スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #91
こちらの続きです
ボエシアの祠
以前山を歩いている最中に狂ったボエシア信者から襲われ、その遺体から回収した本によれば、ウィンドヘルムの近くの山にデイドラ王ボエシアの祠がある、と書いてありました。
あの本を読んでからというもの、どうにも頭の片隅から消えずに気になり続けているので、思い切って行ってみることにしました。
その意思をアラネアさんに話すと、あまり気乗りしないようで、「やめた方がいいとおもうけど…そんなことを言っても無駄よね」とため息をつかれてしまいました。
ウィンドヘルムを見渡す山。思い当たる山道をひたすら上っていくと――
ボエシアの祠を見つけました。
「ネレヴァルよ、導きたまえ!」
人の気配どころか、雄叫びや剣を交わす鋭い音が響いています。
私たちに気が付いたダークエルフの女性が話しかけてきました。どうやら司祭のようですが、その割には物々しく血なまぐさい装備を身に着けています。
「ボエシア王に忠誠を誓っているの。あなたは度胸を試しにきたのかしら?」
司祭の向こうでは、二人の男女が剣を交えています。訓練かと思いましたが、そうは見えません。本気で殺し合っている様子です。
「これは…何かの新興宗教ですか?」
「私たちはボエシアの規範から作られている。言葉と剣によって、意思を世界に刻み込むの」
司祭の言葉の意味はよくわかりませんが、書籍『ボエシアの証明』には信者同士の殺人をデイドラ王ボエシアが歓迎するような描写があったことを思い出しました。彼らが行っているのはあの場面の再現なのかもしれません。
「あなたの言うボエシアというのは…」
「策略卿、民を惑わす者、トリニマックを滅ぼす者。影の女王、破壊の女神、壊す男と消す女…王の高貴な名前の多くは、定命の者のためだけのものよ。これから死ぬまで、この強大な名前を唱え続けるといいわ。そんなことをしても無駄だけどね」
司祭は自嘲するように笑みを浮かべます。
「王にとって、名前は無意味なの。王が気にしているのは、誰が自分勝手で、誰の心が決意にあふれていて、誰の生き様が偉業に満ちているかって事だけ」
名前も性別も無意味で、自分への信仰心にも興味が無い。ただ自分がどう思うかということだけ…彼らはなぜそんなデイドラ王を信仰し、命を懸けてまでコンタクトをとろうとしているのでしょうか。
「ところで」と、こちらを値踏みするように視線を向けてきます。
「あなたこそ何者なの?クズのくせに、そよ風にも吹き散らされる、ただの霧だわ」
ずいぶんな言いぐさですが、実際私はただ気になってやってきただけの野次馬です。この場所で命をかけている彼らにとってはただ流れてきたの霧のような存在で間違いないでしょう。
「ボエシアの信者の人からその…”もらった”本を読みまして、それでなんとなくここに来たんですけど」
司祭は私の顔を見つめながら少しばかり逡巡し、やがて口を開きました。
「闇の女王に会いたいなら、やるべき事があるわ。」
「やるべき事…」
あの殺し合いのことでしょうか?
「まず、あなたが嘘つきじゃないか確かめないとね。誰か見つけて、その人の信頼を得なさい。そして祠の上に連れて行くの。次に、その奴隷を生贄の柱に触れさせて。柱の魔法が奴隷を捕らえて、自由を奪うわ。そうしたら、きっちり縛り上げて、儀式用の剣を深く突き刺すの。流れ出た血を自分で浴びるくらいにね」
「人をだまして、殺して、生贄として捧げるってことですか?」
「あなたが十分強ければ、闇の邸宅にいるボエシア王を揺り動かして、その姿を見せてくれるはずよ」
なんと、かなり残酷な儀式です。そこら辺の山賊や獣を捕まえてできるようなものでもありません。
「ちょっと無理ですね…」
私が固辞すると、興が覚めたとばかりに蔑みの目を向けられ、
「なら、あなたは弱虫のクズってところね」
と吐き捨てられました。
いや、私の価値観上ではそんなことを実行する方がクズなんですが…狂信者とは意見を合わせるのが非常に困難です。あまり気にしないようにしましょう。
さて、信者たちの決闘にもついに決着がつきました。女の剣が男を貫き、断末魔を上げて大の字に倒れました。
「お前は弱かったんだ。だから死んだ。記念に何か言い残すことは?」
