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かもしれない弁天 #毎週ショートショートnote

『ここは別名「かもしれない弁天」。江戸時代にある商家が商売繁盛を願ってお詣りした所、その夜枕元に立たれた弁天様から「米が高値で売れるかもしれない」と御告げがあり、やがて豪商になったという逸話がございます』
参拝者を前に話す寺の住職。それを眺めていた門前商店街組合長は、隣の町おこしプロデューサーに話しかけた。『あの逸話、あんたが考えたんだろ?あれを言い出してから参拝者が増えて商店街も客が増えた。俺の食堂では「美味しいかもしれない定食」が大人気だ』
『皆さんの努力の結果ですよ。「かもしれない」は、内容が不確実な場合には推量になり、確実な場合には相手への配慮の言葉になる。洋服屋の店員さんが「お似合いかもしれません」と言ってお客の機嫌をとるアレですよ。曖昧さを好む日本人を惹きつける言葉なんですね』
 参拝の後「かもしれない御守り」を手にした人々は、商店街に繰り出し、「うまいかもしれない饅頭」を手土産に帰途につくのであった。

(410文字)
たらはかに様の企画に参加させていただきます。
・・・・・かもしれない…

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