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2000年代に活動していた北欧ノルウェーのScreamo、SnörasのComplete Discography CDBOXを8月にリリースします
全ての準備が揃いつつある。
私もお気に入りのバンドで、2000年代に活動していた北欧ノルウェーのScreamo、SnörasのComplete Discography CDBOXを8月にリリースします。
特に日本では長らく手に入りづらかった作品でもありますし、歌詞についても名作"Heart Of Weakness"と"Plague Waters"について日本語対訳が付属することに意義があります。この歌詞の出来栄えも非常に気に入っています。全てがインターネットに飲まれる前の時代に刻まれた激しく、そして美しい彼らの激情を再び感じてください。
2000年代のScreamoシーンは多様を極め世界各地から個性的なバンドが登場した。90年代のオリジネイター達が作り上げたスタイルを踏襲しつつも、そのアイデアはそれぞれのローカルシーンで再解釈され、新しい世代が彼ら/彼女ら自身の音楽として受け取り、そしてそれを信じて試行錯誤していた。2000年代という時代は試行錯誤の時代だったかもしれないと思う。上の世代には開拓者たちがいて、それでも彼らのスタイルの真似に終わるんじゃなくて、彼らの考え方、思想に共鳴した上で、自分たちの再解釈を進める中で試行錯誤し、そして"自分とは何なのか"という問いに突き当たる。2000年代当時のScreamoバンド達が2020年代のいま現在大きく再評価されている流れを見ていて思うのは、インターネットの中に答えがない時代の試行錯誤の痕跡や、そのストラグルの過程で向き合わなければならないアイデンティティが表現に染み込んでいるから。それが今の時代にとって重要なことなんだろう。
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北欧のノルウェーのSnorasは、2006年に1stアルバム『Heart Of Weakness』をリリースしシーンに登場にした。
世界同時多発的に様々なScreamoバンドが登場していたとはいえ、Snorasの生み出す混沌としながらも悲哀に満ちた表現には日本のリスナーからも大きな評価を得ていた。とはいえ、実際にそのCDを聴くことが出来たのはリリースからもう少し時間が経ってからだったかもしれない。多くのバンドはアルバムをリリースする頃にはスプリットやEPなど、事前に何かしら情報があるものだが、Snorasについてはそういった前情報が何もなく謎のバンドという印象もあった。そしてそのバンドと思われたサウンドの正体はほとんどYngve Hilmoただ一人によって作られていたということを知り驚愕した。狂気じみている。しかし、だからこその全てにおいて統一感のある表現で貫かれているとも納得させられた。供給が限られるアンダーグラウンドシーンでの流通の中、『Heart Of Weakness』のCDは中古市場で高騰していくのだった。
続く2008年の2ndアルバム『Plauge Waters』もサポートメンバーが参加しているとはいえ、基本的にはYngve Hilmoのソロプロジェクト形式を貫いている。ただネガティブな感情発露と悲壮感の強い1stに比べるとポジティブにエネルギーが向いていると感じさせる箇所もあり、陰と陽を司るような2枚で1つの作品かのようにも思える作品にもなっている。実際のところレコードリリースでは『Heart Of Weakness』と『Plauge Waters』がそれぞれA面、B面に収録される形で1枚に収まっている。カオティックな曲展開や硬質で美しく響く弦楽器のアンサンブル、北欧の美しいScreamoを提示したSuis La Luneにも通じる雰囲気はありつつも、Snorasの冷たい温度感で奏でられる激情的なハードコアというのは彼らのローカルならではの答えなのだろう。Snorasの表記は正式には「Snöras」、ノルウェー語では「雪崩」を意味するという。まさに北国ならではの言葉でもあり、そのサウンドを的確に表現している。アイデンティティとはそういうことなのだ。
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今回のディスコグラフィーBOX化計画を進めるにあたって、2015年に僅か45本のみでカセットリリースされた『Life In The Gutter』もCD化し収録している。『Heart Of Weakness』と『Plauge Waters』に続く三部作の完結編となる作品という位置付けではあるが、質素で派手さの無いデモテープのような作りになっている。その理由は今回のリリースプロジェクトの中で判明するかもしれない。日本語の対訳についてはブックレットにオリジナルの歌詞と共に掲載していて、『Life In The Gutter』を除いた『Heart Of Weakness』と『Plauge Waters』を全訳。バンドの歌詞を日本語で表現した初めてのテキストになると思います。この2作品の性格の違いみたいなものが、歌詞の中でも的確に表現されているので是非楽しんで欲しいです。
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