ときめきビザ #毎週ショートショートnote
「おばあちゃん、ずっと眠ってるね。私たちのことわかるかな」
わかってますよ。わかってないのはあなた達。お願いがあるの。あの人を探してほしい、あの人はどんな人生を生きたのか、知りたいの…。
そうしたらある日、私の病室に見知らぬ少年が現れて
「会いたい人は昔の恋人なの?」って尋ねられた。初恋の人なの、私がそう言うと男の子は「じゃあ僕が会わせてあげる。この「ときめきビザ」を使えば、好きな時代や場所に行けるんだよ」そう言ってくれた。だからね、二十歳の頃に戻ってもう一度あの人に会いたいわってお願いしたの…。
「おばあちゃん、笑ってるよ」「頬がピンクで生きているみたいだね」…また家族の声が聞こえる。どうやら私は死んじゃったみたいね。家族は何も知らないけど、最期にあの人ともう一度会えて幸せだった。こんなんじゃ、あの世のおじいさんに怒られちゃう。あら、いよいよお別れ?それではみなさん、あの世でまたお会いしましょうね。さようなら。