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「もう人間は間引くしかないよね?」

遅めのランチに入った外食チェーン店

斜め前のテーブルに学生と思しき男性2人が声高に議論していた。

「……ということは、もう人間は間引くしかないよね?(^^)」

痩せロンゲが言い放つ。それに対し短髪メガネは「え、それは……」と口ごもる。

漏れ聞こえる会話から察するに、地球上の資源が有限なので全ての人間を生かしていくことはできない。では、どうやって口減らしをしていくのか、その基準をどうするのか、ということらしい。なお、これは盗み聞きしようとしているのではなく、単に静かな店内において痩せロンゲの声が高く響くから否応なしに聞こえてくる。そして物騒な単語だが口ぶりは軽く、そのギャップに狂気を覚える。

どうやら間引く基準は社会への貢献度、そのものさしとして『税金』を採用するようだ。痩せロンゲは続ける……

「高額納税者は優遇するべき、低額納税者はある程度監視や制限はつけるべきだね ♪」

税金は社会を発展・継続するために使う財源なので、多く支払っている者はその恩恵を得て当然。逆に納税額が低いにも関わらず、恩恵を受けられるのはおかしい。低額納税者は、より税金を多く納めることができるよう、生活を監視・指導し、無駄な消費は許されない、ということらしい。短髪メガネが「いや、それは……」と何かを言う(基本的にもごもごしてて聞き取れない)。

「じゃあいいや、納税額の大小は問わない。でも税金を納めていないヤツは間引いていいよね?だって社会に役立っていないんだから、そうでしょ(^^)?

つまり税金未納者は社会システムを維持するためのコストを支払っていない。家賃が払えないならアパートは出なくてはならない。安宿であろうと宿泊費は必要だ。

「社会に役立っていないというなら、犯罪者も生きるべきじゃないよね。基本死刑以外は必要なくなるなぁ( ´_ゝ`)」

急展開に短髪メガネはうろたえる。更生する余地があるのに殺していいのか、死刑となった場合どうやって殺すのか、と。

「刑期を終えて出て来たら再犯するでしょ?そんなの社会にとって良くないよ。1回でアウト。初犯の時点で社会に害を為しているんだから、もう必要ないよ(‾◡◝ ) 」

「殺すのは銃で撃てばいいよ。害獣……イノシシとかだってそうするでしょ。今でも必要のない動物はそうやって殺しているんだから同じだよね(*^o^*)/」

なんとか反論を試みる短髪メガネだが、終始劣勢。痩せロンゲの中でこの結論は揺るがない。グレーゾーンを指摘しても「よくわからないけど、そんなヤツなら間引いちゃえばいいよ」と言い放つ。

やがて

「さ、時間だ、いこっか.。:*」

と席を立ち、彼らは自転車に乗って去っていった。

私は彼らがいくら税金を納めているのか、自転車保険に加入はしているのか等について思いを馳せ、残りの食事を済ませ、店を、出た。

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三橋 渉
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