思っていたら実は(医学的に調べたところ)両性であった」ということが判明するところまでしっかり伏線をはらないと気が済まなかった。そしてそこまでは書いた。子宮がないのに妊娠するのはおかしいだろ!?という理由である。
じゃあそのキャラは女ではないか。と思うかもしれないが、そこは微妙だ。本人の性自認は、完全に男性とは言えないまでも、限りなく男性である。だってそれまでは、自分は男だと信じて生きてきたのだから。完全に女性になってしまうと、それはBLではないし、私の萌えにも合致しない。
①私は女性性嫌悪者である(自分の女性性を受け入れるのに難儀している。女性として性行為を行うことが極めて苦手である)。そして痛みに弱いからか、精神障害のため脳がそのモードにならないからか、夫との間で「性行為」ができなかった。だから私は、人工授精で子どもを授かった。
②そして反出生主義に共感してしまう部分がある。それなのに子どもを持とうとするなんてなんて酷いやつだと自分でも思う。まして発達障害が遺伝していたら、私は悪魔である。自覚はある。罪業意識が当然ありつつ、私はそれでも子を成すことを希望した(別のノートにこのことは書いた)。
こんな前途多難な状況でも、幸運にも私はわりとすぐに子どもを授かることができた。運が良かった。
私が、自分の「推しキャラ」に出産を経験させようとした理由。それは先述の二つの事情から導き出せる。
単に、受けになる推しキャラと攻めになる推しキャラが「性的な関係を持ち」、「妊娠する」という部分に萌えを見出すということではない(もちろん全くないとは言わない。たしかに魅力ある展開ではある)。
①' 私は、性行為が不可能な人間だ。だからDTや乙女のように、そこにファンタジーを見出せる。まともにできたことがないからである。まともにできたとしたら、どんなだろうと思うのだ。出産したにもかかわらず、私は「性の喜び」とやらを知らぬ(しかも女性性嫌悪があるので、知りたいとも思わない……)。私は大好きな推しにその経験をさせ、この「普通ではない私」の悲しみを昇華したかった。嫌悪していた性を、あるいは忌避していた痛みを美しいものだと思いたかった。それが実際は生々しいものだったとしても。
②' 生まれてきてつらかったと思ったことが何度もあった。今はそうは思わなくなった。私をすべて受け入れてくれる夫と出会うことができたからである。夫との間だから、子どもを授かりたいと思った。それでも、やはり妊娠してみて葛藤がすごくあった。罪の意識がずっとあり、妊娠期間中はずっと鬱状態で過ごした。娘が無事に生まれて本当によかったと思いいまは鬱状態もだいぶ和らいだが、それでも、幸せな妊娠出産はできなかった。私は、普通の人生を送ることが無理な脳を持って生まれてきた。普通というのは、思春期に精神を病まず、ほどほどに学問を修め、就職し、恋愛し、結婚し、愛する人との子どもを自然に望み、妊娠し、新たな生命の誕生をなんの疑いもなく喜べる人生だ。私はこれが出来ない悲しみもまた、好きなキャラクターに経験させることで昇華したいと思った。
だから私は推しが妊娠出産する小説を書こうと思ったのだが、それは私が今後の人生で子をなすことはできないだろうと思い込んでいたからだった。
人工授精をしたと書いたが、私は生理痛がひどく吐くほどなので、授かりにくいと思い込んでいたし、30歳を超えたら諦めようと思っていた(あと数ヶ月で30歳を迎える)。健康な男女が適切な時期にタイミングをとっても、子を授かる確率は3割程度。そして初期の頃は流産の可能性もある。
書こうと思って少し執筆した矢先に、妊娠に成功したことが分かった。
そして筆を折ってしまった。それは、少しでも自己投影する可能性を避けたかったからだ。推しは神聖不可侵だと思っている私は、自己投影したくなかった。
またほとぼりがさめたら、続きを書こうとは思っている。
私はSNS上で、出産したので小説がいまは書けないという事情を報告した。これが失敗だった。懇意にしていたフォロワーが離れていってしまったのだ。さまざまな事情の人がいるのに、配慮が行き届かなかった。
私は自慢したかったわけではない。そうではなく、書こうと思っていたことが書けなくなった。それが苦しかった。私生活の変化。とか一身上の都合。とかぼかせばよかった。いま激しく後悔している。
私が書こうとしていたものは、私の中で、あくまで私の中で人生のかなしみを癒すものであり、非常に重要だったのである。だから公表しなければ気がおさまらなかった。馬鹿だったと思う。よく考えたらよかった。彼女が離れていくだろうことは、予想できていたのに。私は彼女が大切だったので、彼女を失いたくなかった。いままで独身であるように振る舞ってきた。互いに趣味が似ていて、精神性も似ていて、似ている者同士だと思っていた。だが女性にとって、既婚か未婚かということは大きな違いだ。だからこそ黙っていたし、既婚であることなどおくびにも出さなかった。それがダメだった。ショックを受けさせてしまった。
似ているからよくわかる。私も、女性性を受け入れられない者同士似ていると思っていた友人が知らぬうちに結婚出産したことを知り、頭を鈍器で殴られたようなショックを受けて塞ぎ込んだことがあるから、多分そのように落ち込むだろうと思った。
かなり詳しく書いたので、知っている人が読んだら私だと分かってしまうかもしれない。
私は執筆したいことと引き換えに友人を失った。
しかしどれだけ言い訳を並べ立てようが、嘆こうが、彼女は戻ってこないのだから前を向いていかなければ。
オタク女性の界隈で、なにかが合わなくて離れていったという話はよく聞くのだが、私は遅くにSNSデビューしたし、作品を書いたのも最近になってからだった。だからこういうことははじめてで、心の整理がまだついていない。
これを読んで不快になる方もいるかもしれない。言い訳を並べ立てている偽善者だと思う人がいるかもしれない。馬鹿だと思われるかもしれない。BLが好きな自分をかっこよく飾りたいだけの単なる変態と思われるかもしれない。
だが書かずにおれなかった。忘備録のためだ。この悲しみを忘れない。私はそれでも、自分の人生のために書く。
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