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Interview with Habak 「人間や帝国が作ることのできるシステムは、ここに集まるすべての共同体の生き残ろうとする衝動を封じ込めることはできない」


初の日本国内盤CDをリリースするメキシコのHabakへのインタビューを行いました。しかしこのインタビューであまりに深いところまでいこうとは思わない。それぞれが作品の内容を受け止めて深く理解しようとしていけばより多くのものを得られると思う。このインタビューはそんなヘヴィリスナーの助けとなるヒントでしかないと思う。ただひとつ言えることは、彼らは本気だし、メキシコに生きることっていう自分達がなかなか想像できない状況から発信される音楽だということ。それを感じてほしい。

「人間や帝国が作ることのできるシステムは、ここに集まるすべての共同体の生き残ろうとする衝動を封じ込めることはできない」

Q: Habakの結成のきっかけについて教えてください。2015年くらいに最初の音源がリリースされていると思いますが、もっと以前からバンドは存在していたのでしょうか?

興味を持ってくれて、サポートしてくれた皆さんに、本当に感謝している。私たちにとって、私たちの作品が日本でリリースされること、そしてこのような遠く離れた場所で私たちの活動に興味を持ってくださる方がいることは、信じられないことです。私たちは、国籍や言語が意味する壁を越えることができることを嬉しく思っています。Habakは2015年、1stアルバム『Insania』からスタートします。そのときに初めて、最初のパフォーマンスがバンドが結成された街、ティファナで行われた。バンドが現在のラインナップなり、ティファナの外でのライブやツアーなど、よりアクティブな活動を開始するのは2018年になってからです。

Q: 今回のアルバムのアートワークのイメージについて、バンドの表現は資本主義的な搾取や略奪構造をも批判の対象にしていると思いますが、僕はアートワークが植物の生態系を表しているところがとても気に入っています。それは植物の生態系はシステムは資本主義の搾取のシステムとは異なり、有機的で持続的なシステムだからです。絶望的な内容の割合が多い歌詞世界の中で、アートワークとしては希望を描きたいという意図があったのでしょうか?

カバーアートはAlex CFが担当した。(※注1)
私たちはジャケットに何を求めるかについて、かなり漠然としたガイドラインを出しているが、あとは歌詞と音楽の両方をアーティストが解釈するだけだ。私たちは、アートワークが、それを聴く人、見る人の解釈によって新たな意味を生み出すことができるのが好きなのです。
しかし、アルバムには明確なコンセプチュアル・ラインがあります。
あなたがおっしゃるように、このアルバムには政治的な意味合いと支配構造に対する批判がありますが、それはグローバル・サウスで経験された暴力と 領土から追放されたコミュニティを死に追いやるネクロポリティカルな仕掛けに焦点を当てている。(※注2)
私たちの出身地では、こうした現象は日常生活の一部となっている。
最も野蛮な資本主義は、超多忙な仕事、難民キャンプ、麻薬国家による殺人や失踪の中で、日々体験されている。
アメリカとの国境は、この地域の生活のリズムを刻んでいる。アルバム全体が、当初から狙ったわけではないが結果的に、さまざまなアプローチから我々が暮らすこの地域について語ることになった。
そしてもちろん、昆虫や生態系についてあなたが言ったことは、このアルバムに含まれる、"昆虫や生態系は、何の装置でもない "という考え方に関係している。
人間や帝国が作ることのできるシステム(この場合は国境)は、ここに集まるすべての共同体の生き残ろうとする衝動を封じ込めることはできない、という考え方に関係しているのです。

※注1 : AlexCFは活動していたFall Of EfrafaやLight Bearerなどが3LAリスナーには馴染みがあると思う。彼は在籍したバンドも多いがアートワークを担当したバンドも多い。
※注2 : ネクロポリティカル、日本では馴染みのない言葉だが、簡単に説明すると「お前らはこういう人間なんだからこう死ぬべきなんだ」っていう社会的・政治的権力の行使。

