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今この瞬間を楽しめるひと。

好きな食べ物は、スパイスカレー。
好きなアーティストは、小田和正。

「好きな●●」については簡単に答えられるのに、
(人間的に)好きなタイプは?
と聞かれた途端、思い悩んでしまうことがある。

「優しい人が好きか?」と問われたら、必ずしもそうではないし、
「面白い人が好きか?」と聞かれても、特段しっくりこない。

小学校のころから、
“毎日、クラス全員に声をかけること” を目標にしてきた私からすれば、
みんな違ってみんな良い。そこには好きも嫌いも存在しない。

そんなとき、出会ってから10年近く経つにも関わらず、
毎週のように会っている友人Aについて、考えてみる。
そこには、何か無意識の中にある、
「すき」へのヒントが見つかるかもしれないから。

***

今から7年前の話。

車の免許を持っていない私と友人Aは、星空旅行のプランをたてていた。

長野県のほぼ中部に位置する茅野市。
緑は生い茂り、街灯もあまりないという山の中、特急列車とバスを乗り継いでいく。

「星空は、月明かりが少ない方が綺麗なんだって」

そんなふうに事前に調べた情報を駆使した私たち。
月が欠けている日を選んで、1泊2日のプランを決定した。

旅行を実行する当日の朝。
目が覚めて、窓の外を見ると、大雨が降っていた。

「私たちの住む神奈川県から、長野県まではだいぶ距離もあるし、向こうは晴れてるに違いない」
そんなふうに、期待を込めてつけたテレビの天気予報。

長野県にも雨マークが広がっている。

「はあ。星を見に行く旅行だけど、雨じゃあ星が見れないなあ」

そんな気持ちを抱きながらも、横浜駅で集合した私たちは、
「おはよう」「雨だね」なんて会話をしながらも、長野県への特急列車に乗乗車した。

長野県に到着すると、電車やバスで行ける範囲には食べ物屋がない。
そして遊ぶ場所も見当たらない。

私たちは、仕方なくその日の宿泊先へ向かった。


あんなにも星空を楽しみにしていた私たちだが、
宿泊先に響き渡る雨の音が思いのほか心地良い。

雨の音に包まれながら、気がつけば、夜の星空なんて忘れるくらい、
私たちは夢中になって話し続けていた。


今でもその友人Aとは、週1ほどの頻度で会うのだが、会う場所といえば、駅のホームだとか。道を散歩するだとか。

何をするわけでもなく、ただその瞬間を一緒に味わうために会っている。

そこには特別な星空も必要ないし(あればあるで最高だけど)
何か目的があって会う約束をするわけでもない。

ただ、今この瞬間を、空気のように味わえる人。

それが私のすきな人かもしれない。

そういえば、未だに会ってる人たちって、
行きたいお店が閉まってたとき、笑い合える人だったり(ちゃんと調べて行くのが正しい遊び方かもしれないけれど)
缶コーヒーだけで、公園で何時間も共に過ごせてしまう人だったり。

今この瞬間、どんなに平凡なことでも共に楽しめる人なのかもしれない。分かち合える人なのかもしれない。

好きなタイプは?
そんなふうに聞かれると、理想のタイプを考えがちだ。

でも、好きなタイプ。
それって、1番近くにいる人たちのことかもしれないなあ。

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