物を言わぬボエシア信者を見届けたあと、せっかくなので階段の上にあるという祭壇を見てみることにしました。ボエシア信者たちはみな武装し、今にも斬りかかってきそうなほど殺気にあふれています。なんとも気疲れしそうな信仰です。彼らの求めるものとは、幸せとは、一体何なのでしょう。
司祭が言っていたとおり、頂上には不思議な柱がありました。柱を中心に渦を巻いたようなレリーフが掘られており、アラネアさんが近づくと不思議な光を放ち始めたので、
「危ない危ない!危ないですよ!」
慌てて引き剥がしました。
ボエシアはどうやらかなり危険なデイドラ王のようです。興味本位で来てしまいましたが、退散することにしました。
ところで、ボエシア信者には見たところダークエルフが多く、アラネアさんにそのことについて尋ねてみると、昔からボエシアはダークエルフを贔屓していると言われ、モロウウィンドでは善いデイドラとして信仰されているそうです。所変わればなんとやらですね。
「守護者よ。黄昏はすべてを見ているわ」
全てを予見していたアラネアさんから優しく窘められ、自分の好奇心について顧みるよい機会になりました。
ユンゴル墓地
ウィンドヘルムに向かって山を下りていくと、途中に墓地を見つけました。『ユンゴル墓地』です。
ここは、ウィンターホールドの雑貨店"ビルナ・オドメント”の店主ビルナさんから『コーラルドラゴンの爪』を50Gで譲ってもらって以来、ずっと探していた場所です。
『それをユンゴル墓地に戻す』という情報はもらっていましたが、それがどこにあるかまではわからなかったのです。(実際にマーカーは表示されませんでした)
きっと中にはドラウグルがうじゃうじゃ…と気合を入れて入りましたが、入り口から出迎えたのは、青く光る小さな”玉”でした。それが意志をもっているように飛び跳ね、私の後をついてきます。
空になった棺から、またひとつ。
さらに進むと、またひとつ。
新しい部屋を訪れるたびに、ぴょんぴょん跳ね回る青い球体が増えていき、それらはすべて我々を誘導するように先へ進んでいきます。
どんどん増えていく光る玉に導かれ、奥へ進んでいくと、ついに爪で開く仕掛け扉にいきつきました。
玉はまるで私を急かすように扉の前で跳ね回ります。
「厄介事が広まっているわ」
その様子を見てアラネアさんは警戒しました。
爪の仕掛けを解いて開いていく扉を乗り越えようと、球が激しく跳躍します。
中には大きな宝箱がみえました。その向こう側に玉が集まっていくと、禍々しい影がのっそりと姿を現し、攻撃を繰り出してきました。
「ユンゴルの影!」
どうやらここに埋葬されていたユンゴルという人物の亡霊のようです。
影を倒し、宝箱の裏側を見てみると、玉座には兜をかぶった骸骨が鎮座していました。青い玉はその周りを囲んでいます。
立派な骸骨です。きっと元々大柄な人物だったのでしょう。大きな手がひじ掛けを握っています。
珍しい兜を手に取ると、骸骨が崩れ落ちてしまいました。それと同時に光る玉がすべて消え去り、もともと静かだった室内がさらに虚しさを増したような気がしました。
それにしても、あの光る玉は一体なんだったのでしょうか?不思議な墓です。
ウィンターホールドへ行き、ビルナさんにユンゴル墓地での出来事を報告しました。
「それで、その兜がユンゴルの物だって?」
すっかり疑心暗鬼になってしまったのか、あまり興味も持たれず、この兜は自宅で保管することにしました。
ソリチュードの宝箱に兜をしまい、荷物を整理していると、箱の中を覗き込んでいたアラネアさんが不思議そうに金色の兜を取り出しました。
「これは…?」
「ああ、それは召喚術師のソロンという、とんでもない変態から回収したものですよ」
「よかったら使いますか?被ると無限にマジカが湧いてくる気がするんですけど、私には不要なので」
「そう…それなら、お言葉に甘えて」
アラネアさんは恐る恐る兜をかぶります。マスクがついているためすっかり顔が隠れてしまいます。外からはもはやどこから見えているのかすらわかりません。
「ああ…なるほど。これは、すごいわね」
アラネアさんにも被っただけでその兜の力は実感できたようです。
「ところで、これからの予定は決まっているの?」
「そうですねえ…今のところは特に優先度の高い仕事はないので、リフテンの別荘で釣りでもしようかな」
「そう。それなら、付き合ってほしいところがあるのだけど、いいかしら」
兜のせいでアラネアさんの表情は見えませんが、なにやらその口調に固い意志を感じるのは気のせいでしょうか?