系統で知るラーメンショップ
ラーメンショップは“本州・四国・九州に300店舗以上のラーメン店を有するラーメンチェーン”といわれる。系統がいくつか存在しているが、大元は「椿食堂管理 有限会社」による「ラーメンショップ」である。東京都大田区羽田の椿食堂(現・GOOD MORNING ラーメンショップ[1])が最初に「ラーメンショップ」という名前を使い始めたとされる。椿食堂管理が展開するチェーンを<椿系>と呼ぶことが多い。(参照)
<椿系>から派生して「ニューラーメンショップ」や「ラーメンショップ さつまっ子」が生まれたとされるが、詳細は分かっていない。椿食堂管理は取材に一切応じないことで有名であり、他系統も同様に情報公開をしない店舗が多い。近年では既存のラーメンショップに関係なく、屋号に「ラーメンショップ」と掲げる店舗も増えている。さまざまな「ラーメンショップ」が混在していることや、公開されている情報が少ないことが、ラーメンショップについての理解の妨げになっている。
本記事は、ラーメンショップについての理解を深めるために、系統(企業とその展開するチェーン)を明らかにするものである。
家系ラーメンの大元「吉村家」の吉村実氏も、平和島にあったラーメンショップで修行したといわれる。家系ラーメンは、紹介制の酒井製麺を使用していることが特徴だが、ラーメンショップの中にもそれを使用している店舗が一部存在する。定説として、元々はうどんの製麺業者だった酒井製麺に、吉村氏が頼んだことでラーメン屋に卸し始めたとされている。これについては、記事のおわりに推測を残した。
以下、店名に続ける()は創業店主/開店年-閉店年、【】は製麺所を表す。→ / ← は新装開店または独立、┣ は派生した独立を意味する。
椿系:椿食堂管理有限会社
いわゆる「ラーメンショップ」である。有限会社は1974年設立。加盟店募集の電話番号(03-3744-5007)が椿食堂管理のものであることや、卓上調味料が椿食堂管理のものであることが特徴。暖簾に書かれた「ラーメンショップ」の左右には黄色い文字で「うまい」と書かれているが、当初は白文字で「うまい」「はやい」と書かれていた。また「ネギラーメン」というフレーズもおなじみである。麺箱には「○あ」と書かれていることが多いが、基本的には日清製麺(日清製麺合資会社)および、いくつか存在すると思われるラーメンショップ製麺工場の麺を使用している。また、縛りの緩さからか店舗によっては株式会社あさひやの麺を使用している。
看板に書かれた電話番号先の本部以外に、栃木県小山市に北関東地区本部(0285-27-9991)、山形県本部(023-654-0204)、福島県郡山市に福島地区本部(024-939-6655)などがある。北関東地区本部は有限会社カシワ食品およびミツワフードセンター株式会社が管理しており、当該地区は犬塚の店舗が本店とされている。北関東系は白い暖簾が特徴である<白暖簾系>。また、卓上調味料がまばらであり、熊の手も見られない。福島地区本部については<福島椿系>として後述する。
2010年を過ぎてから暖簾がリニューアルし、「ラーメンショップ」の横に黄色い文字で「○椿」と書かれたものになった。特に都心寄りの一部の店舗では暖簾が新しいものに交換されている(例えば宮沢湖店)。また、新店舗では看板に電話番号が書かれないケースも増えてきた(例えば庄和町南桜井店)。
「ラーメンショップ」とは別に、羽田にある「Good Morning ラーメンショップ[1]」も商標出願されている。
● 系列店
● 独立店
他店舗へのリニューアル・看板名の変更(系統と言えるほどではないもの)
*1 ラーメンショップ店主の実息が「ラーメン二郎 三田本店」で修行。2000年8月、実息が店主としてラーメンショップからラーメン二郎へ新装開店した。2001年3月、元店主である実父は「ラーメン二郎 新小金井街道店」を開店させる。また2006年に「ラーメン二郎 八王子野猿街道店」は移転し、「ラーメン二郎 八王子野猿街道店2」として開店する。
ニューラーショ系
「ニューラーメンショップ」は<椿系>からの派生といわれる。チェーン展開であるものの、運営会社等は分かっていない。<椿系>同様に本店をもたないが、こちらはボランタリーチェーンかと思われる。多くの店舗が酒井製麺を使用しているが、全ての店舗ではない。<椿系>は背脂がかかっていないことが多いが、<ニューラーショ系>ではチャッチャしている店が多い。
● 系列店
