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スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #72

こちらの続きです


リフテン観光①


 残っていた依頼仕事の中から手ごろなものを片づけたあと、思い立ってリフト要塞の都市『リフテン』を訪れることにしました。近くを通ったことはありましたが、まだ中へ入ったこともなかったのです。

 あまり治安の良い街ではないという噂は聞きますが、一体どんな場所なのでしょう。期待と不安を抱きながら閉ざされた門まで向かいました。

ここかぁ

 リフテン衛兵が話しかけてきました。
「リフテンに入りたいのなら、訪問者税を払ってもらう」
「訪問者税?なんのための税金ですか?」
「この街に入るという特権のためだ。問題ないだろう?」

あ?

 おかしな話です。街に入るためだけにお金をとるなんて聞いたことがありません。そんなことをしてなんの意味があるのでしょう?ただでさえ治安が悪いという噂で観光的な魅力はほとんど無いというのに、流れてきた旅人を忌避する制度を用いるなんて、どう考えても破綻しています。これを考えたのはこの街の首長なのでしょうか。このシステムを街の人、特に商人は賛成しているのでしょうか。この街は一体何を主軸に経済政策を行っているのでしょうか。
 と、思いついた疑問すべてを早口でまくし立てると、リフテン衛兵はうろたえ始めました。
「わ、わかったよ、大きな声を出さないでくれ…みんなに聞かれたいのか?通してやるから、その門の鍵を開けさせてくれ」
 そう言うといそいそと門の鍵を開け、「はよいけ」と追い立てるように我々を中へ入れました。

暗…

 まさか入り口で揉め事が起こるとは。先が思いやられます。
 すぐ目に入ったのは、重装備の女性。高級な服を着た男性と深刻な顔で話をしています。
「盗賊ギルドと別の揉め事があったの」
 会話の内容が気になるので近づいてみました。

 男性が優しい声で諭します。
「ムジョル、気を付けて。盗賊ギルドの背後にはメイビン・ブラック・ブライアがついてる。彼女がちょいと指を鳴らせば、リフテン監獄行き…いや、もっとひどい目にあうかもしれない」
 しかしムジョルと呼ばれた女性は毅然として首を振りました。
「私がここにいる理由は彼らなの。放っておけないのよ、アエリン」
「わかってる。ただ、行かないでほしいんだ。だって、あなたがここにいてくれることが、長い間、この街でたったひとつ、素晴らしい事だったんだから」

おやおや

 スカイリムでは珍しいさわやかなロマンスの香りに、ついその場を離れがたくしていると、ムジョルさんがこちらに気が付きました。
「こんにちは。あなたも冒険者?」
 顔の入れ墨や装備はいかついですが、優しそうな人です。
「リフテンは初めて?」
「はい。さきほど盗賊ギルドについてお話されていましたね。ギルドについて教えていただけませんか?」
 ムジョルさんは顔をしかめました。
「ギルドなんて呼ぶのは馬鹿げてる。金で互いを裏切るような連中を仲間だなんて考えられる?奴らは最悪よ。闇の一党だって厳しい規則や伝統に従っているというのに、あの盗賊たちはただの暴徒だもの」
 『闇の一党』――耳にしたことがあります。盗賊ギルドと闇の一党はまったく別の組織なのですね。

 会話に名前が出ていた『ブラック・ブライア』についても聞いてみました。
「家長のメイビン・ブラック・ブライアは、この街の悪徳の象徴よ。何人もの役人を買収して、帝都にも友人がいる。盗賊ギルドともつながりがあるの。あの一族からリフテンの人々を守ろうと頑張ってきたけど、無理だったわ」
 どうやらリフテンのブラック・ブライアは、マルカルスのシルバー・ブラッドのようにあくどい手を使うこの街の権力者のようですね。そしてムジョルさんはとても正義感が強いようです。
 さらに一族について詳しく教えてくれました。メイビンの娘のインガンは変わった娘で、錬金術に夢中になっているそうです。メイビンの息子のヘミングはわがままな子で、一族の後継者。主人に従う忠犬のように、彼女の後をついて回っているとのこと。
「そしてシビ。これが最悪よ。殺人を犯してリフテン監獄にいるの」
 権力者の血縁でも、さすがに殺人を侵したら投獄されるのですね。一体どんなことをやらかしたのかは気になりますが。

