#71 人魚のジュエリー~カリブの海馬~
Charlotte(シャーロット)の大きな尾びれに
私は驚いて立ちすくんだ。
Cherlotteも一瞬驚いた顔をしたが
すぐにクスクスと笑い出して
その場で漂うようにユラユラと上下していた。
「あら、人魚を見たのは初めてだった?
驚かせちゃったようね。」
Cedricも少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「あぁ、そうか。
初めて見るよね?うっかりしてたよ。」
「あ、いえ、ごめんなさい。
その…まさか…人魚だとは思わなくて…」
「いいのよ。もっとじっくり見ても。」
そう言って、Cherlotteは私の周りを
くるりと一周した。
彼女の尾びれは、エメラルドグリーンの大きな鱗が
キラキラと美しく輝いていた。
「さ、良かったら友達のお店に案内するわ。
いいかしら?」
「はい、是非お願いします。」
「じゃ、M.ちゃん、気を付けてね。
Oliviaにもありがとうって伝えておいて。」
「はい、Cedricさんもありがとうございます。
またOliviaも一緒にゆっくりお会いしましょう。」
じゃあね、と手を振るCedricを背に
私と人魚のCherlotteは研究所を出た。
Cherlotteはやや前傾姿勢をとるような形で
半歩前くらいで緩やかに尾びれを動かしていた。
地面から10㎝程のところを
浮遊しているように前後に揺れ、
海中守護の薬で護られている私には
尾びれの動きに合わせて
風が当たるような感触があった。
「友達のお店はすぐそこよ。
まっすぐ進んで2分もないくらい。」
「近いんですね。」
「そうね、まぁ、深海ってほとんど何もないのよね。」
「確かに、さっきの研究所以外、
ほとんど明かりは見えなかったです。」
「あぁ、明かりは基本的には漏れないようにしてるわ。
深海の魚たちのほとんどは明かりを必要としないし
下手すると逆に見えなくなっちゃう。」
「あ、そっか!
だから研究所の入り口も迷路みたいに
入り組んでいたんですね!」
「えぇ、そうなの。
友達のところは、中は明るいわよ。」
と話していると、1つの小さな建物から
キラキラと反射しているのが確認できた。
「あ、あそこのキラキラしてるところよ。」
Cherlotteははそう言って
スイ~ッと扉まで泳いでいった。
扉の横には
「人魚が見つける世界のジュエリー
Helena(ヘレナ)の宝石箱」
と様々な宝石らしいものが散りばめられた看板があった。
Cherlotteが扉を開けると
中はぼんやりとした明かりや小さな明かりしかなかったが
あちこちからキラキラとたくさんのものが煌めいていた。
「いらっしゃ~い。あらっ!Cherlotteじゃない!」
「Helena(ヘレナ)、お疲れ様~。
お客さん連れてきたわよ。」
「いらっしゃい。今日1人目のお客様よ。」
「こんにちは。
私が今日の1人目…?」
「そう。
もともとこの深海にはそんなに来ないのよ。
1人も来ない時もあるわよ。」
Helenaももちろん人魚だった。
とても白い肌に深いブルーと鮮やかな水色の
緩やかなウェーブのある髪だった。
鮮やかな水色と淡い紫の鱗が
宝石同様キラリと光った。
「あ、Helena。
この方はね、人魚すら今日初めて見た方よ。
お店の説明からしてあげて。」
「あら、そうなの?
ここはね、人魚の皆が世界中から集めてきた
ジュエリーを扱うお店よ。
今のおすすめはコレ!!」
そう言って指差す先には
タツノオトシゴのシルエットが浮かび上がる
海の色をそのまま映したかのように煌めく
美しい色の宝石があった。
「カリブの海の底にある宝石よ。
エメラルドグリーンが見え隠れするのが
陽の当たる日中の賑やかな時間に採れたもの。
深い紫が出てくるのは
夜の静かな海底に眠っている石なの。」
「ホントに海を切り取ったみたいな色ですね!
キラキラする感じも
水面が光るみたいですごい綺麗。」
「でしょ?Cherlotteの紹介だから
お友達価格にしておくわよ?」
Helenaは流れるようにそう言った。
これが人魚のジュエリー~カリブの海馬~に
出会った時のおはなし。
続きはまた次回に。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
サポート、フォロー、スキしてくださった方
応援のお気持ち大変嬉しいです。
ありがとうございます。
あちらの世界で仕入れたものは
minneにてアクセサリーにして
販売しています。
他、ギャラリーの裏側なども
SNSにて発信していますので
ご興味あればこちらもご覧くださいね。
https://twitter.com/3count_m
https://www.instagram.com/3count_m