さつまっ子系:有限会社吉中商事(吉光商事)
<椿系>もしくは<ニューラーショ系>からの独立といわれる。平仮名表記「さつまっこ」は有限会社吉中商事直営店で、“子“が漢字表記「さつまっ子」はFC店[2]。どちらも酒井製麺を使用しており、「光宏麺」と呼ばれるもの。はちまきをつけた顔のイラストや、「さ」が大きい「さつまっこ」を丸で囲ったマークが使用される。
● 直営店
左の数字は開店順
● FC店他
元祖系:有限会社元祖ラーメンショップ
宮城県・秋田県・福島県および神奈川県で展開するチェーンであり、有限会社元祖ラーメンショップの所在地は東北支社の場所だった。南蛮ラーメンを売りにしていることが特徴。通称「パンダラーメン」とされており、黄色い丸の中にいる麺を持ち上げているパンダがいる。しかし、パンダの表情はまちまちで、笑っているものもいれば驚いているものもいる。看板には加盟店募集の電話番号がなく、店舗によっては「DELICIOUS FOODS」の表記がある<元祖系>。
南蛮ラーメンとは、ネギラーメンのことである。むかし日本に住んでいた外国人のことを「南蛮人」と呼び、彼らが健康維持のため毎日ネギを食していることから、ネギのことを(南蛮)と呼ぶ様になった。つまりラーメンショップが提供するネギラーメンにちなんで、「南蛮ラーメン」と呼ぶ様になったと考えられる。
看板に「元祖」と掲げるお店の中で、異なった見かけの店舗がいくつか存在しており、それらについて考察していく。神奈川県相模原市中央区千代田に存在した「元祖ラーメンショップ 相模原店」については、看板に「DELICIOUS FOODS」の表記があるため、<元祖系>と考えられる。また「元祖ラーメンショップ 厚木店」については、麺を持ち上げているパンダ・「DELICIOUS FOODS」ともに表記がないが、麺をすすっているパンダがおり、相模原店と同様のものであるため、<元祖系>と考えられる。宮城県に存在していた「元祖ラーメンショップ 幸町店」については、黄色い丸の中にルーローの三角形のような顔の形をしたパンダがおり、他では見られないものである。しかし、2007年ごろに使用していた暖簾が、多くの<椿系>ラーメンショップで見られる赤暖簾であり、塩釜店、かつての十和田北野店、利府森郷店、先述の相模原店と同様のものであるため、<元祖系>といえると考えられる。
「元祖ラーメンショップ 南蛮ラーメン 青葉店」については、見慣れないパンダがいるものの、関係が不明である。またパンダがいない「元祖ラーメンショップ 龍仙」についても不明である。
● 系列店
● 関係不明
Aji-Q系:株式会社 クックサービス
秋田県・岩手県で展開するチェーンで、前髪のある上半身だけのパンダをアイコンに使用している。「南蛮ラーメン」を売りにしており、「南蛮ラーメン」の元祖を名乗っている。1982年6月創業だが、この頃には既に「元祖 ラーメンショップ」が存在しているため、<元祖系>からの独立と考えられる。スープは九州の工場で炊き、冷凍輸送しているCK(セントラルキッチン)方式である。Aji-Q[7]の由来は「味を追求、クオリティーを極めるの意」とされている。
● 系列店
ニコニコ顔パンダ系
「パンダラーメン」と称される、パンダをアイコンにしたラーメンショップは大きく分けて3系統存在する。先述の<元祖系>、<Aji-Q系>、そしてこの<ニコニコ顔パンダ系>である。宮城県で2店舗を展開しており、1987年創業である。ニコニコした顔だけのパンダをアイコンにしており、FC店のような賑やかな外装・メニュー・丼が特徴である。
<元祖系>および<Aji-Q系>との関係は不明である。
● 系列店
105系
秋田県で2店舗を展開しており、<Aji-Q系>からの独立もしくはFC店と考えられる。事実、大曲にある「ラーメンショップ105」は「ラーメンショップAji-Q」からのリニューアルであり、中仙店は支店と考えられる。2店舗はともに国道105号沿いに存在する。<Aji-Q系>同様に「南蛮ラーメン」を提供している他、「白濁ラーメン」を提供しており、「あっさりしょーゆ(醤油)」「とんこつしょーゆ(醤油)」というジャンル分けが特徴である。
● 系列店
大和系
神奈川県で展開するチェーンである。つきみ野・平塚は黄色看板、戸室・海老名・港南日野は赤看板、座間は白看板と、統一性はないが「ラーメンショップ」の後に「大和」の表記がある。暖簾から推測するに、<椿系>からの独立と考えられる。
● 系列店
