見出し画像

メモ:Portraits of Pastのことずっと考えている

今回はもうメモ、走り書き。俺にクオリティを求めないでください。

Funeral Dinerも凄いけどPortraits of Pastの時代のオーパーツ感はもっと凄い。
デモを除いて、セルフタイトルとなるアルバムが1996年リリースとされているけれど、これはリリース年であって実際の制作時期はもっと前。
Discogsにそのときのコメントが残っている。

"This LP was not an immediate success. When it first came out it was way ahead of its time and the LP didn't really start to sell until many years after the band had broken up.
At one point the LP completely stopped selling. In fact, it was selling so poorly that we recycled all the left over inserts and covers as it appeared that no one was really interested in Portraits of Past. This turned out to be a mistake. A few years later interest in the band exploded and we started to sell a lot of LPs. So many in fact that the LP was repressed, but the original covers and cover art were no longer available. So we ended up making these hand screened versions."
(https://www.discogs.com/ja/Portraits-Of-Past-Portraits-Of-Past/master/199805)

対訳(deepL) : "このLPはすぐに成功したわけではありません。発売当初は時代を先取りしていたので、LPが売れ始めたのはバンドが解散して何年も経ってからだった。
ある時、LPが全く売れなくなったことがある。あまりに売れ行きが悪いので、「Portraits of Past」に誰も興味を示さないだろうと、余ったインサートやジャケットを全てリサイクルしてしまったのです。これは結果的に間違いだった。数年後、バンドへの関心が爆発的に高まり、LPが大量に売れ始めた。そのため、LPは再プレスされたが、オリジナルのジャケットとカバーアートはもう手に入らない。それで結局、手作業でスクリーン印刷したものを作ることになったんだ"。


確かに時代を間違えているほどの先見性のあるサウンドであることは確かで、そのことを裏付けるエピソードでもある。
当初まったく売れなかったLPが数年後に評価が爆発的に上がってめちゃくちゃ再プレスされたことが記されている。

ちなみにデモの時点でこれ。

パワーコード主体のギターリフからもオールドスクールなハードコアの流れにあると思う。
この時点でもカッコイイんだけど、このサウンドはまだ90年代感がある。
そこからどうやってアルバムの音に至ってしまったのかは謎。
日本国内だと2000年代くらいまでのバンドに関してのテキストはレコ屋のものが残っていたりするけど3LA含めてその内容は貧弱というか、同じようなことしか書かれていない。海外テキストでは2010年代でも再評価されておりだいぶ情報が整理されてきたように感じる。

"実は"portraits of past"というバンドは特に自覚的でなく『なんとなくやったらできちゃった』みたいな部分があったのではないでしょうか。"
(http://ignition72.jugem.jp/?eid=41)

言葉は違うんだけど、この時代性無視のサウンドが出来上がっていることを説明していた唯一のテキスト(?)

そのサウンドの核心部分ってなんだろって思うんだけど
デモ時点でのハードコアサウンドに、後付けで70'sロック、ポストパンク、サイケデリック、インディーロック要素を結合してしまったところにありそう。
"The Outlook Is Bleak"なんかもDaitro後のBaton Rouge的雰囲気に通じるところもあり
そして音についてもメンバー自身が回答しているテキストがありました。

"I’ve been asked a bunch of times what chorus pedals we used, which is funny as there’s no effects on the guitars at all besides the reverb from the amps and room."
対訳(deepL) : "使ったコーラス・ペダルを何度も聞かれたけど、アンプと部屋からのリバーブ以外にギターには全くエフェクトがかかっていないから面白いね。"

ギターとアンプの音と部屋の残響音以外には何もエフェクトはかけていない音であること。

"The band tuned down to C# which caused the intonation of the instruments to be quite off and, when both of the guitars were double tracked, created a cool natural stereo chorusing effect which sounds unique even now."
対訳(deepL) : "バンドはC#までチューニングしていたため、楽器のイントネーションがかなりずれてしまい、両方のギターをダブルトラックすると、クールで自然なステレオコーラスエフェクトが生まれ、今でもユニークに聞こえます。"

ここが最大の鍵だと思う。C#チューニングであることで、各楽器を合わせたときに妙な効果が生まれていること。そしてギターをダブルトラックにしていることでコーラス効果が生まれていること。
(https://www.boringemo.com/2017/05/portraits-of-past.html)

