影.
ずっと明るくいることが美しいと思っていた。
ずっと自分が無理して周りに迷惑かけないことが大切だと思っていたし、 高校の頃のモットーは、『どんな時も笑おう。』だった。
そんな私を認めてくれる人が少なからずいたし、そんな私だから受け入れてくれるのだと思ってた。
そんな私じゃなくなった瞬間、人々は離れていくのだろう。 それはある種の恐怖でもあった。
光と影を見つめた時、光ばかり身に纏おうとしていた自分に、影が美しいと感じさせてくれた人がいる。
影澤亮佑。
2021年を迎えてから、週1、電話越しにお互いの感情を共有した。
ただ、悲しかったこと。イラついたこと。さみしかったこと。喜び。不安。たのしさ。
これは、アドバイスの会ではなかった。
ただ、その場で互いを共感するということ。
私は叫んだ。うちなる弱い部分を。
私は叫んだ。格好悪くて情けない自分を。
彼は叫んだ。心のモヤモヤを。
彼は叫んだ。その日のムカつきを。
でも、カゲに話すことで、自分のイラつきは、自分を必死で守ろうとした美しさから生まれていたんだなと気づいた。
カゲが心の声を受け取ってくれることで、自分はもっとその人との繋がりを大切にしたかったんだなと気づいた。
私が今まで隠し続けていた影の部分は、実はたまらなく愛おしいもので、美しいものだと知った。 そして、私のうちなる美しい点と、あなたのうちなる美しい点がつながる瞬間に、やさしい世界が生まれることを知った。
継続が苦手で、固定された時間を作るのが大の苦手な私。
この3ヶ月間、影との日曜を不快に思うことは一度もなかった。
60分間の終盤になると、電話越しにも伝わる彼のにやにや。
私たちの怒りやモヤモヤは、いつも美しいものに変わっていた。
私たちの光は、いつも影が彩ってくれていた。
光があるから影ができて、影があるから光が見える。
数週間ぶりに電話した彼は熱く燃えていた。
すごくシンプルに、出てきた言葉をそのまま紡ぐように話し続ける。
こんな熱い影澤亮佑を今まで見たことがあったのかな。
世界に一つの笑顔の場所をつくりたい。
ただそれだけと彼は言う。
そこでつくりたい楽園があると言う。
走りたいと心が叫んでいる彼。
スタート地点に漸く立ったと前のめりに話す彼。
大学の時出会って、この人は太陽みたいな奴だなあなんて思っていた。
でも、この3ヶ月間で気づいたことがある。
影澤亮佑は太陽をそっと包み込む、光を引き立たせてくれる、月のような男かもしれない。
『影澤亮佑』そんな名前がぴったりな人間だなあと思った。