 リフテンについて詳しく教えてくれたムジョルさんですが、どうも地元の人というより客観的に物事を見ているような気がします。
「あなたはリフテンの人間ではないのですか?」
「ええ、私はろくに剣も振るえない小娘のころから、タムリエルをあちこち冒険してきたのよ。ハイロックからヴァレンウッド、エルスウェーアからモロウウィンド、それにその間の至る所を旅したわ」
「それはすごい!」
 私は心からの感嘆を送りました。女一人で旅をする大変さはよくわかります。あらゆる大陸を渡り歩くなど、とても大変なことでしょう。
「しかし、そんなあなたがなぜリフテンにこだわるのですか?」
 私の素朴な疑問に対し、ムジョルさんは真摯に答えてくれました。
「何年も前に、ドゥーマーの廃墟で”グリムシーバー”という剣をなくしたの。その時、富を求めて日々を無駄に過ごしてるって気づかされたの。私たちは似ているわね。難題と大きな宝を探し求めている。だけど似ているのはそれだけよ。リフテンこそ、私が倒すべき最大の獣。そして人々からの感謝と信頼が、私の財産よ」

ほえ~

 素晴らしい志です。
「あなたはリフテンの守護者ということですか?」
「難しい仕事よ。この街の問題を引き受けてきたけど、途方もない壁にぶつかってばかりよ。汚職、嘘、詐欺。これがここの日常なの。私の命を救ってくれたアエリンがいなければ、とっくの昔にあきらめていたでしょう。」
 そう言うと、横にいる男性にそっと視線を送りました。
「ドゥーマーの廃墟の外で死にかけていた私をアエリンが見つけたの。彼がここへ運んで看病してくれなかったら、きっと死んでいたわ。私が回復すると、彼はリフテンを苦しめている問題について教えてくれた。だからこれも運命だと思って、街に留まっているの」

ほ~~

 命の恩人であるアエリンのために、ムジョルさんは旅をやめてリフテンに留まり巨悪と戦っているのですね。正義感が強く、誠実な人です。スカイリムでこれほどまっすぐな人物に会えるというのは貴重な経験なので、リフテンで一番先に出会えたのが彼女で良かったです。リフテンが油断ならない街だということもわかりましたしね。

 さて、続いて出会ったのは怪しげな男です。目が合うなり開口一番「あんた、一体誰だ?リフテンで揉め事でも起こす気か?」と絡んできました。もしかしたら門外での揉め事が聞こえていたのかもしれません。

あ?

「ただの通りすがりです」
「そうか?おい、教えてやろう。ここには見るべきものなんて何もない。ブラック・ブライアが一番嫌がるのは、得体の知れない奴が関係ないのに首を突っ込んでくることだ」
 またもブラック・ブライアの名前が出てきました。しかも普段私が各所で行っている生業が、まさに嫌われている行動のようです。どうも私がこの街で腰を据えるのは難しそうですね。

 おしゃべり好きなその男にも、リフテンについていろいろと話を聞いてみることにしました。
「ブラック・ブライアはリフテンを支配下に置いてる。盗賊ギルドが後ろ盾だ。奴らには関わるな。俺?俺はモールだ。通りを見張っている。何か聞きたいなら役に立つが、金は払ってもらうぞ」
 モールさんは情報屋でもあるようです。金を払うかどうかはさておき、ふと思いついて集めていた『珍しい宝石』について尋ねてみることにしました。
 モールさんは眉を上げ、
「そんな代物は盗むしか手に入れる方法はない。あんた、思ったよりもこの辺でうまくやっていけるかもしれないな」
と口角を上げました。
「これ、鑑定できます?」
「俺が商人に見えるか?盗賊ギルドのヴェックスにでも見てもらえ。奴らに気に入られれば、彼女を見つけられるかもな」
 どうやら盗賊ギルドにはヴェックスという鑑定人がいるようです。せっかくの情報ですが、盗賊ギルドに入るのは気が進みません。ため息をついて宝石をしまいました。
 モールさんは私に宝石の価値を教えられなかったからかお金をせびりませんでした。意外とまじめです。