ギターに関しては、同じフレーズでも2回録音すると音は位相がずれて奥行きのあるサウンドになって、それはエフェクトのコーラスとは違う印象になる。"Cypress Dust Witch"のほうを聞けば、こちらは最初のアルバムでやったことを意図的に再現しているので、よりわかりやすいと思う。確かに同じパートの音をギターが2本で重ねているのが確認できる。
が、それだけで彼らのサウンドが出来上がるかというとそんなことはないと思うんだけど、仮説というか思い込みでしかないが、機材でエフェクターに頼らずアンプのみで音を作るという制限によって余計なエフェクトサウンドを試行する時間をかけなかったこと、それがRAWなサウンドを生み出しながら、ダブルトラック録音の効果により立体的な音像を実現することに貢献、その立体的な音像が次の世代のScreamoの音楽性とマッチしていたんじゃなかろうかと思う。
もし、彼らのサウンドがRAWでないハイエンドなプロダクションになっていたらダメだっただろうし、
立体的なサウンドの響きが得られなければ彼らのエモーショナルな表現をアルバムが十分に記録した作品なれていたかという疑問。
当時彼らもそんなに金もなかっただろうし、そんな中で制限されていた状況だからこそ実現した偶然性のある音だったかもしれない。

25 essential screamo albums from the ’90s/’00s that still hold up today
https://www.brooklynvegan.com/25-essential-screamo-albums-from-the-90s00s-that-still-hold-up-today/

"Not long after Heroin landed on the sound that would become known as screamo, fellow West Coast band Portraits of Past took that sound to more ambitious, more melodic places that still sound forward-thinking today. "
対訳(deepL) : "Heroin "が後にスクリーモと呼ばれるようになるサウンドに着地して間もなく、同じ西海岸のバンド "Portraits of Past "はそのサウンドをより野心的でよりメロディアスにし、現在でも先進的なサウンドを生み出している。"

いろいろ考えていくとこのbrooklynveganのテキストが本当にうまく要約されていると思う。西海岸のパンクハードコア文脈であったこと、先進的であったこと、そして今日(2010年代)のサウンドの礎となっていること。再結成のライブでもそのエネルギーの発散の仕方を見るにさまざまな音楽的要素だけじゃなく演奏面もでかいと感じる。

life-4
http://immorrrrtalized.blogspot.com/2016/10/portraits-of-pastdiscography.html
「激情ってなんだ」という問い。Converge、The Dillinger Escape Planと違って、アメリカ西海岸にある美学みたいなものがきっとある。
破壊的で美しいもの。Yaphet KottoやOrchidもその流れにあるのかもしれない。RAWでありながら立体的で奥行きのある響き。
性急に曲を畳み掛けていくようなエモバイオレンスなバンドとの違いとしては、Indian Summerや後のCity of Caterpillarのような、"曲の長さ"を意識したバンドであることも大きい。一つの曲の中でゆっくりと変えていく景色の中で、聴衆の頭の中に決定的なイメージを植え付けていくという方法。
これはおそらく、別々の景色を見せるのでは情報過多(今のJ-POP含め、多くの日本の音楽が情報過多だ)になってしまう。
結局そこはどのレベルでイメージを揺らしていくのかの力加減だと思うので、それこそがセンスなんだと思う。
Portraits of Pastはセンスの塊だ。


2021/6/9 追記:
MicroSpy
というPodcastで当時のことなどをメンバーが振り返る内容。いまUSではPodcastが超充実していて、これまで大手メディアが拾えなかった濃密な内容をトークしている。日本では言語の壁がデカくてあんまりそこにリーチできない。下記はそのトーク内容を一部抜粋。
上記までのは過去テキストからの推測だけど、2020年放送のこの回はその答え合わせになっているかもしれません。

■キッズ時代
メタリカのテープ(Ride the lightning)
生活の場所には音楽を手に入れる場所はなかった。
モールにいくのも車で1時間
アイアンメイデンにハマる(=killieとの共通点)

■パンクシーンへ
パンクスが非営利、ボランティアでやっていたディストロはデモを取り扱っていた。それは海賊版もあった。そしてDIYショウのフライヤーがあり、パンクコミュニティにたどり着くきっかけとなった。
当時のショウは最大200人くらい集まる。

