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祈願上手 #毎週ショートショートショートnote

 ある夏の日、めしやを営む熊さんは、町内の神社を参拝しておりました。
「女房が身籠りまして安産をお願いしやす。それとおいらはしがないめしやですが、生まれてくる子の為商売繁盛をお願いしやす」
その後熊さんは苦心して絵馬に願い事を書き込み、奉納をすませました。
 それから必死に働いた熊さん、翌年の春、無事赤子を抱くことができました。

「祈願成就のお礼参りに行こう」
早速赤子を連れて件の神社にお礼参り。
「この辺にあるはず」
夫婦で探しますと、奉納した絵馬が見つかりました。それを見たおかみさん、ふふっと笑い出しました。
「これ「商売繁盛」が「商売飯盛」になってるよ」
「そうか、あれからめしやも忙しくなって少しは銭も貯められた。神様のおかげだな」
それを聞いたおかみさん、はたと手を打って言いました。
「おまえさん、祈願成就ならぬ祈願上手だったねぇ」
 春の暖かな日差しが三人を包み、おかみさんの腕の中の赤子もなぜかにこにこと笑っておりました。

(410文字)

たらはかに様の企画に参加させていただきます。

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