 ブラック・ブライアについて詳しく聞いてみました。
 メイビンは経営に力を入れ、身分の高い人間とも人脈があるようです。
「いいか、もし彼女から何かをするように言われたら…それをきっちりこなした方が身のためだ。それに、闇の一党や盗賊ギルドともつながりがある。だから実は、誰も彼女に手をだせないんだ。」
 とにかく恐ろしい人のようですね。シルバーブラッドがフォースウォーンを使っていたように、街の権力者と犯罪の癒着というのは、街の営みに影を落としますね。

 盗賊ギルドについても聞いてみます。
 モールさんの兄弟、ディルジがギルドのアジトで働いているそうで、前はモールさんもそこで働いていましたが、ギルドに不運が続いた頃にメイビンから仕事をもらった、とのこと。
「仲間に入りたいなら、市場でブリニョルフを探せ。あんたみたいな奴は使ってくれるだろうよ」

ブリニョルフ…

 盗賊ギルドに入るつもりはありませんが、覚えておきましょう。

 闇の一党についても話を聞きます。
「ウィンドヘルムのアベンタス・アレティノって名前の少年が、闇の一党に接触しようとしたって噂は聞いたな」
 その話は実際にウィンドヘルムでも耳にしました。結局アベンタス・アレティノ本人に会う事はなかったので、真相はわからないままです。
「そいつはリフテンの向こう側にある孤児院で暮らしてたんだが、逃げ出したらしい。まあ、気持ちはわかるよ」

 結局闇の一党がどんな組織なのかはよくわからないままでしたが、リフテンにある孤児院が逃げ出したくなるような場所だということは伝わってきました。一体どんなところなのでしょう。あとで立ち寄ってみることにします。
 結局モールさんはおしゃべりできたことに満足したらしく、最後までお金を請求してくることはありませんでした。


 続いて酒場に向かいます。中に入ると、僧侶がアルゴニアンの男性に向かって声高に説法を繰り広げていました。

「これは証のひとつ。お前が常に酩酊状態にあることを聖女マーラが快く思っていない証だ。その臭い液体で満ちた瓶を置いて、カイネの侍女の教えを受け入れればいい」

なんや

 カウンターに立つアルゴニアンの女性が口を挟みます。
「やめて、マラマル。この事は話し合ったでしょ。タレンが…」
「キーラバ、我々は確かにある種の理解に達することができるだろう。人々は自ら招いた混乱に気づかねばらない」
 それまで黙っていたアルゴニアンの男性が口を開きました。
「いいかげんにしろ、マラマル。ドラゴンが再来した事は誰もが耳にしている。それを口実にお客を困らせる必要はない」

お、殴り合いか?

 僧侶は顔を背けました。
「いいだろう、タレン。この悪の巣窟から立ち去ることにしよう」
 タレンと呼ばれたアルゴニアンは静かに言います。
「お前を追い出すつもりはない。そのまま聖堂で説教を続けて、俺たちの罪はほっといてくれ」

 僧侶マラマルは去って行きました。マーラ、と聞こえたので、マーラ崇拝の司祭でしょうか?ドラゴンの復活は人々の飲酒が招いたという話だったようですが…酒場でこんな話をされたら、商売になりませんね。

穏やかじゃないなぁ

 司祭が去ると間もなく酒場ににぎわいが戻りました。その中でひときわ高価な服を着る女性がいたので物珍しさから声をかけると、なんと彼女こそ噂の権力者、メイビン・ブラック・ブライアその人でした。
「リフテンでは、あなたの名前が力を持っているようですね」
 メイビンは高慢な口調で答えました。
「当然でしょう。この街では私の裁可がなければ何も動かないのですよ。首長にも顔が利くし、衛兵も言いなりにできます」

ストレートだなあ

「誰かに手を焼いた時は、盗賊ギルドへ足を運ぶ。腹を立てた時には闇の一党に話を通す。次にそういう言わずもがなの見解を口走りそうになった時は、今言われたことを思い出すのですよ」

 警告か脅迫か。噂は事実のようです。私のような流れ者にも堂々と犯罪者の顔を見せるだなんて、この街に法律はあるのでしょうか?

 リフテン。今までの街にはないくらい犯罪に染まっている病魔そのもののような場所です。門から中に入って数歩だけでこの情報量。今のところ問題に深入りするつもりはありませんが、こんな街で暮らす人々が一体何を考えているのか興味が出てきてしまいました。

 引き続きリフテン観光を続けていこうと思います。

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