飴色玉ねぎの底力
家庭で作るカレーには、それぞれの家庭ごとに独自のアレンジがあると思う。
かく言う我が家もルーは一般的な固形タイプのものを使う場合がほとんどなわけで、子供用の甘口と大人が食べる辛口と作り分けたり、気が付いた時だけ投入するローリエの葉。はたまたコンソメ顆粒で下味をつけたり、ニンニク、生姜、蜂蜜等々思い付きでその時々に、何でも入れてみる。何を入れても許されるのがカレーの醍醐味だなんてことも信じて疑わない。
ただ一つここ数年必ず実践してきたのが、玉ねぎを焦がさずにじっくりと炒める一工程である。俗にいう飴色玉ねぎという奴だがこれが結構大変で、火加減がかなり難しい。弱火にすれば時間ばかり食って一向に炒まらないし、焦れて一気に火を強めるとあっという間に真っ黒けになる。
最大の原因はフライパンの手入れが行き届かないことだろうが、昔は櫛切りにした玉ねぎをみじん切りにして極力フライパンから目を離さないようにし、よくかき混ぜることで、そこそこいい色合いの飴色玉ねぎの下ごしらえかできるようになった。
自分でいうのもなんだが、ひと手間かければよりおいしく出来上がるのが家庭のカレーのような気がしてならない。しかしながら、飴色玉ねぎを使ったカレーと、箱書きのレシピ通りの具材を軽く痛めた段階で水を入れて作ったカレーの出来上がりの違いを、同時に作って味を比べた訳でもないので、果たしてどこまでその差が現れるのか試した経験はない。そこで今回ほんの思い付きで作り比べて見た。
上の写真の鍋が、軽く炒めて水を加えた仮にAパターンとすると
写真ではそれ程違いがわからないがこれが玉ねぎを上のフライパンの映像映し出された飴色玉ねぎ導入の鍋(Bパターン)である。玉ねぎは約20分間気長に、極力焦がさぬように炒めたものである。
どちらの鍋も具材の量、水の量、カレー粉の量、共にきっちり等分の量で作り煮込み時間火加減も鍋を並べて火にかけ差が生まれぬように作り上げた。
今回のカレーで使用した食材は
玉ねぎ中一個半、鶏もも肉200グラム、人参二分の一本、水550ミリリットル、カレールー半箱
調理時間は、各々水を投入してから強火にかけ沸騰したら中火に切り替えて20分、小まめではないが適当に灰汁を取り、一旦火を止めてルーを投入し、固形のルーが完全に溶けきるまで火にはかけずにお玉で攪拌してその後再び中火で5分煮込んで仕上げた。
出来上がったカレーが下の二皿である
Aパターンカレー Bパターンカレー
出来上がりの見た目は明らかにBパターンの飴色玉ねぎを使った方が濃い色合いに仕上がったことが見て取れる、またとろみもBのほうがよりしっかりとついて出来上がった。
そして問題の味なのだが、結論から言えば全く別物のカレーが出来上がったといっていい程の違いがあった。
1 最も大きな違いはコク、Bが深みのある舌触りが感じられたのに対してAは水っぽく薄っぺらな味わいで、スパイスの香りも充分に引き出されていない仕上りだった。
2 次が甘み、甘みも断然違った。Aパターンは、玉ねぎの形がはっきり残りその玉ねぎだけに素材の持つ甘みが感じられたのに対してBパターンのほうは、カレールーの全てからふくよかな甘みを感じ取ることが出来た。
3結果、ただ玉ねぎを煮て作ったカレーは、包丁が使えてレシピ通りに作れるものであれば老若男女問わず作れるカレーなのに対して、飴色玉ねぎを使ったカレーは、○○壱番屋(名古屋が発祥のカレーチェーン店)にも引けを取らない金がとれる出来栄えに仕上がったとまでとりあえず言い切ろう。
このあと、二つのカレーを事情を何も説明せず小皿に半人前づつ盛り付けて妻と娘の食卓に並べた所、妻からは上に述べた私の意見とほぼ同等の答えが寄せられたし、障がい者で言葉を多く持たない娘は、Aの方の皿をそっと妻の方に押し付け、妻の飴色玉ねぎの方の皿の残りを自分によこせと目配せしていた。娘が、こと味に関しては家族で一番敏感なのは疑いようのない事実である。
皆さんも一度時間が許すときに、二種類のカレーを作り比べて家族の感想を聞かれることをお勧めしたい。その後のカレー作りに20分間の更なる労力をかけ続けなければならない手間を惜しまぬ人は…w