福島椿系:有限会社アサカ商事
<椿系>から派生したチェーンで、<椿系>福島本部であり、福島県を中心に展開するチェーンでもある<福島椿系>。当初は椿食堂管理の千葉工場から材料を運んできていたが、現在は福島県郡山市にある本部で製麺される自家製麺を使用。当初は<椿系>同様の赤看板だったが、現在は白看板に黒文字で「ラーメンショップ」、先頭に筆文字で「○椿」と書かれることが特徴[3]。
直営店とFC店が存在しているが、このFC店は<椿系>FC店と異なるように考えられる。
● 直営店
● FC店
クリコ系:ひまわり製麺株式会社
福島県・宮城県で展開するチェーン。赤看板に白文字で「ラーメンショップ」、その横に白丸に赤文字で縦に「クリコ」と書かれることが特徴。大きな看板には「うまい」が書かれず、また加盟店募集の電話番号もない。「醤油」「味噌」「塩」「餃子」などを提供しており、「ラーメン」「支那そば」ではなく「醤油(しょうゆ)」を明記している。ほとんどの店舗でキムチが提供されており、食べ放題もしくはご飯にサービスされる。
麺はクリコ製麺のものだといわれる。クリコ製麺はかつて福島県二本松市渋川字舟山102に存在していた製麺所のことで、ストリートビューからも確認できる。現在は福島市においてひまわり製麺(ひまわり製麺株式会社)として営んでいる。「クリコ」とは、福島県福島市から山形県米沢市にかけてある峠「栗子峠」を指す。
栗子店が本店と言われていたが、2012年ごろのリニューアルに伴い赤看板ではなくなり、看板から「うまい」「クリコ」の文字が消え、また「ラーメンショップ 栗子山」に店名が変わっているため、独立していた可能性が考えられる。三本木店においても2020年ごろのリニューアルに伴い、看板から「クリコ」の文字が消えているため、独立の可能性が考えられる。
● 系列店
ヤマキン系/マルキン系:株式会社ヤマキンチェーン/有限会社マルキチェーン
ヤマキンチェーンとマルキチェーンの関係は不明だが、どちらも「天国ラーメン」「地獄ラーメン」を提供している点で何らかの関わりがあるものだと考えられる。
ヤマキンチェーン
株式会社ヤマキンチェーンが山梨県・長野県で展開するチェーン。天国ラーメン・地獄ラーメンが特徴。4店舗中3店舗において、赤看板に白文字で「ラーメンショップ」「うまい」「ヤマキンチェーン」と表記されている。富士山をモチーフにしたロゴがある。丸子店は白看板に黒文字で「ラーメンショップ」と書かれており、「うまい」「ヤマキチェーン」の表記もないが、県内唯一のヤマキチェーンであることをHPに明記している。
● 系列店
マルキチェーン
1984創業とされる、有限会社マルキチェーンが東京都内で展開するチェーン。ヤマキンチェーン同様、天国ラーメン・地獄ラーメンが特徴。20号平井店のみ赤看板に「うまい」の表記があったり、拝島店のみ木の看板だったりと、統一性はない。「◯輝」でマルキと読ませる表記が南大沢店にあった。20号平井店は看板から「マルキチェーン」の文字が消えたため、独立したと考えられる。拝島店と、その店舗2階にある「大阪ホルモン まるき家」は電話番号が同じであるため、同じ経営下にあると考えられる。「ラーメンショップ 大庭店」などに卸していたマルキ製麺(有限会社マルキ製麺所)との関係性はないものと考えられる。
● 系列店 @東京
新ラーショ系
1984年創業のチェーン<埼玉系>。狭山本部の麺は大進食品のものであるが、他店舗のものは不明。丼に「新ラーメンショップ」という表記があること、看板に「うまい」表記がないことが特徴である[4]。狭山本部および堀兼店は赤暖簾に黒文字で「ラーメン」と書かれている。蕨店は当初赤看板だったが、現在は店舗自体が黄色い外装となり、独立したようにも考えられる。「とんこつ丸新 鶴ヶ島若葉店」は姉妹店である。
また一方で徳島県に1店舗(2016年ごろにはもう1店舗)存在しており、<埼玉系>との関係性は不明<徳島系>。<埼玉系>同様に、看板に「うまい」表記はない。
● 埼玉系 系列店
● 徳島系 系列店
KANTO系
愛媛県を中心に展開するチェーンである。<椿系>から独立したものと考えられる。西四国(愛媛)本部と、中部地区(広島)本部が確認できている。縛りが緩く看板に統一性がないが、「KANTO」の表記があることは共通していえる。特に愛媛の店舗には看板に「うまい」の表記がないことがいえる。
<椿系>からの派生の場合、2パターンが考えられるが、<椿系>との関わりについて現時点では分かっていない。
