近すぎて見えなくなるもの(父と息子の確執)
一時帰国の思い出話は一休みして、最近の話だ。
8月末にアメリカに行った元夫から電話が来た。
(今度は一体何だろうか。。。)と、いやいやながら電話に出ると、今回は(も?)息子の話だった。
聞いてみると、息子が元夫に住所を教えない、大学の学費の支払い方法をいつまで経っても確認しない、保険に加入しない、学生証を共有しない、成績を知りたいのに大学のサイトへのユーザーIDとパスワードを教えてくれない、と「しない/くれない」のオンパレードであった。
確かに、私も住所は知らなかった。本人に連絡取れるし、様子が分かれば別に成績など逐一確認したいとも思っていなかった。
私が放任主義すぎるのか、元夫の感覚が正しいのだろうか。
親としてはあるべき姿ではないのかもしれない。
住所については、二人の間で多少の会話は交わされているようだが、息子は「お金が無いから、友達のところに泊めさせてもらっている(正式な住所じゃないから教えられない)。」と言っているらしい。
私もそれに近い事を聞いていた。学生はお金が無いのが普通だし、学生同士でシェアするのも珍しいことではない。確か彼女の所にいたはずなので、それもあって住所を教えたくないのだろうか、などと聞きながら思っていると、
元夫は、「1週間に20時間仕事できるんだから、家賃の分くらいは稼げるだろ。どうせお金を全部お酒につぎ込んで遊びまくっているいるに違いない。」と吐き捨てる様に言った。
確かに、息子は結構お酒が飲める。(うちの家系が遺伝してしまった様だ、笑)東京で元夫と一緒に暮らしていた頃は、その頃の彼女にフラれてやけ酒をしていたことも私は知っている。
が、しかし、息子はちゃんと住める部屋を捨ててまでお酒を飲みたいタイプではない。どっちかと言うと、居心地の良い場所にいる事を好むので、多分そこまではしていないだろうと、私は予想していた。
「これ以上、住所教えないんだったら、俺にも考えがある。大学に連絡して住所を教えてもらうんだ」と、夫は息巻いていた。
「5分だけ話したい」と言っていた元夫は、結局1時間以上も息子の文句を散々言い続け、二人で話をしていても有効な解決策が考えつかないので(私がお願いしたので)、やっと電話を切ってくれた。
はたして、その次の日に、元夫は大学に長い長いメールを送った。
息子の住所が分からず心配している事、
保険の事、
支払いを2回に分けて行いたい事、
学生証を共有して欲しい事
基本的に上に書いた事をそのまま書いてあった。
大学側の回答としては、
住所は学生の個人情報なので、大学が開示することはできない事、
大学から息子に元夫に連絡する様に促す、との事であった。
その他の項目はスルーであった。メールでの問い合わせだと、本人確認ができないので、細かいことは伝えられないのかもしれない。
メールの返信を受信した日に、また元夫から連絡があった。
「もうこうなったら警察に『行方不明者』として届けを出すんだ」
正直、どのように反応すればいいか分からなかった。
だが、元夫の言動が狂気じみてきている事は感じられた。
自分が父親として敬われていないことに我慢できないのだろう。
私たち日本人は事を大きくするのを嫌がる傾向にある。もちろん私もそうだ。警察や弁護士や裁判所なんて、一生お世話にならずに済むならそうしたい。
元夫は、父親として尊敬されてそのようにふるまわれない事に憤っており、
息子の全てを把握して自分の思う様にコントロールしておかなければ気に入らないのだろうと思う。
住所の把握はそのための手段の一つで、そのためならば手段を選ばないと言う意志がにじみ出ていた。
私は息子に連絡した。
「パパが大学に住所聞いているけど、教えられないって返事来たから、今度は警察に届け出すって言っているよ。」
メッセージをして、メールも転送すると、息子から珍しく電話がかかってきた。
聞けば、今は彼女も住んでいるシェアハウスに居候の状態なのだそうだ。なので正式な住所が無い。(彼女以外にも複数がシェアしている。)
確か夏には引っ越しすると聞いていたはずだが、なぜそんな事態になっているのか。
息子は「引っ越しの敷金と家賃は貯金で払えたけど、それを払った後、家具をそろえるお金ない事が分かってさ。だから、引っ越すのやめたんだ。今はここにいさせてもらって、節約できた分で学費を貯金している」と言う。
ちゃんと計算できる様になり、学費を貯金するのは堅実な事で褒めてやりたいが、同時に、この状況に追い込んでしまった自分を心の中で責めた。学費の心配はさせたくなかったし、せめて最低限の生活はさせてやりたかった。
「パパ、勉強してないんじゃないかって心配しているよ?」と聞くと、
「うん。知ってるよ」と、息子が現在の成績を教えてくれた。
1科目だけは80%程度、だったが、それ以外は98~100%の成績で、私も思わず歓声をあげて喜んでしまった。
「バイトは週20時間までしかできないから、残りの時間は勉強するって決めているんだ。ちゃんと卒業したいから。」
息子なりに将来を見据えている様なので、頼もしく思う。
息子が真面目に将来を考えている事、学費を貯めよう・良い成績を修めようと努力している事を、元夫は見ようとしていない事が残念でならない。
確かに、息子の態度は反抗的だし、元夫には多くの情報を教えないので、分からないところもあるのだと思う。
しかし、先日の電話では「東京にいた時も、あいつはいつも飲んでばかりで、勉強なんて全然していなかった。今も同じだろう。だから家賃も払えないんだ。」と、まるで見てきたかの様に言っていた。
私も息子の様子をこの目で見たわけではない。息子本人が言っている事をただ信じているだけだ。
元夫は、自分の「こうあるべき」以外を受け入れたがらない人なので、息子が努力していることに気づくことはできないのだろう。
家族は世界で一番近い存在であるだけに、「かわいさ余って憎さ百倍」となりやすい。
今の元夫と息子がまさにその状態なのじゃないだろうか。
私は元夫とうまくつきあう事ができず、また、数々の問題に対する妥協案も提案する事ができずにお別れする事を決めた。なので、盲目的に息子の味方をしてしまう。(もちろんその自覚はある、笑)
息子にも改善するべき点はあるが、今は、息子ができる精一杯の努力をしていると分かった。
9月のセメスターの学費は私が払い、日本の銀行口座は空っぽになったが、必要ならば12月分のセメスターの学費も、ある分は出そうとひそかに心に誓った。
次の学費を払うまで後2か月程ある。
元夫は払う意志を見せているが、前科がある(昨年も同じ事を言って結局大学側に支払われていない)ので、油断はできない。
息子は今までの経緯(学費を払ってもらえなかったり、自分認めてもらえなかった、など)から、元夫の事を父として尊敬できず、非常に反抗的な態度を取っている。
一方の元夫は、息子が自分の思い通りに育っていないので、何とか自分に従わせようと奮闘している。(本人は自覚無いかもしれないが)
私が離婚を言い出した事がこれを表面化させるきっかけだったのかもしれないが、二人の確執が下火になる事を願ってやまない。
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