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スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #93

こちらの続きです


『初めての訓練』


元素の間

 元素の間へやってきました。
 広いホールの片隅で、私と同じローブを着た集団と、教官らしき男性がひとかたまりになって集まっています。

あれか

 教官のトルフディル先生は、私たちに気が付くと「ようこそ、ようこそ!」と気さくに声をかけてくれました。まだ講義を始めたばかりとのことです。間に合いました。
「だから、言ったように魔法が何かをまず理解しなければならない。魔法とはきまぐれで危険なものだ。魔法を制御し支配できなければ、自分の身を滅ぼすだろう」

基礎的な話かな

 トルフディル先生の言葉を遮るように、ダークエルフの女性が声を上げました。
「あの、それはみんな十分理解しています。もし魔法をうまく使えなければ、ここにはいないはずですから!」
 老齢の教官は、若者の言葉を嬉しそうに受け止めました。
「もちろんだ。間違いなく生まれながらの才能がある。それは疑いない。言いたいのは本当の制御、魔法を支配できるかということだ。何年、何十年もの修行と学習が必要になる」
 カジートの青年が、いらついた声色で言いました。
「それなら何をもたもたしてるんだ?」
「これだ!」
 トルフディル先生は、ぱっと顔を輝かせました。
「話していたのはこのことだ。熱意の中にも慎重さが必要だ。さもないと大惨事なるだろう」
 教官の穏やかな警告に、ノルドの男性が言い返しました。
「だが、着いたばかりじゃないか。俺たちに何ができるか全然分かってないんだ。それを見せるチャンスくらい与えてくれてもいいだろう?」 
 
 …なんて自己主張の強い新入生たちでしょう。みんなとっとと魔法を使いたくて仕方ないようです。
 トルフディル先生は苦笑しながら、私に向かって問いかけてきました。
「ずっと一言も発してないじゃないか。どうするべきだと思う」

ゲッ

「え、えーと…安全は何よりも大事だと…思います…」
 急に指名されて狼狽えましたが、安全な場所から矢を放つのが私にとっては定石なのです。嘘ではありません。
 トルフディル先生がにやりと笑い「しかし、お間の級友はそう思わないようだ」と言うと、カジートが犬歯を剥き出しにして「耳を貸すな。やってみせる。とにかくチャンスをくれ!」とすごみました。

 勝気な生徒たちを見渡し、トルフディル先生は満足げにうんうんと頷きました。
「これくらいで良いだろう。実践してみようか…魔法の安全性の続きで、シールドスペルについて話そう。これは防護の呪文で、魔法を遮断できるものだ」
 トルフディル先生は私を指名し、基本のシールドスペルを実演するよう言いました。呪文について知らないと正直に言うと、簡単なもののようでその場で教えてくれました。

えい!

「素晴らしい!最初の一歩を踏み出したな。シールドスペルの練習を怠らないように」
 どうやら成功したようです。
「もうそろそろ、歴史上で使われた魔法の様々な応用を学んでもいいだろう」
 退屈そうに見ていた級友たちの目がきらりと光りました。おそらく彼らにとってはここからが本題なのでしょう。

「大学は近辺のサールザルの遺跡でとても興味深い発掘をしている。素晴らしい学習の機会となるだろう」

サールザルの遺跡???

「数時間後に待ち合わせて、中に何があるか見てみよう。授業はこれまでだ」

 トルフディル先生はそう言うと、サールザルの遺跡の場所をみんなに教えて元素の間から去りました。
 間違いありません。あのゴールドールのアミュレットの一部を回収しようとして入れなかった”サールザルの遺跡”に、ついに足を踏み入れる事ができる、そのチャンスがやってきたのです。

 他の生徒たちも元素の間を出ていきます。続いていこうとすると、高価そうなローブを身にまとったダークエルフの男性から声をかけられました。
「ここには来たばかりだったな?では自己紹介させてくれ。ウィンターホールド大学のアークメイジ、サボス・アレンだ」
 ミラベル先生が言っていた、この大学の最高責任者ですね。直々に挨拶してくれるとは、魔法大学の権威に対し勝手にミステリアスなイメージを持っていましたが、意外と気さくな人なのかもしれません。 

この人がここの最高責任者か

「ここでは魔法のありとあらゆる側面が調査研究されており、そのことに大変満足している。だが、大学の仲間に対して故意に危害を加えるような研究や実験はいかなるものも承認しない。理解いただけたかな?」
 ふむ。過去に大学の魔術師が色々と問題を起こしていたことは見聞きしています。

「スカイリムにこれ以上、ここの悪いイメージを与えることだけは避けなければならない」
  それはそうでしょうね。
「魔法は真の力であり、一般人が敬遠したり、政治家が楽しい娯楽として扱ったりするものではない。世界を形作り、命の創造と破壊を行うものだ。それなりの経緯を払い、研究するのは当然の事。大学はそれを行う場だ。世界の圧力を受けることがあってはならないのだ」