① <椿系>の西四国本部または中部地区本部がそのまま独立した、<福島椿系>に近いパターン
(理由)高屋店では、交換前の看板から「うまい」および「加盟店募集」表記が消された跡が残っており、また西四国本部においても、看板から「うまい」表記が消された跡が残っているため
② <椿系>から独立後、KANTOチェーンを作り、それらを束ねる西四国本部または中部地区本部ができたパターン
(理由)家系ラーメン店にあるような、本来の独立のパターンであるため
● 西四国(愛媛)本部 系列店
● 中部地区(広島)本部 系列店
ねぎっこ系:株式会社日麺・株式会社タケムラ
ラーメンショップねぎっこ 築館店は<椿系>から独立した店舗と考えられる。1993年に、株式会社 日麺が「ラーメンショップ ねぎっこ」を商標出願している[5]。築館店との関係性は不明である。
株式会社 日麺はブランドを「ラーメンショップ ねぎっこ」から「ラーメンねぎっこ」へ変更して、福島県・宮城県で展開しており、赤看板に黒文字が特徴である<日麺系>。タンメンのような「野菜ラーメン」を売りにしている。富谷店・富谷分店のみが直営店であり、他店舗はフランチャイズである。日麺は福島県福島市にらーめんねぎっこ本部をもつ。
「ラーメンねぎっこ」の中でも、今泉競輪場通り店・下川俣店は、たけむら製麺(株式会社タケムラ)の直営店で、オレンジ系の看板に緑文字が特徴<たけむら製麺系>。たけむら製麺の麺を使用。西那須野店は2013年時点では本店を名乗っていたが、現在は直営から外れ、フランチャイズ化もしくは独立したと考えられる。
名取店は「ラーメンねぎっこ」を名乗るものの、看板には<椿系>のように「うまい」表記が入っている。しかし、丼に書かれた「ねぎっこ」は<日麺系>の看板にある髭文字と似たものであり、<日麺系>からの独立と考えられる。
● ねぎっこ系大元
● 日麺系 直営店
● 日麺系 FC店他
● たけむら製麺系 @栃木
太田家系
宮城県登米市で2店舗を展開している。ラーメンショップねぎっこ 佐沼店が独立し、「ラーメンショップ 太田家本店」として新装開店した[6]。2010年に商標出願している。
● 系列店
オリジナル系
近年、サブブランドとしてラーメンショップ風の店舗を展開する事例が増えてきた。また一部では限定ラーメンとして、ラーメンショップをオマージュしたラーメンを提供する店も存在する。
丸猫商事株式会社は「ラーショ」を商標出願し「ラーショ マルミャー」として店名に用いている[9]。このことで「柏ラーショ」は当初、商標の問題が発生し、オープンが延期になったといわれる。
おわりに
商標について
吉村家と酒井製麺について
以上のことからラーメンショップの暖簾分けを推測する。
1960年代後半、羽田トラックターミナルの屋台から「椿食堂」が始まる。その後、「ラーメンショップ」「GOOD MORNING ラーメンショップ」と名前を変える。
1970年ごろ、ラーメンショップが酒井製麺を使用し始める。
1973年、椿系FC店「ラーメンショップ 平和島店」で吉村実氏が働き始める。このあたり時期に、ラーメンショップは酒井をやめ、自家製麺へ切り替える。コスト削減の意図もあったのだろう。
1974年、吉村実氏は「吉村家」を開店し、以前のツテで酒井製麺を使用する。
1978年、岩瀬氏が「ニューラーメンショップ いわせ」を開店させる。(ニューラーメンショップ1号店?)
椿食堂管理の経営方針を見かねた店舗が独立し、ニューラーメンショップとして開店。麺には主に酒井製麺を使用する。
1980年ごろ、吉田光作氏が「ラーメンショップ さつまっ子」として独立し、支店を展開する。麺には酒井製麺を使用する。
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コメント
本記事がラーメンショップについての理解の一助になれれば、嬉しく思います。記事更新のためのリサーチにかなりの時間を要しており、投げ銭は今後の更新や新記事執筆の励みになります。ぜひよろしくお願いいたします。
サーモン / 3almon
更新情報
2023/02/11 全般的に更新しました(サムネイル変更、全項目に対して情報追加、画像追加など)
2020/04/18 記事を作成しました
何かありましたらフォームからご連絡くださいませ。
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