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スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #75
こちらの続きです
『失われた無垢』
リフテンのオナーホール孤児院を訪れてからというもの、ずっと気になっていたことがあります。ウィンドヘルムに逃げたというアベンタス・アレティノのことです。
子供たちに対し非人道的な扱いをするグレロッドを目の当たりにし、さらにその状況を改善しようともしない大人たちへの失望もあり、私が出来ることがあればなんとかしなければ、と思いが巡っていました。
そこでウィンドヘルムのアレティノの家を訪ねることにしたのです。
ウィンドヘルム
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アレティノの自宅には常に鍵がかかっています。周囲の証言から確かにここに住んでいるはずなのですが、家から出てくる様子はありません。子供一人でどうやって暮らしているのか、とても心配です。
そこで強硬手段にでることにしました。ピッキングです。夜闇を待ち、衛兵の姿がないことを確認して鍵をこじ開けました。
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簡易的な鍵はスムーズに開錠できました。息を殺してそっと中に入ります。すると家の中から少年の声が聞こえてきました。
「愛しき母、愛しき母よ、あなたの子をお送り下さい。卑しむべき者の罪は、血と恐怖で清められなければならないのです」
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見つけました。不気味な言葉を繰り返し繰り返し、祈りのように呟きながら、蝋燭に囲まれた場所で何かを打ち付けています。
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異様な光景です。隠れるのはやめて少年に近づきました。彼は私に気が付かず、儀式を続けます。
人骨と、奇妙な肉、心臓。それを取り囲む蝋燭。そして古い本。
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「…大丈夫?」
声をかけると、アベンタスは顔を上げ、私を見るなり叫びました。
「やった!僕の祈りが届いたんだ!成功だ!来てくれると思ってた、やっぱりだ!」
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「黒き聖餐をしたんだ、何度も何度も、死体と…あれを使って、そうしたら来てくれた!闇の一党の暗殺者だ!」
「悪いわね、少年。君が思っているような者ではないのよ」
「いいや、そうだよ!祈ったらあなたが来たんだから。お願いだから仕事を受けて!」
少年はいっそ誰でもいいとでも言うように、切羽詰まった様子です。
「仕事?」
「母さんが…死んだんだ。それでひとりぼっちになって、リフテンのひどい孤児院に送られた。オナーホール孤児院だよ。院長は悪人で、ひどい女なんだ。親切者のグレロッドなんて呼ばれてるけど、親切なんかじゃない。僕らみんなをオモチャみたいに扱うんだ。だから逃げ出して、家に戻ってきたんだ。そして、黒き聖餐をしたらあなたが来てくれた!あの親切者のグレロッドを殺してよ!」
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噂では聞いていましたが、まさか本気で暗殺を依頼しようとしていたとは。彼がこれをしていることが私にも伝わっているくらいですから、その闇の一党とやらの耳にも入っているはずですが、どうやら無視されていたようですね。
「お願いだから急いでよ。本当はここにいるのが寂しいんだ。オナーホール孤児院に送られるのはいやだけど、あそこにいる友達には会いたいんだよ…」
他の子たちとはうまくやっていたようですね。
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母の愛情を知っているだけに、グレロッドの扱いはよほど答えたに違いありません。
「コンスタンス・ミシェルは殺さないで。あの人は本当にいい人だから」
あの女中のような娘さんですね。子供たちに同情はしていましたが、なすすべはないという様子でした。それでも彼女なりに出来る限りのサポートはしてあげていたのでしょう。アベンタスはグレロッドさえいなくなれば孤児院で生活できると考えているようです。
母親を失い、安全な生活も失い、憎しみの中に生きている少年。
「本気なの?坊や。本気でグレロッドを殺すつもり?」
私の問いかけに対し、アベンタスはその瞳に強い光を見せました。
「今まで生きてきて、こんなに本気になった事はないよ。グレロッドみたいな奴はもう一日だって生きてちゃいけないんだ。あいつは怪物なんだよ」
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アベンタスの決意は固く、彼が一体どんな目にあったのかまでは聞く必要がないと感じました。それほどまでにまっすぐな瞳で私を見るのです。
正直なところ、私が彼女を殺すのは簡単なことです。しかし、暗殺の依頼は彼がグレロッドを殺すことと同義。彼の背中には一生殺人の罪がのしかかることになります。
あぁ、私は一体どうしたらいいのか…悩みながら、リフテンに向かいました。
オナーホール孤児院
再び孤児院を訪れました。他の子どもたちの様子を見て、グレロッドについて話を聞きます。
ルナ・フェア・シールド曰く、
「大嫌い。みんな嫌ってるわ。あんなに意地悪な人見た事ないもの。私たち、ときどき部屋に閉じ込められることだってあるのよ。コンスタンスが止めようとしても、きりがないの。コンスタンスは本当によくしてくれるんだけど」
アベンタスが言っていた通り、コンスタンス・ミシェルは子供たちにとって救いになっているみたいです。彼女がいなかったらどうなっていることか…想像しただけで恐ろしいですね。
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フランソワ・ビューフォール曰く、
「グレロッドさんは… その、怖いおばあさんなんだ。あんなひどい人、他にいないね。多分ハグレイヴンなんじゃないかな。1回しか外に出してもらえないんだ。朝にね。そして突っ立って僕らを監視するのさ」
近くにいるので声を殺して話してくれました。育ち盛りの子供たちを家の中に閉じ込めておくのは健全とは言えませんね。リフテンの治安の問題もあるかもしれませんが、他の街で元気に駆け回る子供たちの様子とはまったく違います。
