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#81 Edward(エドワード)王子の氷の王冠

氷の配達馬車が購入できる窓口は
とても混雑していたが
氷の馬車を持っている人は少なかった。

そのほとんどが子供で
嬉しそうに手にしていた。

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「ねぇ、これ、みんな馬車を買う人達なの?」

「う~ん。こんなに多くないはず…
欲しがるのはほとんど子供たちだし。」


列になれないほどの人の中で
やっと窓口に辿り着いた。

ネイビーに銀の装飾品の付いた、
郵便局員の分厚い制服を着た
恰幅のいい女性の窓口だった。

「はい、こんばんは。
お嬢さんたち2人かい?2つだね?

流れるように一気に聞いた。

「あ、いえ。1つでいいです。」

「は…え?1つ?
お嬢さんたち、中に入るには1人1つ必要だよ?

窓口の女性はお城の方を指差して言った。

「1人1つ?」

「そうさ。ほら、ひとつずつ。」

そう言って差し出されたのは王冠のバッジだった。

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ネイビーのベルベットの装飾と金のドット、
埋め込まれた数個のクリスタルがキラキラと光り
その頂点には雪の結晶が付いていた。

「これを付けないと城の中には入れないよ。」

Oliviaがサッと、そのバッジを受け取った。

「じゃぁ、これ2つと氷の馬車を1つちょうだい。
馬車はこの国の外でも溶けないようにお願い。」

「はい。
ほら、馬車はこちらに。」

窓口の女性は馬車をツンと杖で小突いてから
バッジ同様,、窓口から差し出した。

私がそれを受け取ると
Oliviaが支払いをしながら
私の方を向いてニッコリした。

「この前色々迷惑かけたから、
ここは私の奢りね!」

「え、いいの?…馬車も?」

「もちろんよ!
さ、お城へ向かいましょ。」

「ありがとう!」

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私達はそれぞれバッジを付け、
すぐ目の前のお城の門へ向かった。

門には鎧を着た大柄の門番が数人立っていて
それぞれまっすぐ前を見て
微動だにしなかった。


門の真下までもう数メートルというところで
門の真下の人だかりが声を上げた。

よく見ると若いカップルが
見えない何かに弾かれたように門の隅で転んでいた。

それを見た
私達の目の前にいた小さな子を腕に抱えた父親が
小声で言った。

「バッジを付けてなかったのか。
お前たち、ちゃんと付けてるか?」

「うん、付けてるよ、パパ。」
「えぇ、大丈夫。みんな付いてるわ。」

その父親の子供と妻が答えた。

それを聞いて私達は自分に着けたピンバッジを
改めて確認して門をくぐった。


門の先の広場をさらに進み
大広間までたどり着いた。

ネイビーとシルバーを貴重とした
ベルベットや銀の豪華な装飾が施されていた。

あちこちに氷の銅像や鎧、オブジェがあり、
大広間の中心には大きなガラスの箱が設置され
人だかりができていた。

人々の間を縫っていくOliviaに手を引かれ、
箱の中が見えるところまで進んだ。

「わぁ…見える?本物の王冠ね。」

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「このバッジの王冠かぁ。
台座のところに何か書いてあるの、見える?」

この王冠はEdward王子が誕生された日に完成された。
王国の伝統的な氷の王冠をベースに
シンボルカラーのネイビーのベルベット、
美しく輝くストーンをあしらい
力強い男性らしさとして金の装飾を埋め込んだ。

トップに施された雪の結晶の形は
王子が誕生された瞬間に
城の窓に現れた雪の結晶模様を再現したもの。

※王国では、王子、王女が産声を上げた
その瞬間に、1つの大粒の雪が城の窓に触れ、
窓いっぱいに大きな雪の結晶を描くように
凍てつく現象が見られる。

Oliviaがそれを読み上げ、
私達はしばらくその輝く美しい王冠を眺めていた。




これがEdward(エドワード)王子の氷の王冠
見た時のおはなし。
続きはまた次回に。


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