Q: 伝統的なクラストの要素もあるけれど、多くのレビューサイトにも書かれているとおり(僕も感じた)2000年代のSpanish Neocrust(Ekkaia, Madame Germen, Ictusなど)からの影響が大きいサウンドだと感じました。実際、そういったスペインのバンドたちをキッズ時代にリアルタイムで聴いていたのでしょうか? InstagramのDMでやりとりしていたときに、3LAから2014年にリリースしたIctusのDiscographyを買ってくれたということを知りました。

もともとこのバンドはメロディック・クラスト(ネオクラスト)を作るつもりで結成されたんだ。COP ON FIRE(Ekkaiaのメンバーも在籍)はツアーでティフアナに来たこともあったし、その頃のメキシコには、AgoniaやAnti-Masterなど、そういうサウンドを持ったバンドが何組かいたんですよね。



「音楽を作るときに常に存在する唯一のものは、パンクの激しさを維持すること、あるいはパンクを理解すること」

Q: Neocrustからの文脈を感じる一方で、日本のenvyのような壮大なScreamo/Post Metalに近い要素も大きく感じました。静と動のコントラストによって、楽曲のダイナミクスが大きく伝わる。そのためEmo/Screamoリスナーにも共鳴するものがあると思うし、New Friend Festでのリスナー達の反応がどうだったのかも気になります。(インタビュー当時はyoutube動画公開前でした)

envyは、メンバーのお気に入りのバンドであるというだけではなくて、私たちに重要なインスピレーションを与えてくれた点でも特筆すべき存在だ。エモーショナルなインストゥルメンタルから、怒りとフラストレーションを伝えるカオティックなパートへと変化する曲を作るとき、私たちはまさに彼らのようなバランスを目指していると言っても過言ではない。
僕らの轟音にはエモやスクリーモの要素もあるし、そういうシーンには僕らが好きで仲良くなったバンドがたくさんいる。New Friend Festの人たちはその一例で、おそらく私たちにとって、演奏することも、他のバンドに会うことも、最も幸せなフェスティバルだったのだろうと思う。

Q: 本作アルバムの音楽性はいわば、現代視点からのNeocrustとScreamoとPost Metalの融合にも感じた。この音楽性にはどういった過程で到達することが出来たのだろう。

アートと歌詞についての質問で述べたように、サウンドは自然発生的に構築される。私たちは通常、リフを流れに任せ、その間の移り変わりや、私たちにとって意味のあるリズムを見つけようとする。
曲の中心的なアイデアがあることもあるが、作曲の際に美学的な気取りはないのが普通だ。同じ理由で、自分たちが演奏するジャンルを定義するのは難しい。
音楽を作るときに常に存在する唯一のものは、パンクの激しさを維持すること、あるいはパンクを理解することだ。


「音楽グループが自分たちの作品を発表するために直面する困難は、私たちが今まさに目の当たりにしている強制移住や虐殺に比べれば微々たるもの」

Q: メキシコでバンド活動を続けているのは大変?長く活動しているバンドはあまり知りません。Habakは10年くらい活動している?メンバーは全員メキシコに住んでいるわけではない?どうやって練習している?

メキシコ最北端の街ティフアナ出身の私たちにとって、カリフォルニアでプレーするのは結構楽だったりする。
私たちが住んでいる街は砂漠に囲まれていて、かなり暴力的な麻薬国家なので、国の中心部で演奏するには飛行機を使うしかない。
私たちはこれまで、この国の中央部を回るツアーを2回行ったし、他にも短いけれど同じように激しいツアーをいくつか行った。
たとえばロサンゼルスは、メキシコ-アメリカの国境を越えてから約3時間かかる(入国審査の関係で難しい面もある)。
そのため、過去5年間の私たちの活動の多くは、国境の北側で行われてきた。
アメリカの両海岸の一部をツアーしたこともある。
これらの都市で演奏するようになって数年になるが、Do It Yourselfという倫理観のもとで活動する、さまざまなアイデンティティを持った非常に濃密なコミュニティに参加することができた。

Q: Habakの活動期間中、アメリカではトランプ政権が2017年から2021年まで続くことになった。このことはメキシコで活動するあなた達に影響がありましたか? そしてバイデン政権というのはそれよりはマシなのでしょうか?

