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#80 氷の王国の配達馬車

すっかり陽が落ちた街の扉の前で
Oliviaは鍵を取り出した。

「あ、そうだ!忘れるとこだった。」

Oliviaは自分の頭の頂点に杖をトンと当て、
次に私の頭にも同じようにした。

体の周りで何かふわりと空気の流れを感じた。

「これでOK。」
そう言いながら鍵を挿して扉を開いた。


氷の王国は、以前来た時の
どんよりとした殺風景な白っぽい景色とは
全く雰囲気が違った。

青や水色、白を中心としたライトが
様々な大きな氷のオブジェや建物、装飾を
幻想的に浮かび上がらせていた。

前回ほとんど出歩く人のいなかった街も
軒先で店が開いていたり、
国外から来たと思われるたくさんの人で
賑わっていた。

王国の空気に包まれると、少しひんやりとした。

「結構冷えるわね。
ごめんね、私、ヒーター苦手なの。」

「ヒーター?」

「そう、前、ママと来た時に
暖かい空気の膜で覆ったヤツ、覚えてる?
私はヒーターの温度調整が苦手で、
いつもちょっと暑すぎたり、途中で切れたり…
だから、ただの空気の膜だけ。」

Oliviaは苦笑いしながら言った。

「あ~、まぁでも今は大丈夫!
寒くなったら帰ろう。」

そう言って私達は城に向かって
人の波に乗って歩き出した。


凍り付いたように白みがかった
岩やレンガの家々は
電飾のようなもので飾り付けられていた。

光っているものは
それぞれ微妙に動いていた

街のメインの通りや
以前寄った泉のある公園も
美しくライトアップされていた。

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城に近付くにつれて
夜の闇空の中で光る何かがスイ―ッと通り過ぎるのを
たくさん見るようになった。

「Olivia、あの光ってるの、花火か何か?」

「あぁ、あれは馬車よ。
氷の王国の配達は氷の馬車なの。」

氷の馬車!?なにそれ!」

「見てみる?確かもうすぐそこに…」
Oliviaは背伸びをしながら前方をキョロキョロした。

「あった!あそこに郵便局があるわ!」
Oliviaは私の腕を掴み
人の間を縫って速足で進んだ。

「ほら、これよ。」

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そこには荷物が乗るのを順番待ちするように
列をなしている氷の馬車がたくさんあった。

掌に乗るほどの
とても小さくて可愛らしい馬車は
繊細な柄がシルバーで描かれ、
ネイビーのベルベットのような生地が
所々にあしらわれていた。

車輪は雪の華が咲いたように
ネイビーと透けるような水色の花の模様に凍りつき、
中心部には、様々な色に輝く
美しいクリスタルが埋め込まれていた。

荷台の後方もその寒さで凍結し、
雪の結晶が現れていた。

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「氷の王国らしくて素敵な馬車よね。
氷の王国のシンボルカラーは
ネイビーとシルバー
で、すごく上品ね。」

その馬車たちが進んでいく先では
荷物や手紙がひとりでに馬車に詰め込まれていった。

どんなに大きく重そうな荷物も
折りたたまないと入りそうもない手紙も
吸い込まれるように荷台へ入っていった。

山積みの配達物の間では
小人のような人影
ひとつひとつ開封しては元通りに戻して
配達物の壁を高くしていた。

荷物を積んだ馬車は
郵便局員によって光を乗せられ
次々と夜空へ放たれていった。

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「この馬車ってこの国だけしか使わないの?」

「そうね、大抵のところでは鳥が配達するわね。
だけど、この国の寒さでは
耐えられない鳥も多いから。
王国を出入りするものは必ず検査を通るから
その時に馬車に入れ替えたりしてるみたい。」

「なるほどねー。検閲で入れ替えるのか…
氷の馬車ってことは、
持ち出しちゃうと溶けちゃうとか?」

「買うときに国外に持ち出すって言えば
溶けないように固めてもらえるわよ。
ただし、国外で下手に動かそうとすると
溶ける
って聞いたわ。
買うなら、あっちの窓口ね!」

私達は窓口へ向かった。



これが氷の王国の配達馬車
目にした時のおはなし。
続きはまた次回に。


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