■ バンドを始めようとするまで
当時の西海岸が、ものすごい多様性があり「るつぼ」であると語っている。ネオヒッピー。コミュニティの中で別ジャンルが交わっている。
ポップパンクが流行り、大きくなったバンド、大きくなろうとしたバンドがいて、賛否両論が巻き起こった。その中で自分たちはどうするべきか深く考えるようになった。何かが起こっているという感覚。

マイナースレットのテープが好き(初期デモに影響は観れる)
ストレートエッジのシーンとのコンタクトはなかった。
初期Heroinを観て、これがEMOだと感じる。謎めいた存在でそれまでのバンドとすべてが違っていた。「同じようなことをすることはパンクなのか?」と思っていた。みんなが同調していた。自分たちはHeroinに影響を受け、自分たちのできることは何かと本当に考え始めた。
そうやってPortraits Of Pastは始まっている。背景には反逆がある。「現代のロックラジオを聴くつもりはない」極端な思考。
初期のギャングスタラップにも同じものを感じたという発言も。

■音楽の始まり、サウンドについて。
EbullitionのSxEコンピに収録される話があって急いで曲を作った。
アイデアが無くて過去の音楽からインスピレーションを得ようとした。
それが「過去の肖像」=Portraits Of Pastだ。
ex=過去のデスメタルやロックなどから。
さまざまな音楽を統合していった。
ドラマーの家を乗っ取ってリハーサルしていた。毎週末必ず練習していた
=バンド内に倫理が形成されていった?。そして全員がストレートエッジだった。メタリカやニルバーナに興味なく、自分たちがやるべきことに集中していた。環境的にMTVも見れなかったという。

リラックスしたサウンドを志向していた。
ベダルが多いのも嫌だった。
ギターとアンプの調整だけでやりたい。
チューニングを下げていてヘビーだけど、メタルではない。
どういう意味か計りかねるが「スケート」のようにシンプルで全てを最大の効果にする、ような方向性だと語っている。
Fugaziに影響を受けたけど、Fugaziのような音にはならなかった。
マーシャルアンプでクリーントーンを鳴らすようなハードコア。

東海岸にも興味を持つようになった。
400yearsは何か違うぞと思い始めた。
こうやって90年代後半に興味は持っていたが、シーンに所属しているとは思えなかった。自分たちはいつも主流の外にいた。
パンクは同じようなことを、古いことを繰り返していた。
ツアーも良いものではなかった。バンド内に奇妙な空気になって、バンドも分岐点にきていた。
そして誰も自分たちを好きじゃなかった。最後のショウは30人くらいしか来なくてがっかりした。EbullitionのKentも来てくれなかった。彼は自分たちのことを好きではなかった...。彼はBleed(スプリットをリリースしている)のほうが大きなバンドになると思っていた。

■アルバムについて
のけ者であったという立場、外部の反応。
他記事での話に加えて、アルバムの録音は、トップマイクしかなくてドラムの音にがっかりしていた。でも演奏はすごくよかった。その施設は不思議な鳴りがありリバーブをかける必要がなかった。そしてライブのように聴こえる。
若いバンドで、誰にもサポートされていない、特別な時間。
そして人々はそれを受け止めるだけの準備ができていなかった。
孤立していて、理想的。ラブレターのように。
本人たちはしばらくは思い出したくない、聞き返したくないと感じていた。

■ 再結成について
リユニオンのライブはギターやアンプもできる限り当時のものを使用し、ディスコグラフィーを再現しようとした。EbullitionのKentがCDリリースを提案した。
ギルマンのショウではみんなが歓迎してくれて、まるでかつての場所ではないように感じた。とても奇妙な感じだった。そしてその後EPを作った。それでも自分たちの言葉が本物でなければいけないと感じていた。
知的でなくてもいい。誠実であれ。結果じゃなくプロセスを楽しめ。

----------------------------------------------

Portraits Of Past、まだ持ってない人は必ず買うように。
http://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=1936

3LAのメルマガではレコードの新入荷情報やコラム、インタビュー記事などを不定期で配信しております。メルマガ配信希望の方はこちらからご登録ください。
>> 会員登録ページはこちら

3LA -LongLegsLongArms Records-
web: http://longlegslongarms.jp/
bandcamp: https://longlegslongarms.bandcamp.com/
instagram: instagram.com/3la_disc/
radio: mixcloud.com/LongLegsLongArms/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?