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サミュエル曰く、
「彼女が時々仕事や寝るために部屋に入ったら、ちょっとだけ抜け出すんだ。男なら自分で稼がないと、でしょ?」
この子はずいぶんしたたかですね。一体どんな風に稼いでるのかわかりませんが、厳しくしているわりに監督も行き届いていないようです。
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フランソワ曰く、
「なんだか怖い顔をしているね。でもグレロッドばあさんより怖い人なんていないよ」
悩んでいることが顔に出てしまったのでしょうか。苦笑してその場を離れます。
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グレロッドの言い分を聞くことができたら、と思ったのですが、
「なんの用?ここにきてもしょうがないでしょ」
と追い返されてしまいました。
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彼女は愛情や責任をもって子供たちを健全に養育しているように見えません。それなのに養子縁組の話も全て断り、外の世界に出そうともしない。ただ無力な子供たちを支配できる今の環境を気に入っているだけのように見えます。
この状態を他の人々は知っています。しかし誰も変えようとしません。唯一子供たちの味方であるコンスタンス・ミシェルでさえ、状況を変えることができずにいます。
唯一変えようと勇気を出したのは、たった一人。アベンタス・アレティノだけ。そのアベンタスの祈りを、闇の一党は無視しました。彼を見捨てたのです。
私はただの狩人です。野獣や、山賊、吸血鬼、死人、幽霊、ウェアウルフにドラゴン。人々を苦しめるものたちをすべて薙ぎ払ってきました。自分の心情に基づいて、弓矢と剣で命を奪ってきました。
私が今、グレロッドをこのままにしたらどうなるのか?子供たちは怯えています。きっといつかグレロッドに殺されてしまう、と。でも逃げ場がなく、その日が来るのを怯えながら待っている。
子供たちを見殺すか、グレロッドを殺して子供たちを救うか。二つに一つ。
答えは出ています。
物置部屋で夜を待ち、孤児院が静まり返ってからそっと寝室に忍び込みました。
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グレロッドを揺り起こします。老婆は起き上がり、「なんだあんた?」とこちらを睨みつけました。
「アベンタス・アレティノがよろしく言っていました」
「アレティノですって?あのろくでなし!覚悟しとけと伝えて、見つけたら、ひどい目に遭わせてやる!」
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再びベッドに戻ろうとしたグレロッドに、矢を打ちました。
「ギャァァァーーー!」
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断末魔を聞きつけた子供たちは部屋に飛び込んできました。死体を目の当たりにした子供たちは、恐ろしい老婆が二度と動き出さないのだと悟ると、むくむくと口角を上げ、背中を丸めたりそらしたりして狂ったように笑い始めました。
「グレロッドが死んだ!アベンタスがやった!あははははは!」
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「やった!”親切者のグレロッド”がついに死んだ!助かったんだ!」
「アベンタスは本当にやった!闇の一党を使ってグレロッドを殺したのよ!あはははは!」
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衛兵が来る前に孤児院を抜け出します。
コンスタンス・ミシェルもパニック状態ではありましたが、私を通報しようとはしませんでした。
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ウィンドヘルム
アベンタスの元へ戻り、グレロッドの死を報告しました。
「やった!やってくれると思ってた!やっぱりだ!闇の一党が助けてくれるって信じてた!」
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アベンタスは感謝を繰り返し、家宝だという立派な銀の皿を渡してきました。「いらない」と伝えましたが、どうしてももらってほしいと言います。
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「あなたはこれからどうするの?」
「しばらくしてから孤児院に戻るよ。みんなに時間をあげなくちゃ。ほら…色々片付ける時間を」
とても賢い子です。
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彼が孤児院に持って行くだろうナップサックにそっと皿を押し込み、アベンタスの家を後にしました。
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”親切者のグレロッド”が殺され、オナーホール孤児院は子供たちにとって安全な場所になりました。きっとコンスタンス・ミシェルがよき養護者となるでしょう。
しかし、その安全な場所は、孤児たちが暗殺という手段によって手に入れることに成功したものです。そんな歪んだ成功体験は、今後彼らの将来においてどれほどの影響を与えるのでしょうか。
果たして私がしたことは正しかったのか。他に手段はなかったのか――考えても答えが出ません。出来ることといえば、私自身がこの手でグレロッドを殺したということを忘れず、彼らを責任もって見守り続けるということだけでしょう。
リフテン
リフテンに戻ると、配達人から声をかけられました。
「探したよ。これ、あんたにだってさ」
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渡されたのは奇妙なメモでした。黒インクの手形と、『お前を見ている』。それだけ書かれた紙。
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「これは…誰からの手紙ですか?」
「わからない。黒装束の薄気味悪い奴だ。顔は見えなかった。これをあんたに渡すのと引き換えに、報酬を弾んでくれたけどな」
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一体何なのでしょうか。意味がわかりません。配達人は用事を終えるとさっさと立ち去ってしまいました。
不気味の一言ですが、気にしても仕方ないので、次の依頼にとりかかるとしましょう。