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Photo by
ma_ruku
月夜の寝ぐせ #毎週ショートショートnote
「なんて髪してるのよ」朝、リビングにいくと、ママが笑った。鏡を覗くと、ボクの頭の両側の毛が突っ立っている。
「まるでジロちゃんの耳の形みたいね」
ジロというのは去年死んだ我が家の愛犬のことだ。大好きだったジロを思い出して、鼻の奥がツンとなったボクは、ママの忠告を無視して寝ぐせのままで学校に行った。
その日の夜、塾帰りに空を見上げると、そこにはまんまるのお月さんがいた。そしてその晩、ボクはジロの夢をみた。ジロはいつものお散歩コースを、ボクをグイグイと引っ張っていき、やがてお散歩の終点である丘のてっぺんに辿り着くと、まんまるのお月さんに向かい力いっぱい吠えた。その声は遠くまで響いていき、その目は金色に光ってきれいだ…
次の日、学校から帰るとママは言った。「寝ぐせがついちゃうから、カットしてあげるね」
その晩ジロは夢に出てこなかった。それからずっと出てこないんだ。こんな事になるのなら、あの寝ぐせのままがよかったかな。
(410文字)
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