 そういえばウィンターホールドの街で出会ったクラルダーさんから、この大学が外部の人々との間に『オブリビオンの動乱』や『大崩壊』を経て、長い間遺恨を抱えているという情報を得ていました。

 正直なところ当時はさほど興味をもてなかった話だったのですが、大学側からみた歴史についても聞いてみることにしました。
「第二紀後期の文書を見た事がある。それ以上の事は、なんともいえない。残念ながら、ここ数百年の出来事で歴史の大部分が失われてしまった。大崩壊として知られているものだ」

進研ゼミでやったところだ!

「自然災害により、不運にもここら一帯が壊滅した。この大学もウィンターホールドの街よりましだったが、被害がなかったわけではない」
 クラルダーさんは『大学はほとんど無傷』というような言い方をしていましたが、大学も歴史を遡ることが難しいほどの損失があったのですね。
「大崩壊の原因はわかっているのですか?」
「特定はされていない。レッドマウンテンの噴火がはるか遠くにまで因果関係をもたらし、何年も経ってから影響が出たという者もいる。この大学に責任があるという者もいるらしいが、絶対にそんなことはない」
 想像を超えた自然災害が起きて不幸のキャパシティが超えた時、それを『自然な災害』として受け入れることが出来ないという心理は理解できなくもないですが、それを人為的であるとこじつけて攻撃のターゲットとされてはたまったものではないでしょう。

「その『大崩壊』とは、どのようなものだったんですか?」
 ダークエルフのサボス先生は実際にその様子をみたことがあるようです。
「亡霊の海はまるで生きているようだった。誰も予測できなかった。巨大な波が何週間も続けて岸を打ち付けてくるなんて。ウィンターホールドは大昔から存在し、自然に耐えてきたが、海の猛威にはかなわなかった。夜が明けると、街全体が消え去って行った。次第に波は引いたが、復興が不可能なほどの被害が残された。ウィンターホールドの住民の多くは、残骸と化した街を放棄したんだ。大学は難を逃れ、今もここに残っている」

ふむ

 ウィンターホールドは自然災害等によって多くを失いました。大学が残り、縮小された町が細々と営みを続ける中、元々寒冷厳しく生活が困難な環境下、昔のように栄える余力もないまま今に至り、大学内と外との溝は埋まることなく深まっていったのでしょう。
 魔法は世界を形づくり、命の創造と破壊を行うもの。その力をかつて自分達を襲った災害のように脅威ととらえた人々が、この大学への視線を変える事は難しいことのように思います。それでもここが残り続けているのは、サボス・アレンというアークメイジ、彼の努力の賜物なのかもしれません。

 サボス先生と別れたあと、さきほどミラベル先生と不穏な空気を出していたハイエルフの男性から話しかけられました。どうも見覚えのあるローブを身に着けています。
「ほう、新しい見習いか」

せやで

「君は世界を変えようと考えてここにやってきた類か?それとも己の利益のだけのためにきたのか?」
 いきなりよくわからない質問です。私はただアラネアさんの付き添いできただけなのでただただ困惑していると、
「心配せずとも、私はお前たち全員を注意深く見守っている」
 なんだか不気味な宣誓をされてしまいました。
 このローブ、たしかマルカルスで出会った”サルモール”のハイエルフが着ていたものです。

「あなたこそなぜここに?サルモールの方ですよね」
「そうだ。私はアンカノ。アークメイジの顧問である。サルモール政府は貴校との関係を促進していきたいと願っている。アークメイジが助言を必要とするときは、いつでも手伝う事になっている」

助言?

 さきほどサボス先生は「政治家」や「世界の圧力」について言及していました。そんな彼がサルモール政府に助言を求めることがあるのでしょうか。
 私がその疑問をぶつけると、アンカノさんは少しばかりため息をつきました。
「もっと尋ねてくれるといいのだがな。時間が経てば、もう少し信頼もしてくれるだろう」
 やはり、どうやら彼がここにいるのはサボス先生の意志ではないようですね。ミラベル先生のあの態度とも辻褄があいます。
 それなら彼はなぜここに送り込まれ、歓迎されないまま過ごしているのでしょう?
「自治領と帝国の関係が安定した以上、私たちはスカイリムを援助しようと思っている。この変革の時に人々を導き、より良い未来へと進む手助けをしようとしているのだ」
 あくまで慈善事業ということなのでしょう。しかし、彼らの「導き」や「手助け」が、多少強引であることは歴史が証明しています。そこから生まれたスカイリムでの内戦という状況。

 このウィンターホールド大学をうろつくサルモールの賓客。彼の存在が大学の不穏さをより一層濃いものにしているように感じました。

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