移民排斥政策は両政権に一貫している。
両政権とも、自国領土の暴力と不安定さを生き延びようとする人々で拘置所(刑務所)を満杯にし、国境の壁の建設に貢献し、メキシコの軍事化を激化させ、この国の事実上の権力者による移民迫害の重要な部分を担ってきた。
メキシコでもアメリカでも、進歩的、あるいは左翼的なイメージを与えようとする支配者たちは、大多数を悲惨な生活に追いやる同じ開発モデルを維持している。
音楽グループが自分たちの作品を発表するために直面する困難は、私たちが今まさに目の当たりにしている強制移住や虐殺に比べれば微々たるものだ。私たちは彼ら全員と連帯し、政治クラス全員を全面的に否定する。国境に死を!

Q: 日本ツアーって可能性ある?

¡We would love to! ¡
是非実現したいね!



Habak - "Ningun Muro Consiguio Jamas Contener la Primavera" (CD)

https://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2926

悪名高きメキシコ・ティフアナにて結成されたHabakはスパニッシュエモクラストの文脈を継ぎ足す現在進行形バンドの中でも最も注目すべき存在。2000年代に深い痕跡を残したスペインのEkkaia、Madame Germen、Das Plagueといったバンド達に代表されるエモーショナルな演奏と寂寥感のあるメロディ、キラーリフを踏襲し、長尺な楽曲の中でもドラマティックかつ緊張感を保つ表現力の高さはIctusにも通じる魅力もある。先人達の意志を受け継ぎながらも表現の核は現代に生きる彼らが直面する悲しみ、絶望感、怒り。しかし渦巻く感情はネガティブに絡みとられることなく芸術として昇華され、クラシカルな美しさとハードコアパンクの激しさが混じり合い音に現れる。緩やかなパートも多くEmo/Screamoにも共鳴する部分もあるがそれは音だけではなく、内省的な世界観、歌詞、そしてFall Of Efrafa/Light Bearer等多くの作品を手がけるAlex CFによるアートワークにも表現されており、花や虫、有機的な生態系システムを人間が作り出す資本主義的システムと対に置かれている点にも深い視点がある。深層にある表現には今の日本に住む我々としても無関係ではいられない問題意識があり、彼らの作品を国内盤としてリリースする理由は十分に感じられるはず。
バンドは2010年代中盤から活動を続けており、2020年代に入ってからはメキシコ国外にもその名が知られる存在となっているものの日本国内で流通するのは今回の作品が初となるため、まずは彼らのフルアルバム『Ningún Muro Consiguió Jamás Contener la Primavera』を国内盤仕様でリリースする。日本語対訳付で2024年3月22日リリースとなります。

■ 国内お取り扱い店舗
1020distro(新潟):https://1020distro.thebase.in/items/84022813
Acclaim Collective(東京):https://acclaim-collective.com/items/65c9dca422d8562836e8f12e
BASE(高円寺):http://recordshopbase.com/coming6171.html
DIGDIG(岡山):https://www.digdig086.com/product/13136
DiskUnion(関東関西): https://diskunion.net/punk/ct/detail/1008808893
LikeAFoolRecords(新代田): https://likeafoolrecords.ocnk.net/product/5015
MISERY(広島): https://www.diskshop-misery.com/cargo.asp?id=20240406181906
せやねんディストロ(福島): https://twitter.com/syn78782
TOWER RECORDS: https://tower.jp/item/6284090/Ningun-Muro-Consiguio-Jamas-Contener-la-Primavera---どんな壁も春を閉じこめることはできなかった

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