SPOILMAN 1stアルバム「BODY」リリース記念インタビュー
SPOILMANの1stアルバム『BODY』がsassya-等をリリースしているレーベル、Kerosene Recordsからリリースされる。このバンドは3LAでは一度音源つきのZINEをディストロしたのみでほとんどの人は知らないバンドだと思う。90’sのオルタナ/グランジを経由しつつもナンバガ系には走らなかった男達の奏でる音は何かが狂っている。革命を起こす野心は一切感じないけれどここには何かがある。今回はバンドのことを知ってもらうことを目的のインタビューと位置づけコロナ第二派到来前の都心会議室でのインタビューとなりました。
バンドの中心人物カシマ(Vo/Gt)が中心に答えてくれました。
バンド結成まで
3LA: よろしくおねがいします!今回のインタビューはSPOILMANを知らない人にも紹介できるようなものにしたいのでバンドのここまでの歴史をおさらいしたいなと思っています。ロクトシチのメンバーがいるってことしか僕もわかってなくて。
カシマ(Vo/Gt): ロクトシチのギターの俺と、ドラムのタナベが始めて。そしてTTUDっていうバンドがいるんですけど...。
3LA:TT…?
ナガイ(Ba): はい、TTUDです。
3LA:なんでそんな名前なんですか?
カシマ:ティンティンアップサイドダウン、らしいです。それのベースのナガイさんが、ロクトシチ時代から仲良くて。2人でベースを探していたときに、俺が「ナガイさんがいいんじゃないか」と誘って始めた感じです。去年(2019年)の7月かな。3人が揃いました。
3LA : ロクトシチ解散して、すぐ次のバンドやろうぜって話になったんですか?
カシマ:割とすぐですね。最初はロクトシチのメンバーとかで集まってたんですけど、予定が合わなくなっているうちに俺がスリーピースでやりたくなってきて、最終的に俺と田辺が残りました。
自由に100%やりたい音楽をやろう
3LA : カシマさんの中で「スリーピースでやりたい」っていうのは、ロクトシチとは違う自分のやりたいことをやりたい衝動みたいのががあったってことですか。
カシマ:そうですね。あんまりもう暴れたくなくて。ロクトシチの時も、演奏そっちのけで暴れ狂ってたんですけど...もうそういうの嫌だなって。ちゃんと弾きたいなって。
なんていうんですかね。ロクトシチは結構5人の個性というか、ヴォーカルも女性で、もう1人のギターも結構凝ったことをしたがるから、自分の中ではAt The Drive-in みたいな。曲がありきで、そこでみんな結構自由にやるっていう。俺はそこで不満があったとか一切無いですけど、 Jesus LizardとかShellacが超大好きなんで。この機会で、ロクトシチが終わったんだったら自由に100%やりたい音楽をやろうと。それで、目立つために暴れるとかもうやめようかと。
3LA:音楽的になろう、ということですかね?
カシマ:そうですね。好きな音楽を100%やるってなったら、やっぱり。そういうのもあってスリーピースがベストだったのかもしれないですね。
3LA:Jesus Lizardっていい名前が出ましたね。
カシマ:あと、Jesus Lizardの前身バンドっていうんですかね。Scratch Acidも。
3LA: タナベさんも、最初2人で始めたときに、Shellacっぽい感じでやろうぜ、みたいな感じで意思疎通した感じですか?
タナベ(Dr):してなかったかも。もともと、ロクトシチはカシマくんがそういうの好きなの知ってたから、まあ、なるようになったな、みたいな感じでした。やってる時も。
ナガイ:うっすら話聞いていて、僕もそういうの好きだったから特にこういう音楽でやろうみたいな話はしてない。
カシマ : ナガイさんは、天然でそっちのほうの人だから、曲を渡したらそれっぽいのを弾いてくれるんですよ。
スティーブアルビニ最高
3LA : じゃあ、アルバム作るぞってなって、「アルビニ感を出す!」みたいなそういう感じですよね?
カシマ:アルバム録ってる間もエンジニアにずっと「アルビニみたいに、アルビニみたいに」って言ってましたね。
3LA: アルビニ感、感じましたよ。僕はアルバムを全部聞かせてもらって結構90’sだなって思った。EMOの人たちの90’sは「綺麗な90’s」だと思ってるんだけど、最初のSPOILMANのデモ音源は音も汚いからもっとダーティーでジャンクな音をやりたいのかと思っていたら、結構アルバムの音はしっかりクリアになっていて。
カシマ:今はライブとかは、音は、どっちかといったらアルバムと近いかもしれないですね。
アルバムは録音する段階で曲がもう20曲以上あったんで。全部聴いてもらうために10曲とかでまとめた方がいいのかなって悩んだんですけど、練習に入るたびに新曲ができちゃうんですよ。だから、10曲とかで渋ってたらアルバムで曲を消化できなくなるなと思って。追いつくためにも、15曲ぶちこみました。
タナベ:とりあえず曲を作るだけ作って、その中から何曲か決めてますね。
3LA:あと歌詞って掲載されてないですよね。歌詞がないのは、なぜなんですか?
