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決闘年越しそば #毎週ショートショートnote

 「天ぷらそば、おろしそば、とろろそば、卵とじそば、ざるそば。全てを最速で完食された方が優勝です」蕎麦屋の女将がそば喰い決戦のルールを説明している。大晦日の夜、店には大勢の客が詰めかけていた。
「優勝者には割引券とそば猪口1つを進呈します」
 参加者の半分はただのそば好き連中だが、他は数日前から流れる噂に惹かれてやってきた者達だ。「賞品のそば猪口は時価10万円はする伊万里焼らしいぜ」…
 女将が告げた。「負けた方には代金をお支払いいただきます。では、始め!」
合図とともにそば喰い決戦はスタートした。
その後、除夜の鐘が鳴り響く頃に優勝者が決まった。そば猪口を手に満足げな優勝者を横目に、他の者たちはそば代を支払い膨れた腹をさすりながら帰っていく。
「今年も随分と儲かりましたね。ところであのそば猪口、差し上げてもよかったんですか?」店員の一人が囁くと、女将はにやりと笑って言った。「大丈夫よ。あれは一つ500円の美濃焼だから」

(410文字)

たらはかに様の企画に参加させていただきます。
皆さんあけましておめでとうございます。締切ギリギリとなってしまいました。本年もよろしくお願いします。


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