三葉春宙(みつばはるそら)
ある時代の恋のお話を切り取ったもの
今日放課後に図書館に行ってくれる? 突然クラスメイトの男子に言われた私は 当たり前に「何で?」と訊いた。 後輩の坂下が話があるんだって。 その言葉を深く取らず 何を意味するかも考えず ふーんといって私は放課後に図書館に行く 選択をした。 言われた時間より少し前に私は図書館に行って 頭に入るか入らないかわからない 微妙な感覚で適当に手にした本を 読んでいるように眺めていた。 これから何が起きるんだろうか? わかるようなわからないような 期待と不安が入り混じって 目の前
気づいたら柔らかくて マシュマロみたく甘くて溶けそうな 彼の体の一部が私と重なっていた。 こんなに好きな顔がこんなに近くにいるのに 目を瞑るのはもったいないなとおもって 私は白川くんの顔をずっと眺めていた。 それに気づいた白川くんは ちょっと照れたけど そのあとも、何度も私にキスをした。 そうだ、私恋人がいたんだった。 でも私はこうしていたい。 ずっと好きだったんだもん。 なんの罪悪感も生まれなかった。 未消化だった恋がこんなにも自分を正当化するなんて 思いもしなかっ
卒業してちょうど1年が経とうとしていた。 仕事にも慣れ、恋人もできて 私は学生の時とは違う私になっていた。 なのに、白川くんからの電話は 私をあの頃に引き戻した。 もしもし白川です。 うん、びっくりした。 どうして? ちょっと三葉さんに話したいことがあって 今度会えるかな? 私はドキッとした。 なにも起きてないのに、 恋人にひどく悪いことをした気がした。 でも私は白川くんと会う約束をした。 桜がちょうど咲き終わって、 かわいい桃色の花を見送ったあと 美しく鮮やか
学校を卒業して1年が経った頃 知らない番号から電話が鳴った。 ちょうどその時私は友達と 知り合いのオープンしたてのお店に出向いていて 22時を回った頃 お酒も入って気分も良くなっていた時だった。 もしもし、 三葉さん? 知らない男の人の声だった。 どんなに記憶を辿っても 思い出せない声だったけど 確かに電話の向こうのその人は 私の名前を呼んでいる。 そうですけど。 私の返事に安心したのか 聞きなれない声の人は自分の名前を名乗った。 白川です。 私は一瞬動揺した。