スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #63
こちらの続きです
『純粋』
アエラさんと別れた後、ファルカスさんに仕事の話を聞いてみると、珍しく難しそうな顔で言いました。
「もちろん、仕事はいつでもあるんだ。だが、今はそれどころじゃない」
「何か問題が?」
「今となってはコドラクが正しかったのかも知れないと思う。ウェアウルフになってしまった以上、俺は善きノルドとはいえない。清い体に戻りたいんだ。かつてのあの男のように。俺だって死後にはソブンガルデへ行きたいよ」
ファルカスさんとヴィルカスさんの兄弟は、ウェアウルフ肯定派のアエラさんやスコールさんよりもコドラクさんの意見に同調しているような気がしていましたが、その勘は正しかったようです。
「治療するなら手伝いますよ」
「同行してくれるなら光栄だ、導き手よ。まだ魔女の首のひとつを持っているな。悪くない」
コドラクさんの魂を浄化した時のように、イスグラモルの墓で儀式を行うことになりました。
そういうわけでイスグラモルの墓へやってきました。
儀式開始です。導き手の火炎の中に魔女の首を投げ入れると、ファルカスに憑いているオオカミの霊魂が出てくるので、手に入れたばかりの『狩りの弓』でそれを倒します。
すべてが終わった後、ファルカスさんに声をかけました。
「ファルカスさん、大丈夫ですか?」
ファルカスさんは剣を構えたまま、なんともいえない顔をしています。
「熱いハチミツ酒の中でくつろいでいるみたいな気分だ。気が付かなかった痛みまで消えていく。これぞ戦士の感覚ってやつだな。生きてる実感がする。狩りをするって考えに心が曇っていない」
とても気分がいいようです。ウェアウルフの力は強靭ですが、その代償として心や体を恒常的に蝕んでいたのです。いっそハーシーン信者に慣れた方がどれほど楽か。
「助けてくれてありがとうよ。これからしばらく墓にいるとしよう。恥だと思って外にいたが、今はこの目で見てみたい」
ファルカスさんと別れ、ジョルバスクルに帰りヴィルカスさんとも話をしました。やはりヴィルカスさんも同じように浄化を望んでいたので、彼もまたイスグラモルの墓へ行って儀式を行うことになりました。
「まるで…夢からさめたみたいだ」
ヴィルカスさんも体の調子がいいことに気が付いたようです。
「今は深く息ができる。その心臓の鼓動は、かつての私とは違う。だが精神は…澄んでいる。素晴らしい働きをしてくれたな、導き手よ。忘れないぞ」
さて、まだ魔女の頭はあります。これを使えば私もウェアウルフの力を失い、普通の人間の狩人へと戻ることができるのです。
ウェアウルフとなって夜の草原を駆け抜けた爽快感や、獲物を仕留めた時の興奮、そしてトーテムへ祈りをささげるアエラさんの姿が思い起こされました。…このままでも、いいのかもしれない。今まで食らったのは敵ばかり。人間の姿で狩るか、オオカミとして狩るかの違いです。何も問題はありませんでした。
しかし脳裏によぎるのは、幼い少女、ドルテに忍び寄る鋭い爪の黒い獣の姿です。
体中の毛が逆立つような感覚を覚えながら、私は青白い炎の前に立ち、その頭を投げ込みました。
私の体の中から生まれ出たオオカミの霊魂はしぶとく、参戦してくれたヴィルカスさんも負傷するほどでしたが、なんとか弓矢で消し去ることができました。
ヴィルカスさんやファルカスさんと違いまだ実感はありませんが、これで私はウェアウルフではなく、何者でもないただの狩人に戻ることが出来たのです。
同胞団のウェアウルフはこれでアエラさん一人になってしまいました。だからといって彼女に改宗を迫るつもりはありません。私たちはただそれぞれの死にざまを選んだだけなのです。
この先、同胞団はウェアウルフの血に頼ることなく存続できるのか、また同じ歴史を繰り返していくのか、それすらもかなわず、滅び忘れられていくのか――すべては我々次第です。しかし力を求めるがゆえに後世の者にまで呪いを託すような生き方はしたくありません。
我々には生まれ持った力、経験と知恵から手に入れた力があります。それらを惜しまず、人々を守るという信念、それも自分の存在価値のひとつであるという実感を得ることができれば、戦乱の世でまっすぐに生きることができる戦士の居場所としてジョルバスクルを運営し、同胞団としてあるべき形は維持できるはずです。
たとえアエラさんがすぐには納得してくれないとしても――いつかはわかってくれるでしょう。彼女もまた誇り高き同胞団の戦士なのですから。