VSCC卵 予選day1 観戦記 (後編)


はじめに

 こちらの記事の後編です。まだ前編を読んでない方は読んでいただけると嬉しいです。
 大会の概要や出場者の情報を知りたい方がいれば、下記のリンク集から飛んでください。

リンク集

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観戦記

4局目 ぽめさん VS かにみそさん

 戦型はぽめさんが居飛車、かにみそさんが四間飛車ということで、1局目と同様にぽめさんが金無双急戦を選択。かにみそさんが角道を閉じない四間飛車だったため、ぽめさんは角道を閉じたまま仕掛けていった。 (図4-1)

図4-1 角交換ができないため、振り飛車の角が目標になってしまっている。
ぽめさんの対四間飛車の序盤は有段者レベル。

 角の頭を攻められてしまう展開になったため、振り飛車側が少し悪い展開になってしまったものの、かにみそさんも簡単には土俵を割らない。
 少し進んで図4-2。居飛車に竜も馬も作られてしまい形勢は良くないものの、ここからのかにみそさんの指し手には目を見張るものがあった。

図4-2 後手は持ち駒の使い道がないが、どうやって手を作っていくか



 図4-2以下の指し手 △6五歩!▲1一馬△6四角!▲2一竜△5一銀▲6六歩△1九角成 (図4-3)

図4-3 数手進んだだけで一気に勝負形に

 △6五歩~△6四角の手順は振り飛車党らしい柔軟な手。高美濃囲いは6四に角を設置するのが良い形であるため、6五の位を取る手は良い手になりやすい。そして銀を自陣に埋めて攻めを遅らせ、▲6六歩と反発された手は取らずに香車を取る。まだまだ先手が優勢な局面ではあるが、勝ち切るまではかなり大変になってしまっている。
 以下、先手も後手も攻めたり守ったりの展開が続いたものの、致命的な見落としはしなかったぽめさんがそのまま押し切った。

5局目 かにみそさん VS 検察側の証人さん

 お互いに四間飛車党の2人が激突。相振り飛車になる可能性が高いので、どちらかが向かい飛車や三間飛車に振る可能性もあるかもしれないと思っていたが、相振り飛車ではかなり珍しい相四間飛車に。
 囲いはかにみそさんが右矢倉、検察側の証人さんが高美濃囲いと初心者とは思えないような指し回し。 (図5-1)

図5-1 これが本当に初心者大会? (n回目)

 ここでかにみそさんが▲6五歩△同歩▲同飛と進めてしまい、△同桂と飛車をタダで取られてしまった。しかし、かにみそさんは諦めずに攻め続け、勝負形に持ち込む。
 そしてかにみそさんの攻めがひと段落した後の局面。(図5-2) ここからの指し回しが凄かった。

図5-2 遊び駒に喝を入れる




 図5-2以下の指し手 ▲4八金左!△9九飛成▲9七香! (図5-3)

図5-3 一気に先手陣が引き締まった

 ▲4八金左~▲9七香はとても初心者とは思えないような落ち着いた指し回し。先手は現状だと攻め駒が少ないため、このように自陣を整備して、相手から攻めてきてもらうのを待った方が良い。
 実戦はここから△5五角▲5六金!△6四角▲6五歩と進み、先手がかなり持ち直したものの、後に先手が角をタダで取られてしまい、後手の検察側の証人さんが勝利を収めた。
 かにみそさんは3連敗となってしまったものの、どの対局も指し手のセンスが光っていたので、気が向いたときにまた将棋を指してほしいなと個人的に思っている。

6局目 ぽめさん VS XK⇒ペケ子さん

 予選day1の最終局は、お互いに2連勝していたため、勝った方が予選突破という激熱の展開に。本大会初の相居飛車となり、戦型は相掛かりに。ぽめさんは一目散に棒銀で相手陣を攻めていこうとしたが、ペケ子さんは想定していたらしく、上手くぽめさんの攻めをいなした。 (図6-1)

図6-1 目標の角が移動しており、肝心の銀も動けないため、
攻めが非常に分かりにくい。

 銀桂交換を挟んで数手進み、先手が角を活用してきた局面。(図6-2)
ここからのペケ子さんの指し手が非常に上手い指し回しだったため、まだ配信を見ていない方は少し考えてみてほしい。

図6-2 まだまだ何気ない序盤戦のようだが…





 図6-2以下の指し手 △5四飛!▲5八金△6六角▲同歩△2四飛!!!

図6-3 ▲5八金と上がらせたおかげで、飛車交換後の△3九飛が非常に厳しい。

 まずは△5四飛と回り、飛車の成り込みを狙う。もちろん飛車は成り込ませてはいけないので、ぽめさんは▲5八金と上がったが、ペケ子さんはこの金上がりを見て飛車をぶつけた。これには筆者も度肝を抜かれた。とても将棋を本格的に始めて数か月の大局観とは思えない。
 図6-3以下は▲同飛△同歩▲2一飛△3一歩! (図6-4) ▲1一飛成△3九飛と進み、後手が優位を保ったまま終盤戦に突入する。

図6-4 本当に岩よりも堅かった底歩

 お互いに緩みのない手順で相手玉を攻めていき、図6-5の局面になった。銀で取るか玉で取るかの2択ではあるものの、一方は負けに直結しかねない。残り時間が少なくなっていくなかで、ぽめさんはどちらを選択するのか…。

図6-5 悩ましい2択

 




図6-5以下の指し手 ▲同玉△6九角▲6七玉△5五桂 (図6-6)

図6-6 5八の金を取られてしまうのが厳しく、
後手の攻めが止まらない。

 ぽめさんの選択は▲同玉だったが、これは△6九角が非常に厳しかった。戻って図6-5では▲同銀と取っておけば△6九角がなく、後手の攻めが切れそうだったので勝機はかなりあった。ただ、変化が多すぎる局面ではあること、持ち時間が残り少なく、6八の玉がかなり不安定に見えることを考えると、▲同銀と取れた人は本大会にはほとんどいないと思う。なによりもペケ子さんの指し回しが素晴らしかった。
 以下、ペケ子さんが着地もしっかり決め切って勝利を収め、3連勝で予選突破を決めた。

おわりに

 VSCC卵の予選day1は筆者が思ってた以上にレベルが高く、どの対局も見ごたえがあった。day1でこの内容だったので、day2以降の出場者はかなり戦々恐々としているかもしれないが、まあお祭りのようなものなので、楽しんで指してもらいたいなと、いちリスナーとして思っている。
 このnoteを読んでもし本大会に興味を持たれた方がいれば、day2は10月6日の22時から始まる予定なので、一緒に観戦しましょう!


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