#79 氷の王国の王子生誕祭
いくつか綺麗な状態で落ちた
ファータの実を拾ったとき
陽がかなり傾いていることに気付いた。
「そろそろ街へ戻らなきゃ。」
「えぇ?もう帰っちゃうの?」
「うん…。でも、また絶対来るよ。
Sophiaに会いに。」
Sophiaの寂しそうな顔が嬉しそうな笑顔に変わった。
「さっきお花摘んでたとこまで一緒に行こ。」
私達は出会った場所まで戻った。
扉のある、精霊の宿る樹までの道は
かなり薄暗くなっていた。
「この道を辿れば扉まで行けるよ。」
「ありがとう。」
「また、ココで待ってるね!
大抵この辺りにいるからね!」
「わかった。すぐではないと思うけど、
必ず来るからね!」
私は扉へ向かって薄暗い森を歩いた。
精霊の宿る樹は少し離れたところからでも
すぐに見つかった。
微かに入る陽の光を受けた精霊たちが
薄暗い中で強く静かに光っていた。
私は自分の扉の鍵でOliviaの街に戻った。
街も薄暗くなっていた。
まっすぐカフェに向かうと
忙しそうだったカフェも5組のお客しかいなかった。
どのテーブルも既に飲み物や食べ物が運ばれ、
Oliviaはカウンター席に腰かけていた。
私はそろっと扉を開けて名前を呼んだ。
「Olivia」
「はい!ん?
あぁ!久しぶり~!待ってたわ!!」
相変わらず、熱烈なハグと歓迎の言葉に
カフェのお客はみんな私達をチラと見ていた。
Oliviaの父、Gregoryとも目が合い、
お互い軽く挨拶した。
「Olivia、久しぶり。元気にしてた?」
「うんうん!元気!
ごめんね、フクロウも送れなくて!
3日ほど前に送ったとこなの!」
「そうだったんだ。大丈夫!
Oliviaは…」
私はGregoryの様子を少し伺いながら続けた。
「Oliviaは、もう外出禁止は大丈夫?」
「えぇ。前回M.ちゃんが帰ってからも
少し色々あったんだけど…
この前やっと、外出もフクロウもOKって!」
あれだけ叱られたあとでも
まだ色々と何かをやらかしたようだった。
「そっか!よかったね!」
「うん!ねぇ!
今から氷の王国へ行かない?」
「今から?いいの?」
「うん!この前、氷の王国で
新しい王子様が生まれたんだって!
それで今、王子様の生誕祭があって
特別にお城の大広間に入れるみたいなの。
街はお祭りムードみたい!」
「そうなんだ!行きたい!」
OliviaはGregoryにすぐに許可を取って
着替えに自室へ向かった。
Gregoryは少し呆れた顔だったが
そちらかと言えば
我が子を見守るような優しい笑顔だった。
「M.ちゃん、また来てくれてありがとね。」
「いえいえ、この前はごめんなさい。」
「気にしないで。Oliviaと楽しんできて。
暗くなってきたから、氷の王国はとても綺麗だよ。
でも、気を付けてね。」
「はい!ありがとう。」
バタバタとカフェに戻ってきたOliviaは
そのままの勢いで自分の腕を私の腕に引っかけた。
「行ってきまーす!」
Gregoryの言葉を待たずに
扉は閉まった。
私達は街の扉の前でやっと足を止めた。
これが氷の王国の王子生誕祭へ
向かった時のおはなし。
続きはまた次回に。
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