ジュリエット釣り #毎週ショートショートnote
ジュリエット島田は、浅草ストリップ界に現れた久しぶりのスターだった。彼女の流し目は「ジュリエット釣り」と呼ばれ、触れれば誰もがファンとなってしまう。劇場は連日大入り満員となった。
そんな中、支配人は感謝の意を込めて常連客に席を用意した。最高齢は85歳のジイさん。ストリップが生き甲斐で久々の観劇にいつにも増して興奮状態。鼻息も荒く席に陣取った。
やがて公演は始まり、トリを務めるジュリエット島田が登場。体を反らせるといつもの「ジュリエット釣り」を客席に送る。観客の興奮が高まり声援も飛ぶまさにその時、グウッといううめき声とともに件のジイさんが倒れた。場内は騒然、公演は中止となってしまった。
その後ジイさんは天国へ。常連たちは「ジュリエット釣りにやられたんだから幸せなもんだ」と囁きあった。
ジュリエット島田が後年語ったところでは、「アタシは目が悪いからね、一生懸命馴染みのお客の顔を探していただけさ」と話したとか…。
本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。
(410文字)
たらはかに様の企画に参加させて頂きます。