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yokopie
残り物には懺悔がある #毎週ショートショートnote
秋が来ると、我が学生寮では先輩達が騒ぎ始める。芋煮会だ、さんまだ、焼き芋だ、と。そんなある日、北海道出身の田村先輩は、黙々と鶏の唐揚げを作り始めた。
やがて大量の唐揚げが出来上がり、田村先輩は寮生全員を呼び出して言った。
「食べたまえ」
唐揚げは順調に減っていったが、濃いめの味付けもあり次第に手が伸びなくなった。
それを見て田村先輩は演説を始めた。
「君らは毎日ファストフードを喰い、その工業的な味に慣らされている。だが今君らが食しているのは、私が作った拙い料理、故に真にオリジナルなものだ。そしてこれは我が北海道のソウルフード「ザンギ」でもある。君らはオリジナルでローカルな物の価値を全く理解していない。残り物を前に懺悔したまえ!」
寮生たちが静まり返る中、寮長の柏田はすまし顔でこう言った。
「先輩、今年もザンギをご馳走様でした。残して申し訳ありません。私も昨年同様懺悔いたします。ザンギだけに慚愧に堪えません。以上」
(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。