カシマ:そうですね。歌詞を掲載しないのは、適当だからですね。そんなに、人に読んでもらうほどのものではないです。個人的なことなんで。それを敢えて読んでもらう必要ないかなって。知りたい人はDMくれれば教えます。
3LA:でも、歌ってるのって英語ですよね。しかもちゃんと歌詞あるし。日本語で歌う気はあんまりないんですか。
カシマ:日本語は絶対に歌わないです。英語の曲が一番かっこいいから。響きですかね。歌に対してのメロディーはあんまり好きじゃなくて。叫んでるのか、喋ってるのかぐらいの。申し訳程度にたまにつけますけど、そうすると、英語が一番かっこいいいんですよね。
日本語で歌うバンドをかっこ悪いって感じるのも結構多いですね。好きなものもいますけど。sassya-とか、日本語でそれやって逆にカッコイイって本気で尊敬します。
3LA:自分たちを理解して欲しくない?というか、そういう理解のされかたをしたくない?
カシマ:そうですね。歌詞で判断して欲しくない。
スタジオライブが、一番バンドがかっこいい形だと思う
3LA:最初の頃、スタジオライブでしかやってなかったから、スタジオでしかやらないのかと思ってましたが。それは何故でしょうか。
カシマ:スタジオライブが、一番バンドかっこい形だと思う。演奏も。
でかいステージで、照明が綺麗で、いろいろスタッフがいてっていうものが、そんなにカッコイイと思わない。自分らで用意してアンプの音も全部直に聞こえて。それが体感として一番かっこいいですね。
3LA:PAシステムがリアルじゃないとか?
カシマ:いや、そこまで尖った感覚じゃないんですけど、西荻のFLATとかでもやったことありますし。
俺らの中でセーフラインは、チケ代1000円以下のはイベントはセーフにしようぜっていう。そうすれば必然的に自分たちの好きな環境でやれるでしょ、みたいなところもあって。
ライブハウスのアンチってわけじゃ全くないんですけど。見に行くし。ライブハウスのライブみるの好きですし。スタジオでやるのが一番楽しいんですよね。とにかく。
狭いところが好きですね。
3LA:ZINEについては。
カシマ:NIRVANAを調べると、当時の手作りのビラとかがいっぱい出てくるじゃないですか。そういうのが好きなんでしょうね。手作り感が、ワクワクするっていうか。
あの手のアーティストって、ブックレットとか見ると、どこここ!?みたいな場所でライブやってる写真とかあるじゃないですか。すんごいクソ狭そうなとこで。
3LA:スタジオライブにも通じますよね、向こうはハウスショウ(誰かの家の中でのライブ)ですけど。
カシマ:ああいうのを見るとワクワクするんですよね。最初バンド始めた時とか、あの海外の人たちがやってるみたいなライブってどうやってるんだろう?って思って。日本てお客さん呼べない状態でも最初はノルマを払って、まずライブハウスにお願いして出してもらうって感じだけど、逆に海外はライブハウスに出るのが大変で、最初は自分らで機材持ち込んで家とかでやるのがスタートだから、多分その差だったんですけど。始めたばかりの中学生の頃とか、そのシステムに気づけないじゃないですか。なんでこの人たちこんなところでやってるんだろう、かっこいいなってずっと思ってて。
3LA:日本はノルマ払うのが美徳みたいなところがあるかもしれないね。
カシマ:俺らはお客さん呼べないバンドなんだから、スタジオで、少ない人で楽しむのが一番いいでしょうって思ってますね。
ZINEに関しては、NIRVANAってよりは、昔のパンクってフライヤーとかの代わりにZINEに好きな絵書いたりして、ライブの日程とか書いてそこらじゅうに配ってたみたいな。ああいうのとか見るの好きでしたね。
3LA:でも、(SPOILMANは)手作り感やってこうぜ、みたいな意識じゃなくてただ好きでやってるだけっていう感じですよね。「何かを変えてやる!」みたいな野心を感じない。
カシマ:そうですね。変われば良いですけどね。(笑)
何故かJ-POPの話へ
3LA : 最近よかった音楽を教えてください。
カシマ:最近聴いたのだとPSP Socialとか..アルバム通して聴きました。カッコよかったですね。今日知ったんですけど、アルバムのフルパワーバージョンというのをまた出していて、曲名の前に「フルパワー〜〜」って付いてて。ちょっと聴いてみたら、音割れするくらいフェーダー上げまくってバリバリになってるバージョンを出していて。その音源が良いっていうよりは、なんか、バカだなぁ、面白いことやってんなって。普通やらないじゃないですか。自分の出した作品の何とかバージョンって。友達に頼んだリミックスとか、そうじゃなくて全部フェーダーマックスにしたバージョンを敢えて出すってなんか、アホなことやってんなって。
3LA : 「パワーとは何か」っていう彼らなりの問いですね。
ナガイ: 自分はJazz...あとはサンダーキャットとか。Sleepy timeもかっこいい。聴いていて落ち着く。
