なるべく動物園 #毎週ショートショートnote
男は若くして戦場で命を落とした。あの世でのくらしも長くなった頃、転生の順番が回って来た。だが神によると、来世で人間にはなれぬという。男は神に訴えた。
「神様、私を動物にしてください。私はもう命の危険を感じながら生きるのはこりごりなのです。なるべく動物園の飼育動物でお願いします」
「来世が何になるかはその時の運によるのだ。与えられた命を精一杯生きるがよい」
翌朝、男が深い眠りから覚めると、そこは白い壁に囲まれた部屋の中だった。男が壁に触れると亀裂が入り、こちらを覗きこむ潤んだ大きな瞳と目があった。やがて男から前世の記憶が消えていった…。
とある動物園の昼下がり。親子がオリの前で話している。「ここにいる子は最近生まれた赤ちゃんね。飼育だと50年くらいは生きるんだって。長生きだね」
「ここは安全だしご飯もある。でもボクはこのオリの中だけにずっといるのはやだなぁ」
秋の日に温められた岩の上。子ガメはのんびりと欠伸をした。
(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。今回は激ムズでなかなか浮かびませんでした。転生ものは書かないつもりできたのについに手を出してしまいました。皆様の作品を楽しみにしております。コメントもお待ちしてます。