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会員制の粉雪 #毎週ショートショートnote


「失礼します」私の執務室に突然一人の青年が入ってきた。「あなたは以前、会員制クラブでよくパーティーをやっていましたね。雪を人工的に降らせるなどして楽しんでいた」
「君は誰だ?何の話だね?」戸惑う私に青年は話を続けた。
「僕には病弱な妹がいました。ある日言ったんです。一度でいいから雪を見たいと。僕はあなた方がパーティーで人工雪を降らせている事を知り、妹と会場に潜り込みました。会員制の粉雪でも、妹はとても喜んで眺めていました」
「それはよかった。それで君の要件はなんだ?」
その時、大勢の男たちが雪崩れ込んできて、私はたちまち拘束された。そして全身を縛られた状態で真夏の街頭に晒された。道路ぎわの温度計は50度を示している。息が詰まりそうだ。青年は私を見下ろしながら言った。
「妹はあの後すぐ熱中症で亡くなりました。涼しい部屋で雪を眺めていたあなたには、想像ができないでしょう。だから総理、あなたもこの暑さを十分味わってください」

(410文字)

たらはかに様の企画に参加させていただきます。新年早々の難題。でもやるんだよ。


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