タナベ : 今一番好きなバンドはGRAPEVINEですね。後期になるにつれロキノン系からどん外れていってる感じがあって。バンドでいうと、Wilcoとか、ああいう方向に行きたいのかな、みたいな。
カシマ:J-ROCKってイメージだったけど、ちゃんと聴いたことなくてさ。なんか最近変だよね。最近はもう、どんどん人を突き放している感じがあって。
3LA : 「風待ち」とかのイメージ。やっぱ進化してるんですね。やってる人たちは。
タナベ : 入れなきゃいけないような、どキャッチーな曲が1曲くらいアルバムに入ってるんですけど。それ以外はやりたいことをやりたいようにやってる感じですね。
カシマ:スピッツは多分、このバンド3人で唯一共通して好きなものかも。良いバンドですよね。
3LA : 音楽オタクっぽい感じで。ラジオも結構面白くて。草野マサムネ。(草野マサムネのロック漫遊記)ハードコアとかもかかる。すげー幅広い。でも、(SPOILMANは)スピッツ的要素は全くないですよね。メロディとか。スピッツはずっと変わらないバンドっていうイメージあるんですよね。同じ曲を作ってるとも言えるけど。
スピッツは、ある程度メジャーだからしょうがないかもしれないけど、ホールクラスのでかい会場でやるけど、アリーナクラスのめっちゃでかい会場ではやらない、みたいなのがあるらしいですよ。1000人2000人とかのホールまでが限度みたいなことは言ってた。今はどうか分からないけど。
カシマ:緊張しちゃうんですかね。
3LA : いや。音がもうコントロールできないから、会場の規模抑えてるって何かで読んだ気がする。でもスピッツのライブは振れ幅がすごいらしくて。ツアーの最初の方はクオリティ全然ダメらしいんですよ。後半になるとめちゃくちゃ神がかるらしい。それを毎回繰り返すんですよ。これも何かで読んだ気がする。
カシマ : ツアーの時期が決まってるのも、草野さんがものすごい花粉症だから、ライブができない時期があるって。歌えないくらい花粉症が酷くって。なんか、良いですよね。
一説にはギャラも全員同分配らしいですよ。作詞作曲、草野さんだけど、ギャラ一緒。敢えてそうしてるらしい。面白いですよね。
自然にやってることが自然に続いてく感じが良いバンド
3LA : このアルバムを出して、今後どういう風な活動を考えていますか。
カシマ:特に考えてないですね。いつも通り、スタジオで。敢えて決めてることはアルバム出すにあたって、レコ発とか、普段よりギャラを払うようなゲストを呼んでやるライブはやらないとは決めています。ライブはもう、全部平等に同じライブでしかないので。
普通にやるつもりではあります。でも、アルバムを出すのがきっかけでSPOILMANが居るって、知ってくれる人が増えるのは望んでますけど。
3LA : いい答えだと思います。ナガイさんは?
ナガイ:いろんな人が聴いてくれるといいと思います。
3LA : タナベさんはいかがでしょう。
カシマ:僕も同じです。カシマくんのような方向でやってるこのバンドが良いなって思いますね。
CDも出して敢えてレコ発やらないとか。いつも通りただ、ライブをライフハックとして捉えている感じが。その上で、音源が出来ちゃったって。自然にやってることが自然に続いてく感じが良いバンドだなって思ってるんで。敢えて気負わないのもいいなって思いますね。
3LA : 標準は次に向かってる感じですか。
カシマ:今、セカンドアルバムを作ることを考えてますね。コロナでライブも出来なかったんで。一人でギター弾いてたら、もう、曲がいっぱいできたんで。たぶんこの3人ならすぐ作れると思います。
3LA : アルバムのリアクションが来たら、また変わってくるかもしれないですね。誘われたりするかもしれないし。誘われた時に断らなきゃいけないですよね。1000円以下じゃないとって。
カシマ:そう言って断ってます。ライブハウスとか、バンドのお誘いもこの条件で大丈夫ならって。
スタジオが一番良い場所ですね。次やりたいことは、もっとこういう部屋(会議室)借りて、とか。そもそも音出し環境じゃないところに、自分らで設備持って行ってやるっていうのをやってみたいですね。そういう野望はあるんで。いつか叶えたいですね。
ドムスタとかで機材レンタルして、やりたいなって思ってますね、公園とかで。
あとずっとやってみたいボードゲームがあって。ダンジョンズ&ドラゴンズっていう。
3LA:オールドスクールなやつですよね。
カシマ:そうです。それをやってみたいんだ。でも、やる仲間がいないから(笑)
メンバーならちょうど良いんじゃないかって。
全員):やるか...!
3LA:絶対やらないでしょ。
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(3LA販売サイト) BODY / SPOILMAN (CD)
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